後宮からの誘拐/チューリッヒ歌劇場

 先月末にNHK-BSが放送した「モーツァルト・オペラ・シリーズ」を見たおしたあげくにゴタゴタ言うブログの最終回です。

 "後宮"は彼が25歳の作品で、ウィーン時代最初のオペラ。そして記念すべきドイツ語による本格的に書かれた最初のオペラでもある。ただし、30歳以後のイタリア語による"ダ・ポンテ3部作"や、ドイツ語の"魔笛"と比べると深みの点で劣ることは確か。でも、そうは言っても天下のモーツァルト、音楽のみ取り出して聴くと実に愛すべき作品であることがわかるのだ。つまり、このオペラの場合、映像で観るよりもCDで聴いている方がずっと楽しい。

 物語としては何とも他愛のない話で、およそ現代の感覚ではじっくり最後まで付き合いきれるようなストーリーではない。それと、最近のヨーロッパの各歌劇場では主に若手の指揮者、歌手達のテストケースのような扱いになっているような気がする。だから、全体にまあまあな仕上がりでお茶を濁す感じがある。
 このチューリッヒでの公演もそんな感じ。数年前にウィーンで観た時も同様だった。
e0093608_3404382.jpg というわけで、チューリッヒの映像を観た後に、73年のカール・ベーム指揮ドレスデンによるCDを聴き直して「おお、やっぱ、エエなぁー」と思っているわけだ。
 だいたい歌手の格が違うわな。アーリーン・オジェー、レリ・グリスト、ペーターシュライアー、クルト・モルですから、文句ありません。それに何と言ってもベームのモーツァルトに対する愛情と共感度が深いのであります。
 少々私の趣味が古くさいのかもしれないけど、結局モーツァルトではワルター、ベームは外せないってこと。

 ただ、誰の演奏・歌唱においても聴き所となるのは2幕目のコンスタンチェのアリア「どんな責苦があろうとも」で、約10分近い長大な難曲なのだが、私にはモーツァルトのソプラノ歌手イジメのように思えてしかたがない。
 まあ実際には、そんな事はないだろうけど、役の名前が自分の妻と一緒だし、歌詞の内容は「どんな拷問で責められても恋人への貞節を守ります!」って感じで、かなりヒステリックに純潔を歌っているのだが、それを彼は「音のムチ」でビシビシと容赦なく叩いている(拷問している?)。そのように聴こえるのは私だけですかねぇ。
 で、そのムチで叩かれるたびに、歌に陶酔感が増すのが何とも楽しい(?)。おまけに最後は激しいアルペジオをオケとともに疾風のように上がって下がって上がって下がって、かなりの追い込みかけて終わるのだ。これがたまりません。

 もちろん、この拷問を見事に耐え抜いたソプラノ歌手は観客から熱烈なブラボーを浴びて、スターとなるのであります。
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by harukko45 | 2006-02-16 04:19 | 聴いて書く

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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