人気ブログランキング | 話題のタグを見る

宇宙戦争、そしてスピルバーグ

 「マサイ」に続いて、スティーブン・スピルバーグ監督2005年の「宇宙戦争」を観た。ずいぶん極端だが、ハードディスクの録画順だからしかたない(?)

 さて、スピルバーグ、この監督に関しては不思議な感慨を持つ。なぜなら、私は大嫌いだし、彼が高い評価を受ける事にさえ不満を感じている。にもかかわらず、結局彼の作品を観るのは、「やっぱり、俺はこいつが嫌いだ」というのを確認したいがためなのか。
 昔のアンチ巨人ファンが一番熱心に巨人を観ていたことと同じか?(今の私はアンチ巨人ではない。もうすでに巨人に興味を持っていない。)

 スピルバーグが素晴らしいと思ったのは、デビュー作の「激突」と初の大ヒットとなった「ジョーズ」だ。この2作は今でも傑作パニック映画として、高く評価したい。が、その後の一連のヒット作については、二度と観る事はないだろうし、どうでもよい。彼がどんなに卓越した理論と技術を駆使して豪華な(意外に制作費かかってないんだよね、だからこの場合は効率性の高い)娯楽作を作っても、私は東宝のゴジラ映画の方を絶対に選ぶのだ。

 娯楽作なら、まだいい。なぜなら、この「宇宙戦争」もそうだが、パニック・シーンの映像の作り方見せ方は、世界最高であることは事実だからだ。だが、彼はそれだけだ。人間が出てきて自己を主張しはじめると、映像に勢いが突然なくなる。なので、私は早回ししてしまう。これを映画館で観たらイライラしていただろう。だが、その最高のパニック映像も延々何十分も見せられ続けたら、いい加減こちらも免疫が出来てビックリしなくなるのだ。そこいくと、日本の怪獣映画にはバランス感覚があった。日本の特撮はショボイ?冗談じゃない、CGだろうとキグルミだろうと、偽物に違いない。後は見ている方の想像力(創造力)の問題だ。そういう刺激を沸き起こすかどうか、スピルバーグの映画には圧倒されても、何もこちらの想像力は沸き上がってこない。ただただ凄まじい映像を押し付けられてしまうので、見ている方は思考停止に陥る(精度の高い特撮はリアルではあるが具体的すぎて、私が考えて膨らませる必要がない)。

 話がそれた。そう、娯楽作ならまだいい。時々、彼が急にマジに「オスカー」を取りに感動大作を作るのが、最悪に不愉快なのだ。

 「カラーパープル」、これは彼の文芸大作の中ではかなりいい。でも、何か人物達が薄い感じがしてしまい、心に迫ってこない。で、だんだんお涙頂戴的なストーリー展開になってしまう。子供時代の描写は好きだ。だが、ウーピー・ゴールドバーグが登場してきてから、だんだんつまらなくなってしまう。それは、彼にはちゃんとした役者を仕切れるオーラがないからではないかと思う。彼の映画のキーになるのが、子供が多いのもそのためだ。

 「シンドラーのリスト」、実話なので内容は重いし深い。でも、彼は結局メロドラマにしか仕上げられなかった。歴史的事実としてナチス・ドイツのやったことは許されないものの、単なるステレオ・タイプで膨張的に善悪を描くやり方は、こういう内容でも娯楽を意識してしまう彼の体質だ。私としては、78年にアメリカでオンエアされたTVドラマ・シリーズ『ホロコースト−戦争と家族−』に感動していたし、結局今に至るまで、「ナチによるユダヤ人虐殺」をテーマにした作品は映画もTVもこれを越えていないと思う。

 「プライベート・ライアン」、この映画はつまるところノルマンディ上陸の戦闘シーンの凄まじさのみだ。つまり、彼にとっては戦争も恐竜やUFOと同じような扱いになっていくのだ。そして、先にも書いたが、超迫力のシーンを延々とこれでもかと見せて行く手法により、いつしか脳が麻痺していき、だんだんどうでもよくなるのだった。例えば、キューブリックの「フルメタル・ジャケット」には物量かけて戦いを見せるシーンはほとんどない。だが、異常な緊張感が映像にみなぎっていて、ただ兵士が廃墟と化した街を走っているシーンでも、観ていてドキドキしてしまう。まさに戦場にいるかのようにだ。
 「プライベート・ライアン」は、冒頭の戦闘シーンの後はありきたりなヒューマン・ドラマとなって、「あー、やっぱり彼には無理だ」と強く感じた。エンディングでは再び凄い映像で戦場を再現するが、なぜか空虚感が漂う。それが、狙いとも言えるが、彼の場合、ドイツ軍の戦車が恐竜に見えてくる。そして、人と人の戦いがだんだん消えていく。
 何と、この後、彼がトム・ハンクスと製作したTVシリーズ「バンド・オブ・ブラザーズ」の方が断然に素晴らしい出来。ここまで真実をきちんと語ることで、ドンパチの派手さなどなくても、圧倒的に感動する。

 「A.I.」、キューブリックが生きているうちに彼がこれを撮っていたら、もっとすごいことになっていたか?今さらわからないが、とにかくキューブリックは「アイズ・ワイド・シャット」なんかに時間を費やさずに自分で「A.I.」を作るべきだった。ひょっとしたら、「2001年」の続編はこの「A.I.」になっていたかもしれない。だが、実際にはそうはいかず、最悪の結果となった。
 製作を持ちかけたキューブリックも悪いが、引き受けたスピルバーグも節操がなさすぎだろう。これは、キューブリックでも、スピルバーグでもない、それこそどうでもいい仕上がりだ。それにしても、何でスピルバーグは結論を急ぐのか?彼は観るものに優しいとも言える。こちらが観たいと思うものを作れる。そして、すべてにオチをつけてくれる。だが、観た後に何も残さない。それが特技でもあり、最大の欠点なのだ。
 金を払った2時間、楽しければ十分。それも正しい。ならば、それに徹してくれ。私はジョージ・ルーカスは大好きだし、ぜんぜんスピルバーグよりも偉大だと思っている。私には、この映画のラストよりも、ダース・ベイダーの恋と人生の悲劇に涙してしまう。

 そうだ、「宇宙戦争」ね。宇宙人の攻撃、相当凄いです。トム・クルーズは毒にも薬にもならないので、こちらの注意をひかず、ここでは成功しています。かえって、子供二人の方が主張が強くて、逆にこの映画ではウザイです。宇宙人が破壊しつくすシーンを観るのに集中したいのでね。
 それと、地下室で隠れているのを、エイリアンが蛇のようなマシーンで捜索するシーンは大笑いです。何で、こんなに凄い科学技術持ってんのに、カメラで探してんの? 「24」だって衛星から熱反応とかで、敵を見つけてんのにさぁ。
 ラストで、家族全員生きてるってのも、さすがスピルバーグです。冗談でしょ?何でこの家だけ無事なのよ!
 それにしても、エイリアンの姿がダサイ。こういうところが徹せられない弱さじゃないか。

 
Commented by サプライズ at 2011-01-12 08:16 x
今年もよろしくぅ(2011)で過去ログですがお邪魔させていただきます。スピルバーグって最初の頃は無敵のアイドルだったんですよ「E.T」あたりまではね。「シンドラーのリスト」あたりから無理やり賞取り(オスカー)だけになってきたからか明らかに鈍ってきたのは事実でその後の「ジュラシックパーク」「プライベートライアン」ぐらいまではなんとか見れましたが後は普通の娯楽監督になってしまったんですねインディシリーズも最後の「クリスタルスカル」は何故かつまらなくなってるんだよねぇこういうことってあるんですねぇ
名前
URL
削除用パスワード
by harukko45 | 2007-03-03 16:12 | 映画・TV | Comments(1)

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる


by harukko45