リナン/グレープフルーツムーン
2007年 05月 21日
さて、リナンのライブはいつ以来か調べたら、前回は昨年の4月の吉祥寺プラネットKでした。おー、いろいろ思い出してきました。あの時は私のピアノで2人だけでやったんだった。結構ぶち倒す気迫というか鼻息荒く演奏した記憶があります。リナンさんも相当攻撃的でしたね。
あれからもう1年、今では彼女の回りの状況はいろいろと変化している感じであり、それにつれて音楽への意欲も前向きに高まっているのがわかります。何しろ、今回のメニューでかつてやっていたのは"アイランド"だけで、曲として知っていたのは去年レコーディングに加わった「全肯定理論」の中の"aria"と2曲だけでした。つまり後は全部最近出来たものばかり。
ところが、この最近の曲達にオジサンはかなりやられてしまった。元々、妙竹林な不思議ちゃんを売り(?)にしている、ようなフリを見せながらも、実はかなり高度な音楽性を聞かせる曲作りをしていた彼女ですが、確かに前々から「面白い」曲だったのが、そこに「美しい」流れが生まれており、それでいて決まりきった枠にとらわれない自由さは失われていなかったのでした。
まずは"Student"の彼女の弾いたピアノのラインのクラシカルな美しさは絶賛であります。驚きました。なので、きっちりコピーしました。
偶然にもブラジリアン・テイストを持った2曲"Ask You Why"と"Triangle"はともにオースティン・パワーズに出演していた時のバート・バカラックのようなサウンド(何じゃ?)、って印象。ところどころに刺激的なコード進行があり、さりげなくも激しく転調して行きながらも、流れが止まらないところが凄い。それにプラス、辺見まり的歌謡センスも含まれるのであります。
"Maybe Sometimes"は小さなピンクフロイド、"少年と樹"は小さな"クリムゾン・キングの宮殿"。実はそのミニマムさがミソであり、プログレの要素は奥に隠れていて、70年代のバンドのように大袈裟なアレンジではないので、意外と大事な要素を聞き逃してしまうかもしれない。だが、我々バンドは長く曲と向かい合うので、ある時に突然宝物(小さな外見の奥に潜む広大な空間)を発見するのであった。
なので、私としては作曲家リナンの能力にあらためて感動させられた。だが、果たして我々バンドを含めて(今回はキーボード、ベース、ドラムに彼女のギター、シェーカー&ダンス)、リナンとしてのパフォーマンスが、この楽曲達の心髄をお客に十分伝えられたかどうか。正直、まだまだ力不足ではなかったか、と思う。
今の我々はまだ内向きで自己愛的なのだ、もっと踏み込んだ表現を心がけなくては次元の違う音楽として理解されないだろう。大きな課題だが、それだけの価値のある素材は確実に生まれていると感じたのでありました。
でも今のアタシはやればやるほど課題ばっかりが見えてきて、まだまだ先は長いって思ったけど、それはすごいいいことだと思ってる。なんか、もっともっといいものにできるのに、って思えることは幸せだなと思うんですよ。
ワダさん初め、みんなのおかげだと思ってます。ありがとう。これからもよろしくお願いします。ワダさんに会うと、心が引っ張られます。