サイドウェイ

 いい映画でした。これは面白かった。なるほど、監督は「アバウト・シュミット」のアレクサンダー・ペインでした。この人は才能豊かですね。本当に傑作です。数々の賞を獲得したのもうなずけます。

 まず、映像が美しい。こだわりのある自然で柔らかい絵がハリウッド映画であることを忘れさせます。「アバウト・シュミット」もそうでしたが、抵抗感なくスーっと観ているものを導いてくれるのです。そうしているうちに、サンタバーバラの綺麗な景色の中を二人のダメ男の小さな旅が始まるのでした。そして、魅惑的なワイン・ツアー。そのウンチクも極めて面白いし、実在するワイナリー、レストランでの撮影がとても素敵なのです。実際、どれも旨そうだし、よく飲むし。うらやましい!

 しかし、本題はワインではない。このあまりにも豊かな小道具を使いながらも、何よりリアルに語られるのは、ごくありふれたダメ中年男達の心情です。それを、コミカルに見せながら、いや、実際には本人達はシリアスでも、他人からみれば滑稽な姿である、それが中年という時期。コメディ的なのは、リアリティがあるからなのです。その視点と表現の仕方が鋭いし、共感するのです。おかしく、そして切ない。

 いつしか、対称的な二人の男(繊細でオタク的なワイン通で小説家志望の英語教師と、こだわりがなく女好きだがついに結婚を決めた落ち目の俳優)の内面は自分の内面とピタっとリンクしていくのだった。だから、どのシーンにおいても納得するし、彼らが抱える悩みとやり切れない思い、それは、夢をまだ追い続けているが、もはや決断もしなければならない(あきらめなきゃならない)という現実とともに、とても切実に胸に迫ってくるのだ。

 だが、そういう内容でも極めて優しい表情の映画だ。そこにペイン監督の素晴らしさを感じる。

 監督、原作/脚色、カメラ、ロケーション、すべて良いが、俳優達も素晴らしかった。中心となる男女4人の俳優はすべてこれまでほとんど無名だった人が起用されたが、実に自然な演技で普段の生活そのもののようだった。まさに、今そこに実在する人々だ。

 音楽もいい。何と「60年代のイタリアン・ジャズ風に」という監督のこだわりにしびれるし、最高にシャレている。モノラル録音にしたかったという要求は台詞とのミックス上かなわなかったらしいが、ステレオ録音後に加工して監督の希望に近いサウンドを実現したという。なるほど、確かにいい感じなんだな、これが。

 で、ラストは少し希望があるけど、はっきりはさせない。ありきたりの万事OKにしないところが、いい。何で、これがアカデミー作品賞取れなかったんでしょう? あー、「ミリオン・ダラー・ベイビー」だったのか、うーん、惜しいね。
 すいぶん遅れて観たけど、とっても満足しました。アレクサンダー・ペイン監督の作品はこれからも要チェックです。
 それと、サンタバーバラを訪れる機会があったら、是非レストラン「ヒッチング・ポスト」に行ってみたい!
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by harukko45 | 2007-03-05 02:10 | 映画・TV

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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