スター・ウォーズ・サーガ(2)

 スター・ウォーズ・シリーズのエピソード4から6は、そのストーリーの曖昧さ、強引さや人物描写の薄さを補ってあまりある、素晴らしく魅力的なキャラクターが多数登場したために、観るものの想像力や夢を膨らませることに成功し、空前の大ヒットを巻き起こした。
 まずは、これほどまでに多彩で豊富な登場人物を作り出しただけで、賞賛に値するし、ジョージ・ルーカスの才能の凄さを感じるのだった。

 それと、まるで古代神話的なストーリー展開で、どちらかというと心理劇的な深みのある人物描写よりも、骨太な英雄物語として貫いたことで、かえってより神秘性をこちらが抱くことになったとも言える。

e0093608_15154226.jpg 特にシリーズ処女作のエピソード4は、細かいことは一切抜きで、文句なく楽しい映画だった。私は、初めて見た時にその戦闘シーンにおいてTVゲーム的スリルを感じて、自分が一緒に戦いに加わっているように思えたほど堪能させられた。
 そして、私が大好きだった黒澤明作品へのオマージュ的映像やストーリー展開が随所に見受けられたり(特に"隠し砦の三悪人"あたりのサムライもの)、これまた50〜60年代の黒澤映画でもよく使われたスライドのようにシーン・チェンジする編集(何て言うのか忘れたよ)を見るだけでも、思わずニヤっとさせられた。

 また、冒頭の宇宙戦艦が画面に登場するシーンは、そのあまりの巨大さゆえに、まさに衝撃の映像で、キューブリックの"2001年"への敬意をも思わせる感動的なものだった。この冒頭のシーン一つだけでも、いかにスター・ウォーズが観るものを虜にする力を持っているかを示すものだった。

e0093608_15185023.jpg また2作目の"帝国の逆襲"は、あえて言うなら「007シリーズ」の"ロシアより愛をこめて"と同じような充実感をもった傑作だった。とにかく、ストーリー展開の面白さと、ルーカスの師匠であったアーヴィン・カーシュナー監督の見事な演出力が光り、各キャラが前作よりも格段に深みを持ったし、微妙な感情表現もきちっと映像化していた。

 また、ヨーダという強力なキャラの登場やハン・ソロとレイアの恋、そして何よりダース・ヴェイダーがルークの(そしてレイアの)父であることが知らされ、観るものにますますの興味を持たせたのだった。

e0093608_1521821.jpg だが、旧シリーズの最終作"ジェダイの帰還"は、かなりパワーダウンしてしまう。ハン・ソロは前作でカーボン凍結されたせいか、ずいぶんとお行儀がいいし、ルークは急にマスター気取りでエラそう(それに暗い)、レイアは序盤のシーンで露出度の高い衣装を着ることへの心痛からか、ずいぶんと痩せてしまい、おまけに元気がない。ヨーダも900歳で死んでしまうしね。

 相変わらず元気に盛り上げてくれるのは2人のドロイド、彼らは一応機械だから疲れをしらないわけね。

 何より不満なのは、ヴェイダーとルークによる「父と子」としての、それぞれの心の葛藤が今イチ深く描かれなかったことだった。確かにSFファンタジーとして、気楽に楽しめばよいのだが、あまりにも魅力的で観るものが思わず感情移入してしまうようなところまで、それぞれのキャラが成長してしまったがため、どうしても「もっとこうだろう」とか「俺はこう感じる」的な思いが高まってしまうのだ。だから、それを越えるような脚本と演出、演技を期待してしまうのは仕方ないのだった。

 なので、最後の戦いで反乱軍が勝利するものの、それと皇帝、ヴェイダー、ルークによるどちらかというと「高貴」な戦いが無関係のようにも思えてしまう。つまり、ルークがたとえ暗黒面に堕ちたとしても、結局ハン・ソロがシールドを破壊して、デス・スターは壊滅するんだから、同じじゃん、って言いたくなるのだった。
 そのあたりに、こだわりを持ってしまうのは、新3部作を観たからで、前はそれほどでもなかった。だが、今はダース・ヴェイダー誕生の時、アナキンが抱いた悲しみや苦しみ、暗黒面に堕ちて行く弱さを私は感じてしまったのだから、その結末としてはひどく物足りなく思えるのだった。(SWフリークの精神科医による「ダース・ヴェイダーは境界性人格障害」という研究論文も出たし、ある意味、エピソード1から3におけるアナキン・スカイウォーカーは神経障害に苦しんでいたわけだが、暗黒面に入ることで、4から6における安定感を得たと言える。)

 それと、この旧3部作の抱える最大の欠点は、新シリーズのハイテク映像を見せられたことで、その後旧作を観るとかなり古さを感じてしまうということだった。だが、例えばキューブリックの"2001年"がスター・ウォーズよりも前の作品にもかかわらず、今観ても全く古さを感じさせず、今なお観るものの感性を刺激し続けることを考えると、このスター・ウォーズ・シリーズは映画として本当に傑作なのか?という疑問も浮かんでくるのだった。
 これに関しては、ルーカスも覚悟の上だろう、そのような流れと時間差で作り上げてしまったのだから。また、旧作に対してCGなどで変更や追加シーンを入れて自分の思いを満足させたようだが、正直、観るものには違和感のあるカットに見えるし、彼の姿勢はあまり潔いとは言えないと思う。「これまで撮ったシーンの全てをやり直したい」と生前語っていた超完全主義者のスタンリー・キューブリックでさえ、結局は一切過去の作品に手を加えていないのだ。

 ルーカスの才能の高さに私は敬意を払うし、何だかんだ言ったってこのスター・ウォーズ・シリーズは大好きだが、97年に施したリメイクは決して良いとは思えないし、昔からの支持者の思いを安易に無視した、制作者の傲慢とも言える行き過ぎた変更ではなかったか、とも思う。
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by harukko45 | 2007-06-11 00:00 | 映画・TV

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