ジョン・レノン・スーパーライヴの詳細(3)

詳細(2)からの続き

 押葉君の"Yer Blues"をやり倒した後は、バンドはいったん休憩に。楽屋に戻るさいに各メンバーがハイ・テンションではしゃいでおりました。というか、私が一番はしゃいでいたのかな。でも、とにかく皆気持ちよくここまでやれているという感じで、まずはバンマスとしてはウレシいのでありました。

 その間、ステージでは宮沢りえさんの朗読、映像、そしてCoccoさんのパフォーマンスと続いた。Coccoさんは何回かこのイベント出演を打診されていたらしいが、いわゆる「チャリティ・コンサート」に不信感を持っていたとのこと。学校を建てるという主旨も納得がいっていなかったのだそうだ。そこで、彼女のすごいところは、今回主催者であるプロデュースセンターの方々とともに、ベトナムに建った学校を実際に見学に行ったのだそうだ。それにより、このイベントによる成果と意義を自分の目で確認、納得し、出演してくれることになったと言う。
 こういう姿勢で物事に関わるCoccoさんの真摯で筋の通った生き方には、私も感動させられた。そして、彼女はギターの長田さんとともに"Rubber Soul"収録の超名曲"Norwegian Wood"を歌ってくれたのだった。

 続いては、逆にこのイベントでは毎年熱心に関わってくれている曽我部恵一さんの登場。昨年同様、自らのJazz風(?)なユニットでのユニークなパフォーマンス。彼のビートルズ、ジョンへの熱い思いと、独自の表現をトライする姿勢も素晴らしいと思った。今回は特にジョンの曲の中でもおなじみのナンバー"Jealous Guy""Mother"ときたから、その料理の仕方が実に興味深かった。でも、たまには我々とも一緒にやってほしいなぁ。是非お願いしたいアーティストであります。

e0093608_12563538.jpg そして、再び我々のセットになって、斉藤和義さん登場。斉藤さん、実に良かった! まずは選曲自体にある意味大胆さがあって不気味ではないか! 1曲目の"Free As A Bird"はジョンの死後、彼の残したボーカルとピアノが録音されたカセットテープを元に、残った3人がダビングして完成させたもの。"Anthology 1"が出た時の目玉の新曲として注目された曲だった。

 ただ、マニアの間ではプロデューサーのジェフ・リンの個性が出過ぎであるとの批判もあったし、ポールもあまり納得していなかったとの噂もあった。が、いかにもジョンの後期らしい「やさしさ」やある種の「悟り」のようなムードを十分持った内容だと思う。

 そんな流れからか、発売当初は注目されたものの、その後は比較的忘れられていた感じだったし、現にこのイベントでも初登場となったのだった。演奏面においては極めてシンプルであり、多少ルーズなムードを感じながらもキチっとプレイすることが大事。全体的には音数が少ないような印象を与えるが、結構シンセのパッドやギターやコーラスがいろいろ絡み合っているのだった。それと、面白いのがジョンのパートの後、1コーラス目のサビはポール、2コーラス目はジョージが歌うのだが、そこへの受け渡しのコードをわざわざ変えているという微妙な配慮(?)があったりする。それと、間奏のスライド・ギターにかぶる美しいコーラス・ワークはちょっとビートルズっぽくなくて、まさしくジェフ・リンっぽいかもね。
 ただ、個人的にはこのコーラス・ラインは大好きなので、是非やってみたかった。今回は黒沢君がよく各パートを理解していて、阿部君とともにばっちりハモってくれた。私はボイス系のシンセで彼らをサポートしてダブリングしたような効果をねらった。
 それと、オッサン(土屋さん)のスライドは、いつ聴いてもタマラン。本物より良いんじゃない、いやマジに。

 でもって、斉藤さんのボーカル、根っからのダルでちょいワルな感じ(人間性はとっても素敵な人だったけど)が、オモシロイ世界を醸し出してくれる。勝手な見解で失礼かもしれないが、ニール・ヤングのような孤高のオーラがあって本当に魅力的だった。そして、そのユニークさがより浮かび上がったのは、2曲目の"I Am The Walrus"であった。

e0093608_12564746.jpg これは個人的には「激燃え」したよ。とにかく、やっかいな曲。"Magical Mystery Tour"はすべてのサイケ・アルバムの中でも1,2位を争うだろうし、ビートルズ中期の代表曲を集めたベスト盤としてもゴキゲンだと思っていて、"Sgt.Peppers"よりも好きだ。ただ、その中のどの曲もライブでやるにはそれなりの覚悟と試練が待っているのだった。

 だいたいにおいて、この時期はビートルズというよりも、ジョージ・マーティンのオーケストレイションや音処理・ミキシングの異様さが際立つわけで、それをジョンやポールが意図していたかどうかはともかく、バンドよりもサウンドそのものが大きな比重を持っているのだ。

 で、どこまでやるかが問題。まずはチェロなどのストリングスとホルンのフレーズをコピーし、途中の意味不明なノイズをサンプリング、後はひたすら練習しながら、どこをどうするか整理していった。ただ、音色的にはビートルズのような過激なサウンドはむずかしかった。もちろん金と時間をかければ何とでもなろうが、今回のトライにはかなり満足している。現状の最善は尽くしたと思う。
 今聴くと、チェロのパートはかなり自由にやっており、譜面には書いてなかったのかもしれない。この時の奏者が実に優秀であり、よくビートルズを理解していたのかもしれない。フレーズだけ追っていくと、まるでヘビメタのリフのようで、カッコイイのだ。
 それと、極めてオンマイクで残響のない録音とその後のコンプレッサー処理によって、ますます異様な音質になっているわけで、こればっかりは実際に本物のチェリストにお願いしても再現はできないだろう。
 だから、とことんライブ演奏として楽しんだ。本当に楽しかったし、演奏しててワクワクのしっぱなしだったよ。こういう風にいろいろとやることが多く忙しい曲はキーボーディスト魂に火がつく訳よ。

 しかし、何と言っても、斉藤さんが日本語で歌い、終わり間際のコーダでは過激なギターを弾きまくってくれたのが、トドメになった。日本語訳を自らすることは、それなりのプレッシャーがあったと思うが、ギリギリのところで自らの個性とビートルズを両立させて、なおかつ単なるコピーに終わらず、ライブ・パフォーマンスの醍醐味を見せてくれたことは大いに賞賛したい。

詳細(4)に続く
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by harukko45 | 2006-11-06 16:45 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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