ソウル・オブ・マン

 「The BLUES Movie Project」の6本目「ソウル・オブ・マン」は、ヴィム・ヴェンダース監督の才能が光る秀作だ。これは、発売されているサントラとともに手元に置いておきたい作品と思う。
 「ブエナ・ビスタ...」ではあまりピンとこなかったのに、こちらはほぼ全ての部分に共感できた。このシリーズの中で、最もブルーズの深淵を見せてくれたのではないだろうか。「パリ・テキサス」「ベルリン・天使の詩」におけるヴェンダースが素晴らしい構成と映像で、ブルーズを深く深く掘り下げていったあげくに、ついに宇宙にまで到達したのだった。

 ブラインド・ウィリー・ジョンソンの「ダーク・ワズ・ザ・ナイト」をきっかけに、その彼を語り部としながら、スキップ・ジェイムスとJ.B.ルノアーという伝説のブルーズメンの人生をたんたんと紹介していくのだが、まずはスキップとJ.B.それぞれの音楽にグっと引きつけられる。二人の歌とギターには魔力がある。一度耳にすると一瞬たりとも聴き逃すまいと思わせるものがあるのだ。

 それを、スキップについてはモノクロで役者を使った無声映画風の演出で見せるのだが、そこに「ブエナ・ビスタ」のような(「ブエナ」は本物のミュージシャンだけなのに演出過剰に思えた)嫌みがなく、とても自然に入り込めた。これはヴェンダース監督のブルーズへの愛着の濃さがそうさせるのだろうか。
 一方、J.B.については60年代にとられた貴重な彼の記録映画を見つけ出し、それを撮った夫妻へのインタビューやTV映像を交えながら、そのユニークな世界をある意味「世界初」、きっちりと紹介してくれた。

 そして、それぞれオリジナル音源を流した前後に、現代のミュージシャン達によるカバー演奏が収められている。カサンドラ・ウィルソン、ルー・リード、ボニー・レイットからベック、ジョン・スペンサー、ニック・ケイヴに至る、ちょっと間違うと乱雑になりそうなライブ映像が、見事に一本筋の通ったトーンで統一されていて、これまた素晴らしい。
 監督の狙いをミュージシャンがよく理解した結果か、はたまた偶然か、それともやはり元となるブルーズの巨匠の音楽の凄さなのか、とにかく短く挟み込まれるこれらのライブ演奏が、映画全体の流れを止めずに、より深い共感を呼び起こすための重要なカットとして生かされていた。だから、唯一の不満はこの素晴らしい演奏をもっと聴きたいと思ってしまったことだ。でも、映画を主に考えれば、この編集で正解だ。後はサントラを聴いて楽しむべきだろう。

 と同時に、ここでクローズアップされた伝説の天才の音楽にもっと触れてみたいと思った。自分にとって「驚き」の音楽だったからだ。

 さて、その感動が大きかった故に、そのあとの7、8本目にあたる「ロード・トゥ・メンフィス」「ゴッドファーザー&サン」はだいぶ見劣りしてしまった。たぶん、「ソウル・オブ・マン」を観ていなければ、いろんなミュージシャンを見られて、なかなか面白かったで済んだだろうが、いかんせん今回の流れでは、二本とも最初のアイデアの面白み(メンフィス・ブルーズゆかりの人々、サン・レコード。シカゴ・ブルーズとヒップ・ホップ、チェス・レコード。)に頼りすぎて、結局上辺だけの表現にとどまった内容に思えてしまった。

 とは言え、このシリーズを見通したことでずいぶんブルーズの勉強になったし、偉大なブルーズメンから刺激とパワーをいただいた感じだ。まだまだ学ばなくてはいけないことが、たくさんあるのを強く実感した。
[PR]
by harukko45 | 2006-01-15 14:52 | 映画・TV

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31