打ち込みは続く
2007年 02月 20日
とにかく、時間もなく急いで仕上げなくてはならない内容だったので、ここのところ全然寝てない。海外旅行のジェット・ラグよりもひどい気分ではあるが、これも仕事として頑張る、頑張るわけだ。
で、いつもながら、久々に打ち込みをやる時は、「はて、最初は何からやりゃぁいいんだっけ?」なんて調子でグズグズしつつも、だんだん出来上がってくると気持ちも盛り上がって、「俺って天才」自己陶酔モードに突入し、自分の作品の仕上がりにホレボレしながら、意味もなく何度もプレイバックしたりして。
そんなことやってっから、眠れなくなるわけよ。おかげでブログを書く余裕も失うわけだ。
さて、その急なお仕事の一つは、あの「Pretty Woman」で超有名なアメリカの国民的歌手、ロイ・オービソンの70周年(それは去年なのだが、一年遅れで)を記念したトリビュートもので、日本の誇る「通な」男性アーティスト達数名が彼の有名曲を並べたメドレーをレコーディングすることになり、そのためのプリプロ用だった。
今回のプロデューサーはギターの徳武弘文さんとシンガー・ソングライターの杉真理さん。二人ともこの手の音楽について詳しい詳しい。よく勉強してるし、本当に心底好きなんだね。だから、熱意が伝わるってわけです。だから、私は彼らのアイデアをまずはコンピューター上でシュミレーションする役回りなわけです。
ところが、このプリプロもただのショボイものじゃない。何とアメリカ本国から、ロイ・オービソンの「Pretty Woman」のマルチ・トラックがDVDで送られて来て、それを自由に編集してよいということで、切ったり貼ったり、はさんだりといろいろ楽しませてもらえたのだった。
それと、これは86年の映画サントラ用にリメイクしたもの(オリジナルは64年?)だったが、その一つ一つのトラックを立ち上げていくと、録音自体に結構面白い工夫がされているのにも気づいて、ちょっと驚いたりもした。
例えば一つ上げると、もともとは音数の少ないロックンロールではあるけど、その音圧感を充実させるために、ドラムがダブルになっていたのだった。そのダビングした方のドラムはキックを踏んでいなくて、マイクもオーバー・ヘッドのみ。そのかわり、フィル・インやスネアのパターンなどは、ベーシックのものとは変えたりしていた。だから、最初に録音されているドラムは、極めてシンプルなパターンとキープに徹していたのだった。
確かに、一時80年代でドラムをバラバラにとる(最初にキック、スネア、ハイハットのみ、タムはダビングとか)やり方があったけど、今聞くとそれが有効だったとは思えないのが多い中、この「Pretty Woman」はとても効果的なやり方だと感心した。
トータルとして、とても魅力的なドラム・サウンドになっているので、他の楽器をぐちゃぐちゃ加えなくても、全然サビしく感じないのだった。
ということで、「Pretty Woman」をベースにそこに他の有名曲をちょこちょこ挟み込んだメドレーの構成はほぼ決まり、これに杉さんが自宅で仮歌とコーラスを入れ、それをまた私に送り返してもらうという作業中。そうこうするうちに、また新たなアイデアも杉さんから出たりして、これだけ読むとずいぶん贅沢な遊びに思えるけど、何事にも真剣そのものですよ、みんな。本気になって遊んでるって感じなのかも。
本録音は来月だそうで、これは生のバンドでやります。私も生で演奏します。とっても楽しみであります。
さて、そしてもう一つはある某有名、超有名ね、アーティストの新作レコーディングに参加することが2日前に決まり、前日にその曲のイントロ部分をシンセ中心で作ることを発注され、メインのアレンジャーから概要を聞き、それにそって1日で自宅にて仕上げましたよ。
で、昨夜そのレコーディングだった次第。まぁ、私の部分は歌のパートの前の長めの序章ともいうべきところだが、ご本人とは初対面だし、お互い音楽的背景も違うから、少々ナーバスになったけど、1回聞いたら「とても良い」とのことでOKをもらったのだった。
と、ここまではいい感じだったのだけど、その後、本編の方のレコーディングが構成やらコードやらリフやらテンポやら二転三転して、かなり時間がかかり、結局この曲は完成せずに終わった。その間、私はひたすらリズム録りの様子を聞いていただけだったわけ。
自分で演奏しないで、人の演奏をスタジオでずっと聞くのって、イライラすんのよ、これが。そのうち、いろいろ口をはさみたくもなるしね。うー、今日は外様だから抑えて抑えて...。
で、やっとこベーシックが見えかけたところで、突然時間切れストップとなって、ありゃ、オイラのパートはちゃんと録ってくんねぇの?
何とそれに、ご本人もいろいろ構成やら何やらを考えたいとのこと、ってことは私の作って来た部分は結局、仮に録った2ミックスの状態のまま放置される可能性もあるわな。
正直言うと、ガックリもくるし、ナメられたようにも感じたが、ビッグなアーティストなんて、こんなもんですよ。もちろん、アーティストだけが悪い訳じゃない。本当は回りがちゃんとしてないから、アーティストが誤解されて孤立するんだけどね。でも、それはオイラの知ったことじゃない。
まぁ、とにかく、人がせっかく夜なべして作ったって、気に入らなきゃボツ。これはしかたないし、プロなんだから当たり前として、ちゃんと受け入れるでしょう。でも、OKなのに、何とも後味の悪い扱いをされるのは、やっぱり気分のいいもんじゃないのだった。
聞けば、同じ曲でいくつものバージョンのテイクを録っているとのこと、よく言えば「スティーリー・ダン的」だけど、果たしてどうかな?
さて、私には今日のオケの問題点をビシっと指摘する自信はあるけど、絶対に教えてやらない。それと、だいたい初対面なのに、事務所の連中もコーディネーターも挨拶してこなかったなぁ。アーティストとミュージシャンはすぐにそのあたりはクリアするのに、会社人間ほど礼儀を知らなかったりするわけよ。にしても「何様?」って人だらけで、天涯孤独で生きて行くミュージシャンには居心地が悪かったわー!
それでも、いろんな人に声かけて先手を打ってる自分がちょっとカワイイって思ったりして。暇だったからなんだけど。
まぁ、いいでしょう。これも業界、人間社会ですから。我が子(例のイントロね)の行く末は少々心配ですが、もし悲惨な最期を遂げても、それは無理に関わった自分が悪かった。もっと自分のために音楽をやろうって決めたのに、また「お仕事」しちゃったからだ。いやいや自分の仕事には生き甲斐を感じているし、正々堂々と仕事したいと思っていますが、中には「やるべきでない」ものもあるわけだ。その辺の区別を素早く決断しないと、だらしのない音楽活動をいい歳こいてやることになるんだ。肝に銘じよう!
あー、ちょっとすっきりした、っと。