プルーフ・オブ・マイ・ライフ

 ジョン・マッデン監督の「プルーフ・オブ・マイ・ライフ」をDVDで観た。マッデンの作品を観たのは4作目で、私の中ではかなり信頼している監督の一人かもしれない。何しろ、「クイーン・ヴィクトリア/至上の恋」「恋におちたシェイクスピア」という傑作を生み出した人だ。その後の「コレリ大尉のマンドリン」で、少々期待を裏切ったが、2005年公開のこの映画はなかなかの佳作だと思うし、やはりマッデン監督の仕事は手堅いと感じた。

 ただ、前記の2作の時のような手放しの感動はない。が、さすがマッデンとも言える美しい映像美と丁寧な演出が貫かれているし、役者達の演技も皆素晴らしく、観ていて久々に映画らしい映画につきあっているな、と思ったのだった。
 正直、最近の話題の映画より、TVシリーズの方がずっと大掛かりで内容が良く、感動することが多い中、登場人物も少なく、設定も父と娘の住む家に凝縮し、逆に映画の「らしさ」を感じさせたことで、監督の腕の良さを証明したと言えるのだ。(この映画の原題も「証明」ね。)

 それと、主役のグウィネス・パルトロウの能力を一番良く引出せるのはマッデンなんだな、ということ。「恋におちたシェイクスピア」でのスンバラシーイ美しさで見事にオスカーを取った彼女は、それ以来これといった活躍がなかったように思うが、再びマッデン監督と組むことで、その魅力と才能をしっかりと示してくれたし、それを導きだす監督との相性の良さを感じてしまう。だから、もし今後も何作かコンビが続けば、原節子と小津安二郎の関係のようになるかも。

 それと、アンソニー・ホプキンスの重厚な存在感はさすがとしか言いようがない。前記の傑作2本ではジュディ・デンチがそういう位置にあったが、今回のホプキンスも出てくるだけで映像が決まるって感じで非の打ち所がなかった。

 恋人ハル役のジェイク・ギレンホールは、顔も演技も濃いが、それでいて嫌みがなく、なかなか味があって好感を持ったし、かなりイカれた登場人物の中で、一番の難役だったかもしれない唯一の凡人である姉役をすんなり演じきったホープ・デイヴィス(そういえば「アバウト・シュミット」でも好演していた)もとても良かった。

 ただし、ストーリー全体はどちらかというと舞台劇として観るもの(マッデンとパルトロウはまずは舞台でこの戯曲を成功させてから、今回の映画化)で、映画の物語としては弱い。つまり今時の人々には、こういうジンワリした物語につきあいきれず、「何を言いたいのかわからん」ってことになるだろう。
 例えば、せっかく大きな題材としてある「数学」を、もう少し深くえぐって欲しかった気もする。それが、結末において物足りなさを感じさせるところだ。ただ、ここに安易に入っていくと、人間の心理劇の方が薄まってしまうだろうし、難しいところ。ある意味、セリフのところどころに数学的なヒネリを効かせることで、深入りせず「真理はミステリー」にとどめたのがうまかったとも言える。

 でも、マッデン作品を初めて観る人は、まず前記の2作を観るべき。「恋におちたシェイクスピア」は本物の「ロミオとジュリエット」よりもシェイクスピアの素晴らしさを感じられるロマンティックで楽しい傑作。「オセロ」が映画よりもヴェルディのオペラ「オテロ」の方が面白いことに近い。
 「至上の恋」は深く繊細で切ない大人の純愛物語、それは絶品の美しい内容だ。ジュディ・デンチの演技が凄いし、従僕ジョン・ブラウンの生き様に心から感動する。
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by harukko45 | 2007-03-01 16:16 | 映画・TV

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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