Bob Dylan/Modern Times

 今年65歳になったボブ・ディランの新譜"Modern Times"は、今のディランがいかに好調であるかを見事に示してくれました。それに初登場1位とは何と素晴らしいことではないですか!
 97年の"Time Out Of Mind"以来、彼の姿勢は全く迷いがない。現代に自分の存在価値をしっかりと確保したこの天才アーティストは孤高の世界を歩み続けているのだった。
 ところで、ボブ・ディランを初めて聴く人、それなりに聴く人などにとっては、このアルバムは「渋い」と感じるのだろうか?そういう、コメントも見た。が、昔からのファンである私には、ちっとも「渋み」を感じない。それどころか、元気で明るく、枯れるどころか、まだまだ毒を振りまきながら、それでいて世間のことなどおかまいなしで、やりたいようにやり、歌いたいように歌っていて実に楽しそうだ。

 元々、60年代からどこか達観したような表現をしてきた人だから、世の中の流行りすたりとは無縁ではあったろうが、それでもやはり「凄い」と言わざるを得ない。そうです、ディランは凄い!

 と、絶賛の嵐ではあるが、"Time Out Of Mind""Love & Theft"からの3部作とも言えるような今回の"Modern Times"には、名曲というものは一切ない。実は、過去2枚にもそういうものはない。つまり、彼は60,70年代のような音楽作りはもうやっていない。「名曲」「いい曲」なんかいらないらしい。どれもこれも、いつだったか何処かで聴いたようなメロディ、リフ、リズム・パターン、それに3コードのシンプルなブルーズ進行も多い。
 だから、1曲1曲、この歌詞はどうだ、この歌声はどうだと語ることが意味がないように思う。ディラン自身も"Time Out..."直後のインタビューで、「もう、歌詞を取り上げて、これはこんなことを意味しているとか言わないでほしい。それより、素晴らしい演奏に耳を傾けて、頭で聴かずに感じて欲しい。」という意味のことを語っていた。
 私のような英語が不自由なものにとって、昔からディランの聞き方は歌詞を追ったり、曲を分析することでなく、ただただ感じてきただけだったので、ここに来て、本人のお墨付きをいただいたようなわけで、私としては大変うれしい限りなのであります。

 そして特筆すべきは、ここ3枚におけるバックの演奏が本当に素晴らしいことだ。中でも"Love & Theft"と今回はともに長く一緒にツアーを回るバンドであって、その一体感と共感度・集中力の高さには惚れ惚れしてしまう。
 何も新しいことはない、が、古くない。昔と同じように演奏しているが、根底にある意識は新鮮さを決して失っていない。自分が理想とするような「バンドの未来」がここにあるように思えた。

 2枚目のDVDに収録された、ここ近年のPVもなかなか楽しめる。特に、ラストの"Cold Irons Bound"のディランとバンドのかっこ良さったらどうだ!これぞ、クーたまりませんの極地。チョビヒゲのディラン、今も最高にカッコイイ!
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by harukko45 | 2006-10-03 03:43 | 聴いて書く

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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