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W杯2006/総括

 ワールドカップが終わって1週間近くなるというのに、その後の最も大きな話題は「ジダンの頭突き」。まさに、今大会で一番印象的な出来事がこれだったということか。
 確かに、そう言ってもかまわないかもしれないほど、全体としては低調な内容だったと思っている。特に、トーナメントに入ってからは、いわゆる強豪国が出揃った割に、つまらない試合ばかりが続き、その最悪のものが決勝戦であり、おまけに試合と全く関係ない場面での暴力行為による退場劇というとんでもないものまで付いた。
 本来なら大きく扱う必要のないような反スポーツ行為(とそれを挑発する行為)がヨーロッパのサッカー界では愚かにも日常のようにおこなわれていて、それこそが伝統と常識であるということを世界中にテレビ中継してしまったのだから、ヨーロッパの権威も地に堕ちたものだ。

 要は、勝つためならどんなことでもするのがワールドカップであり、ヨーロッパサッカーであった。日韓大会からの4年間にサッカー界で発展したものは「絶対に勝つ」ために、相手にサッカーさせない戦術とありとあらゆる手段、そしてそれをおこなえる選手の強化だったわけだ。

 優勝したイタリアは当初これまでと違う攻撃的戦略を打ち出していたが、大会が進むうちにどんどん守備的になり、その作戦が最も効果的だったのが準決勝ドイツ戦。そしてそのまま決勝にも持ち込まれ、守って守って守りまくったあげくのPK戦勝利であり、何ともセコい優勝だった。

 一方、ジダンの愚挙を美談にしたがる人がフランス人以外でも多く、特に我が国のネット上などでも、「家族の名誉を守った」「サッカーより大事な事のために」「男の生き様を見せた」「人種差別への抵抗」などと、歯の浮くようなジダン擁護論が目に余る。確かに彼が素晴らしいアスリートであったことは間違いないものの、そういう意見を持つ人は、一体全体スポーツ選手にいわゆる「スポーツ表現」以外の何を期待しているというのか?

 私の意見は、ジダンもマテラッツィもただのアホだ、ということだけだ。それ以外に何があるのか? だいたい、1次リーグの韓国戦でジダンは韓国選手をいきなり突き飛ばしてイエロー貰ってたじゃないか、あれで出場停止。だから、彼は2度もチームに迷惑をかけている。マテラッツィもオーストラリア戦でレッドだったし、かねてからいろいろ「危ない」選手だった。もちろんジダンの過去の「キレた」エピソードも数多い。
 そして、いろいろ尾ひれがついて大問題化しつつあるこの「頭突き」に関して、ジダンの行いをかなりひいき目に見て、それが現在のサッカー界にはびこる人種差別意識や相手選手への侮辱的な言動への警鐘であったとしても、そんなことはサッカー界でちゃんと解決しておけ、と言いたい。何で、我々一般人の人生観や世界観と絡めてまで大きく扱う必要があるのか。
 まして、ジダン=善、マテラッツィ=悪という考え方には全く賛同出来ない。両方とも大バカ者であり、今回の顛末を大いに後悔しているに違いない。(後悔していないというジダンの発言はにわかに信じ難い。)

 私は、ただの観客として面白い試合が見たいし、凄い運動能力と技術と闘志を持ったプレイヤーがサッカーをするのを見たいのだ。それ以外のこと、つまり国家間の政治問題、民族問題、宗教問題はどっか他の場所でやってくれ、ということだ。今回の大会は組み合わせからして、何かと過去の因縁や政治的民族的な関係性の深いものが多かった。抽選なのだから、偶然ということになるのだろうが、事前に仕組まれているのでは、と疑いたくもなるような組み合わせばかりだったではないか。
 つまり、実際のゲーム自体の内容よりも、そのような外部要素の方が色濃くですぎて、それが勝敗へのあまりにも強いこだわりのみに集約されていき、結局、相手をとことん潰して削って罵倒して侮辱して、攻撃力を封じる守備的な戦術で勝利をかすめ取ったものが、勝ち上がって行ったのだった。

 フランスもそれほど面白いサッカーをしていたわけではない。かなり守備的だった。
 ブラジル! 何とつまらない、そして全世界のサッカーファンの期待を最も裏切ったチーム。
 イングランドの「史上最高」もお粗末だった。彼らの置き土産はポルトガルのC・ロナウドへの八つ当たりだけだった。
 そのポルトガルもオランダとの大乱戦はあまり褒められたものじゃない(直後は私も勝利に大喜びしたが)。その結果大会1のファウル王に輝いた。
 アルゼンチンはドイツ戦では一体どうしたことか。それまでの魅惑の攻撃力など一切否定してしまった結果の敗戦。

 そういった意味では洗練さはもう一つだったけど、ドイツが一番頑張ってサッカーしてたかもしれない。だいたいドイツが一番スペクタクルだったなんて、誰が予想しただろうか。それだけ、守備意識がかなり強い傾向にあったと言えるではないか。

 1次リーグですべてのチームが1試合を経験した段階では、「日本ーオーストラリア」が私のワーストゲームだったが、その後それを上回る凡戦が続いて、今では日本の3試合もそれなりに評価したい気持ちが出て来た。
 もちろん、我らが代表は今回明らかにコンディショニングに失敗し、もともと弱い精神面で体力技術力を補うこともままならず、あげくに、あまりにも純粋すぎる監督の不適合な戦術のために惨めな戦いばかりだったが、これほどまでに奈落に突き落とされたことにより、日本サッカー界とそれを見守るサポーター、メディアも少し冷静な目で現実を見るようになるのでは、と思っている(もちろん私自身も)。そして、日本人の美徳でもある謙虚さ、勤勉さにもう一度立ち戻ることが出来るのではないか。
 故にこの時期オシム氏を迎えられることで、逆にこれからの再生への道のりがとっても楽しみでしかたがない。その間、ヨーロッパでは人種差別だ、八百長だやってろ、て気分だ。(まぁ、こっちも韓国、中国、北朝鮮にオーストラリアまで関わってくるんだけど、まだマシな方じゃない?)

 ということで、今大会一番印象に残ったチームはコートジボワール。そして最高のプレイは全く個人的な思いから、代表最後の試合となったドイツ戦におけるポルトガル、(ヌーノ・ゴメスのゴールをアシストした)フィーゴ選手の右サイドからの美しいクロスだ。チームは敗戦濃厚だったが、この時だけは涙がこぼれた。
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by harukko45 | 2006-07-15 04:28 | スポーツ | Comments(0)

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