The Rolling Stones/'83~'86

 厳密に言えば、80年代になって初のレコーディング作品はこの"Undercover"からになる。で、このあたりから、ミックとキースの確執が始まったようだ。時代に乗り遅れないようにトレンドをどんどん取り入れようとするミックに対して、常にルーツを忘れないようにするキースとの関係は、バランスが取れている時は最高の結果を生み出して来たが、この時期は違った。

 そういう点ではこれはミック主導で完成したものだろう。全てがいかにも「MTV向け」のような仕上がりで、よく言えば実験的かもしれないが、節操がないとも言えるし、とにかく流行りのシーンに媚を売り過ぎている。かつて、サイケ全盛時に出した"Their Satanic Majesties Request"は評判は悪くても真に実験的だったし、音楽にもっと誠意があった。

 ただし、腐っても鯛のごとくm1"Undercover Of The Night"はよく出来ていて、けっこう好きだ。ヒップホップという新しい要素と従来からの「悪魔」色の合体が成功していると感じるし、ダブの決め方もなかなかだと思う。だからこそ、"Some Girls"の時の"Miss You"のように、「今どき風」はこの1曲だけにしとけば良かったのだ。
 正直、その後の曲は別にストーンズの曲として聴く必要はない。ミック自身も後に「失敗作」と認めている。

 ところが、ミックはこの後、自分のソロ・プロジェクトに夢中になって、バンドのセッションをさぼるようになり、キースの怒りを買う。だから、次の"Dirty Work"はキース主導のアルバムとなる。
 ジャケットからしてミックは横に追いやられ、キースが中央のソファにどっかと陣取っているのが象徴的(実にわかりやすいバンドじゃ)。

 何人かの人から、「このアルバムは過小評価されているけど、とってもいいんだ」と言われて、「おう、そうか」と何度か聴き直してみるのだが、残念ながら今のところ私にはまだダメだ。
 確かに、m1"One Hit"の出だしでのキースの気合いは十分伝わってくるし期待させるのだが、曲が進むにつれ、だんだんしぼんでいくようだ。
 で、全体にうんざりするのが、スティーブ・リリーホワイトのドラム・サウンドの処理で、このスネアにかかってるリバーブは、当時リアルタイムで聴いたときにもゲンナリした。チャーリー・ワッツに、ストーンズにこれはいくら何でも合わんでしょう。だから、私の場合このスネアが気になりだすとウザったくて聴いてられなくなる。

 それでも頑張って聴き進めれば、曲自体はいいな、と思うものがあるし、演奏も"Emotinai..""Undercover"の時よりもアグレッシブではある。ただやはり、バンドとしての一体感は薄い。たぶんそれは、ミック対バックってことになってて、ボーカルと演奏のトラックが離れているように聴こえてしまうからだ。この時期はストーンズ史上で一番危機的な状態だったかもしれない。(でも、それが緊張感を生んで、なかなかスリリングな感じになっているようだ。)
 だが、いつも気になるアルバムではある。だから、聴き直す機会も多いのだろう。懲りずにもうちょっと勉強してみますかね。

 ラストの"Sleep Tonight"からイアン・スチュアートのピアノ・ソロの流れは、彼への追悼もあって、ジーンと来る。だからこそ、是非とも、新しくミックスし直してくれないものだろうか。無理だろうけど、秘かに願っている。

(この後、90年代の作品を聴いた後にもう一度、"Dirty Work"を聴き直した。そうしたら、圧倒的に良いので驚いた。一気に最後まで聴いてものすごく楽しめた。この面白みに気がつかなかった自分が恥ずかしいが、同時にうれしい発見ができて喜んでもいる。)
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by harukko45 | 2006-04-10 17:06 | 聴いて書く

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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