アルバン・ベルク弦楽四重奏団

 アルバン・ベルク弦楽四重奏団は現在最高の「弦カル」の一つとして有名だ。だが、私はいかんせんこの手の「室内楽」が苦手だった。
 私のクラシック音楽での好みは、一にオペラ、二にシンフォニー、三に協奏曲かピアノ曲、となって、その他はなかなか聴くことは少ない。それに、前にこの団体の演奏をちょっと聴きかじった印象では、「メチャウマ」だが、何か「冷たい」ような気分になり、それに室内楽特有の音味がオーケストラのような豊かさに欠けるのと、指揮者という何とも「妖しい」存在の魅力がないのが物足りなく思い、ずっと敬遠していたのだった。

 が、何を思ったか、一昨日のNHK-BSの放送で、やっと「ちゃんと」彼らの演奏を聴くことにした。そしてその結果、今までのこれらの音楽への誤解をあらためさせられ、その素晴らしさにすっかりノックアウトされたのだった。

 演奏は去年の5月で、曲はシューベルト2曲と現代曲だが、最初のシューベルトの10番の始まりだけで、すぐに自分の今までの愚かさに気がついた。その意外とも言える音色の明るさにまずは惹き付けられ、そのまま夢中になってしまった。そして、その演奏の完璧さに当然まいったものの、けっして理屈とテクニックだけで音楽しているのでないことは明らかで、情感の豊かさや何とも言えない「懐かしさ」も感じさせてくれたのだ。
 それは2曲目の現代ものでも言えて、不協和音とノイズの応酬の中に「暖かい」音色の美しさをちゃんと同居させていた。

 そして、もう一人のチェリストを加えたシューベルトの五重奏曲は圧巻だった。曲も素晴らしいのだが、この演奏には興奮させられた。ゲスト・チェリストのハインリヒ・シフさんは大変パワフルな音の持ち主で、他の4人の完璧さを打ち負かすほどのエネルギーで、やんちゃの限りをつくして「歌い」まくっていたが、対するバイオリンのギュンター・ピヒラーさんもこれを受けて立ったり、さらっとかわしたりと見応え(聴きごたえ)のあるスリリングさで一気に突き進んでいくのだった。
 それでいて、全体としての完全無比さが全く失われないのは驚異としか言いようがなかった。最後には轟音のシフさんのチェロも見事に一体となって、室内楽とは思えない迫力を実現した。

 とにかく、現代的な精微さと見識の深さとともに、七変化のような音色の変化と伝統から受け継いだ豊かなニュアンスをすべて兼ね備えた凄い人達だった。恐れ入りました。
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by harukko45 | 2006-01-21 23:59 | 聴いて書く

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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