追悼 植木等さん

 先月27日に日本最高のコメディアン(と、ひとくくりにするには偉大すぎる)植木等さんが亡くなった。自分の仕事に追われて、そのまま1週間経ってしまったが、やはり日本の芸能の歴史に燦然と輝く巨星であり、僭越ながらブログに追悼として書かせていただくことにしたい。

 私がクレイジー・キャッツ、植木等の大ファンになったのは小学生の時。57年生まれなので、10代になる前にかなりの影響を受けたのであります。その頃の自分にとってのアイドルは、ON、ゴジラ、植木等って具合。正直、これほどのパワーを感じさせる、強烈なオーラを持った人々(ゴジラは人じゃない?)は、その後の日本の芸能スポーツ界には登場していない。69年にドリフターズのモンスター番組「8時だよ!全員集合」が始まったけど、私はすでにクレイジーを知っていたので、ちっとも魅力が感じられなかったものだ。 
 植木さんはコメディアン、俳優、歌手として活動が幅広かったが、特にここでは自分の仕事分野でもあるので、シングルとして発売されていた曲について語りたい。

 とにかく、青島幸男/萩原哲晶/植木等という3天才の集結による大傑作郡を聞けば、笑いも元気ももらったあげくにホロっと涙してしまう。最後には感動に震える。そんでもって、「ブアーっといくか!」ってことになるわけよ。

 61年の"スーダラ節"はデビューシングルにして超がつくほどの大傑作で、これを越えるコミック・ソングは未だにない。詞/作編曲/歌の主要3要素がこんなにも爆発しまくってて圧倒的な仕上がりになっているというのは、凄いことだ。今聞くと、笑いの奥に「無常観」とも言える深みを感じてしまうのは年寄りの考え過ぎか?(実際に、この歌を歌うのを迷った植木さんが、お父さんから「わかっちゃいるけど、やめられない」は「親鸞聖人の教えに通じる」と諭されたというエピソードも個人的にかなりシビレル)それにしても演奏うまいなぁ、宮間利之とニュー・ハードですか、素晴らしいです。
 第2弾シングル"ドント節"も最高じゃないですか!植木さんの歌のノリが凄い。「サラリーマンは気楽な稼業と来たもんだ」の「キタモーンダッ!」の「ダッ!」のとこでバックが入るとこがタマラン。キマッテるなぁ。で、ノー天気に「ドンガラガッタドントドント...」って一緒に歌って油断してると、エンディングのリットした部分での植木さんの歌声が悲しげで、ついホロっとしちゃう。

 "ハイ それまでヨ"と"無責任一代男"がAB面の第3弾は凄すぎます。凄すぎです。"無責任"のイントロのカッコ良さにすぐにヤラレルが、それに続く植木さんの歌にワクワクしっ放しでしょ。「コツコツやる奴ぁ、ごくろうさん!」に感動。"ハイ それまでヨ"には何も言う事はありません。詞と歌の素晴らしさももちろんだが、やはりここでは萩原先生の天才ぶりが圧倒的。この曲の場合、笑ってなどいられない。感動、感動です。聞いててドキドキのしっ放し。
 元気爆発のそれまでと一転、えらくわびしい詞の内容で軍歌調"これが男の生きる道"だけど、これがまたイイ。「飲んで騒いでラーメン食って、毎日こうだと こりゃ泣けてくる」って本当に切実で、身にしみる。"ショボクレ人生"も傑作。最初の「バーやキャバレーじゃ 灰皿盗み...」でつかみはOK!それにしても植木さんって何でも歌える。本当にうまい。

 "ホンダラ行進曲"は植木さんだけでなくハナさん谷さんのリードもいいのよ。「ホンダラホダラダ...」は「スイスイスーダラダッタ」と同じように無常観があるね。「どうせこの世はホンダラダッタホイホイ」って納得です。ついでに「どうせ女はホンダラダッタホイホイ、だから男はホンダラダッタホイホイ...」ってくるんだから深い!
 "どうしてこんなにもてるんだろう"もいいんだよね。ここでも萩原先生凄いです。間奏のクラリネットが最高にイケテル。植木さんは演歌調からいつものブアーっといく感じまで表現の幅の広さが素晴らしい。

 で、続く"学生節"も有名だけど、青島/萩原コンビでないのでずいぶん肌触りが違う。毒気が薄まった感じ。萩原作編曲の"めんどうみたョ"の浪花節演歌調の方がひかれちゃう。セリフのところでの植木さんがお見事。
 青島復帰しての"ホラ吹き節"も傑作。こう来なくっちゃね。「さあーイッチョウブアーッといくか!」の植木さんのシャウト、チョウ最高。だから、その後のオケのノリも快調なのよ。「デッカイホラ吹いて ブアーッといこう」の「ブアー」前の休符にティンパニ入れるセンスも最高。
 "だまって俺について来い"は青島さんの詞がいい。で、植木さんの歌で聞くと本当に「そのうちなんとかなるだろう」と思うし、じんわりと感動してくる。

 "ゴマスリ行進曲"も「らしい」曲なのだが、ちょっとマンネリ気味?それよりクレイジー全員がリードをとる"悲しきわがこころ"が好き。聞いてるこちらも「勉強になりました」。
 黄金の3人による最後のAB両面である"遺憾に存じます"はビートルズの"I Wanna Hold Your Hand"のイントロのパロディに始まって、寺内タケシさんのエレキが大活躍。コンボオルガンによる演歌調のフレーズもいい。ただ、植木さんは少しヤケッパチ風?
 "大冒険のマーチ"は傑作。「ドンガンドンガラガッタ」ってところはまたか?と思うけど、その後の詞の展開とオチ、それを歌い回すクレイジーが楽しい。「やって出来ない事はない 先ず手始めに...」の特に「先ず手始めに」のメロディが良くって、次のオチ「ちょっと百円かしてくれ!」をすっごく期待させる作り。直後に谷さんの「アレー!!」と来るからタマラン。3番のオチは「ちょいと一杯やろうかね(ヤラレター!)」ですから、「よし、俺も」って気分に。

 さてこの後、正直パワーは下降気味。その中"余裕がありゃこそ"は黄金トリオによる作品で、随所にさすがと思わせるが、やはりこちらも全盛期ほどではない。ただし、映画ではこの頃クレイジーがラスベガスで大ロケした「クレイジー黄金作戦」があって、私は上野東宝で観て興奮しまっくったのでした。浜美枝さんが綺麗で、大好きになっちゃって。この時の主題歌が永六輔/中村八大コンビによる"万葉集"という異色作(?)だった。

 宮川泰さんによる傑作は"ウンジャラゲ"で、89年に志村けんがリバイバル・ヒットさせたけど、志村バージョンでは曲のシメのメロディ、つまり「ランラランラランで一週間」の最後の「ラン」のところが違っている。植木さんのオリジナルはいきなりマイナーになるのに、志村さんはそのまま。ここでマイナーなることで、何とも情けなく切なくほのかな笑いがこみ上げるのだ。植木さんのバージョンを知る者には、志村バージョンは認められない。
 もろセルメン・マシュケナダ風の"アッと驚く為五郎"も曲としてはなかなか楽しい。が、全体にじょじょにあざとい感じがしてくるのだった。ヒットを続けるというのは大変なことだ。 
 なので歌ものというよりも、クレイジー全員出演のコント仕立ての"全国縦断追っかけブルース"がなかなかイケルのです。このテナー・サックスは誰だろう、いいですねぇ。

 71年に青島/萩原が復活して"この際カアちゃんと別れよう"は、タイトルがあの「ボンカレー」のCM(「これ200円、味400円、この際カアチャンと別れよう!」)での植木さんを思い出させるけど、出来はもう一つか。この頃は、なかにし礼/川口真、川内康範/猪俣公章、阿久悠/鈴木邦彦、といろいろな作家陣と組んでいる。
 この後、しばらくリリースはなかったが、78年のシングル"これで日本も安心だ!"は久々の傑作。青島/植木はすっかり父親的視点になっていて、かつての無責任男が皮肉たっぷりに歌っているのが面白い。萩原先生のアレンジはシンセが登場していて相当イケテル。いつもながら、スリリングな展開にニヤリとさせられる。その後もいろいろなレコードが90年代までにもあったが、私はほとんど未聴であり、植木さん自身も渋い俳優として活躍されていた。

 さて、こうしてあらためて聞いて行くだけで、どんどん元気になっていくから凄いです。かつてTV番組でサザンの桑田佳祐さんが、"失恋・・・悲しみにくれる時"にジャストフィットする曲として、「スーダラ節」を選んだという。さすがの見識の高さではないか。そう、植木さんの歌は文句なく人を元気にする。そして、映画やテレビで見せたエネルギッシュな動きにこちらもすっかりノセラれて、やる気がみなぎってくるのだった。
 昭和が生んだ偉大なるエンターテイナー植木等は永遠だ。植木さんのご冥福をお祈りするとともに、生きている我々は、もっと元気だして、とにかく、ブアーッと行きましょう!
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by harukko45 | 2007-04-04 23:23 | 聴いて書く

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