大橋純子/In San Francisco(2)

 (前回からの続き...)
 "マシュ・ケ・ナダ"での発散ぶりは何度聴いても楽しいのだが、一呼吸置いたら次は"シルエット・ロマンス"。ここでは、オッサンと私だけによるいつものバージョン。だけど、このテイクはとても良いです。曲への愛情を感じるとでも言うのかな。ジュンコさんが最近見せる、ところどころ「抜いた」ような歌い方が、ため息まじりの憂いをも感じさせて、熱い女心を内に秘めた表情になるのが新鮮なのだ。だから、オッサンのアコギ・ソロがすごく激情的にも思えてきてエッチねぇ。

 9曲目は再びカヴァー曲、10ccの大ヒット"I'm Not In Love"。ただこれも、ジュンコさん用にアレンジしたもので、最近のファンの方にはおなじみかも。この辺になってくるとステージで演奏してる方はかなりご機嫌な「酔い心地」なのです(音でね、酒じゃないよ)。だいたい、私自身、この曲のイントロを弾き始めたら会場全体の豊かな響きを全身で感じられて、自ら感動してしまった。そして、じょじょに他のメンバーが加わるたびに感動が深まるので、4小節すぎるたびにキュンとしてしまうのだった。
 プレイバックを今聴いてみても、その時の感覚は夢じゃなかったことを確認できる。ここでのジュンコさんを含む5人のパフォーマンスの、何とも言えないまったりとした美しさは絶賛に値する。これぞ、バンドって感覚。バンドの真実って、こういう演奏体験を共有する中からしか生まれない。それ以外のところで、いくら仲良くしてても何も意味がないんだ。

 いよいよ終盤、ここは定番のホット・キラー・チューンとも言える"サファリ・ナイト"と"ペイパー・ムーン"。サックスとコーラスがないと、ほとんど骨組みだけしかないようなサウンドになってはいるが、全員の体内にしみ込んだ太いグルーヴ感がうねりまくっているので、物足りなさは微塵も感じない。
 この2曲、基本的には70年代後半のディスコ・ビートだったが、我々のアプローチは当初から、かなりファンク色が強かった。それもまさに「今、ここに立っている」ベイエリア/オークランド・ファンクのニュアンスだ。
 我々世代には憧れと尊敬に値するそのサウンド、コールド・ブラッドやタワー・オブ・パワー、あるいはハービー・ハンコックと組んだヘッド・ハンターズなどが代表だし、その大元ともいえる巨人バンド、スライ&ファミリー・ストーンもサンフランシスコが本拠地だった。

 正直、そういったバックボーンを持つ偉大な土地からのパワーを感じずにはいられなかった。だから、全く持って「おーバカな」演奏になっている。特に"ペイパー・ムーン"!!この尋常じゃない演奏はナンデスカ?
 さすがのオッサンだって鼻息荒いでしょう。元々荒い私は失神寸前。ウエちゃんのプッシュが凄くてカッコイイ。そして全体をしっかり締めているロクさんのベースが、ほんとにアリガタイ!
 ジュンコさんのボーカルさえもバンド内に巻き込まれていくようで、一つのカオスとなっているではないか。

 本編最後は、このところ定番になっている"星を探して"。こうしてmp3の録音を聴いていると、バンドってもんはステージ上で成長するんだなって、つくづく思う。前半の演奏から数段、表現の幅が大きくなっているし、より一体感が増しているのが、よーくわかるのだった。
 この曲の場合、普段よりも少しテンポが早く感じるが、そのニュアンスはいい意味ライブっぽくて、逆に好ましく思う。各自の「気持ち」がこもっているのが伝わるからだ。それに、演奏に風格がある。この日、お客さんが入る前のリハーサルからずっとやってきて、ついにショウの最後に、この状態に辿り着けたという満足感を得られたことが、何とうれしかったことか。

 アンコールにお応えして、私とジュンコさんだけで"Cry Me A River"。これまた、奇遇ではありますが、このオリジナル・ヒットを歌ったジュリー・ロンドンも、サンフランシスコの70kmほど南、サンタクララ出身。こういうのが「縁」ってものなのか?そう考えると、いろんな偉大な音楽の魂達が、海を越えてやってきた東洋人プレイヤー達に大きなエネルギーを与えてくれていたんだって思えて、感無量になるのだった。
 だから、ここでの自分の演奏は、とても自然に出来たし、ジュンコさんとのコンビネーションもすごく良くなったと感じた。

 そして大ラスはポール・マッカートニーの"My Love"。ジュンコ・ファンの方にはもうおなじみ、原曲のイメージから大胆にジュンコ風になっている"My Love"。ここでは"星を探して"で感じたことと同じ事が言える。カオスとスペースが絶妙のバランスで交差して、一つになった音世界。これこそ、ライブの醍醐味、演奏し歌うことの喜びだと確信するのでした。

 大きく暖かい拍手、それもアメリカらしくスタンディング・オベイションしていただいたお客様達には感激と感謝の気持ちでいっぱいです。我々は手をつないでラインナップ、精一杯の気持ちを込めてお礼させていただきました。そして、ここでもあらためてもう一度、本当にありがとうございました!!!

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by harukko45 | 2007-01-16 15:33 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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