ヴェルディ/椿姫(La Traviata)

 昨夜はNHK-BSで、2005年のザルツブルグ音楽祭で話題となった公演、ヴェルディの椿姫がオン・エアされた。主役ヴィオレッタにアンナ・ネトレプコで、ウィーンを始め目下大人気の才色兼備のソプラノの登場により、かなりの評判だったらしい。なので、すごく期待して観ていたのだが、果たしてそれほど絶賛の内容だろうか?
 ネトレプコは翌年のザルツブルグ音楽祭でのモーツァルト・ガラにおける、イドメネオからのアリアを歌った時は、確かに評判通り素晴らしいと思ったが、このヴェルディにおいては、ワンパターンの歌唱で、あまり好きになれなかったな。力入っちゃってて、トキメキを覚えることはほとんどなかった。顔が綺麗でも音で伝えてくれなきゃ、恋する気になれないってわけ。

 演出もちっとも良くなかった。どうせ、現代風にするなら、もっととことん抽象的にしたらどうか? 中途半端な現代化がかえって貧弱で安上がりな印象を与えるし、歌手達がカッコ悪く見えてしかたがない。アルフレード役のロベルト・ヴィラゾンがパンツ姿で2幕目最初のアリアを歌うのはみっともなくて見るに耐えない。あんな映像を残された彼が気の毒だ。歌ってる最中にズボンをはくなんて笑うしかない。
 アルフレードの父親役のトーマス・ハンプソンは私としてはヴェルディのオペラに登場してほしくないタイプ。声も演技も全くイメージと違う。が、私はこの父親が大嫌いだし、ヴェルディが書いたこの役への音楽も大嫌いなので、嫌な感じがハッキリしてかえって良かった?

 ウィーン・フィルは相変わらずエレガントな音色を聞かせていたけど、指揮のリッツィは安全運転に終始していたし、この場合、ウィーンの音色は美しいといっても、何ともおまけのように思えてくる。それに、ザルツブルグ祝祭劇場のだだっ広さが、全体に無味乾燥としたヨソヨソしさを音楽に付け加えるんだ。外面は豪華だけど中味なし、みたいな。

 しかし、しかしである! ヴェルディの音楽、この「La Traviata」は本当はとっても素晴らしいのだ!(父親のところをのぞいてね)だからCDで最高の演奏を楽しもう!

 くそったれ!何て素晴らしいんだ、カルロス・クライバーという指揮者は!これはスタジオ録音だ、が、演奏はライブそのものだ。生きているんだ、音が。歌手もみんな素晴らしい。コトルバスのヴィオレッタ、ドミンゴのアルフレード、そして大嫌いな父親もこのディスクのミルンズなら聞いていられる。
 とにかく、繊細でいて刺激的、確かにテンポは早い。頭の固いイタリア・オペラ・ファンはこれではホンモノのイタリアじゃないって言う。そうだろうか? クライバーはテンポが早くてもノリが最高なのだ。これほどまでに、スイングしてグルーヴィなオペラが他にあるか。
 叙情的で本来は緩やかなパートにおいても、早いテンポでキリっとした姿勢を崩さずにいるが、絶妙なところで伸縮させるのがタマラないのだ。それはセンスの良さ、品の良さ、才能の凄さとしか言いようがない。
 それでいて、頭でっかちな理論派ではない。歌手の感情の上を行くようなクレッシェンドやアッチェルに込められた情熱に、聴き手が燃えない方がおかしい。

 序曲から一度聞き始めたら、もう最後まで一気に聞いてしまうだろう。筋なんか、適当に覚えていれば良い(ってわけにはいかないな、実際には。でも、それぐらい音楽が雄弁だということ)。音楽が切実に聴き手に語りかけてくるので、そのドラマに真実を感じさせるのだ。切なく悲しく楽しい。その豊かな表情と深い音楽性に敬服しながら、思わず熱いものがこみ上げてくるのだった。
[PR]
by harukko45 | 2007-02-24 20:15 | 聴いて書く

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30