ジョン・レノン・スーパーライヴ2013の詳細(9)

詳細(8)からの続き。

 奥田民生/Love Me Do~Please Please Me

e0093608_14525659.jpg 陽水さんを送り出して、それまでベースを弾いていた奥田さんがメインに。今回はギターに持ち替えただけでなく、特製ホルダーに2本のハーモニカを装着してのパフォーマンスとなった。
 陽水さんの後に、リラックスして歌いたかったはずの民生さんだったが、選んだ曲で使われているハーモニカはブルース・ハープではなく、クロマチックだったため、不慣れな奏法を克服するために、いろいろ考えた末の2丁装着となり、それにより、いつも以上に苦労することになった。
 だが、ジョークを交えながらも、飄々とこなしてしまうのは、さすが。最初は皆、あまりにも突拍子もないやり方に大笑いしたが、実はすごく真剣なので、こちらもとことん付いて行こうじゃないか、って気分になるのだった。

 ところで、ジョン・レノンのハーモニカというのは、ビートルズ初期における彼のトレードマークの一つと言えるぐらい重要で、彼は子供時代からずっと吹いていて、すでになかなかの腕前だったらしい。その後、デビュー前のハンブルグで、現地クラブへ出演していたトゥーツ・シールマンスの演奏を見て強い影響を受けたという。
 当時のトゥーツは、ギターを弾きながら、肩から掛けたホルダーのハーモニカを吹くというパフォーマンスで、ジョンはそのスタイルに憧れ、トゥーツが当時使っていたリッケンバッカーのショート・スケール・モデルとハーモニカに傾倒していたのだそうだ。だから、その時に手にしたハーモニカは、ホーナー社のクロマティック・モデルだったのかも。

 で、"Love Me Do"のハーモニカは、イントロやヴァンプで7thの音(F)を強調したフレーズと、Bメロで(F#)、間奏では(F#)と(F)を吹き分けなければならないので、レコーディングではクロマティックを吹いているのだった。
 そもそも、ハーモニカを使うことになったのは、ジョージ・マーティンのアイデアで、ブルージーな雰囲気にするためで、それにジョンは見事に応えた。

 ポールの話では「『誰かハーモニカを吹けないか?その方が上手くいくと思うんだが。他にブルース風のアイデアはあるかい?ジョン?』」とジョージ・マーティンに言われて、ジョンがクロマティック・ハーモニカを吹いたんだ。ソニー・ボーイ・ウィリアムソンのようなブルース・ハープじゃなくてザ・グーン・ショウのマックス・ゲルドレイみたいなハーモニカだけどね。(Paul McCartney[MANY YEARS FROM NOW])」
 
 初期のビートルズ曲ではこれ以後も彼のハーモニカをフィーチャアしたものが多いし、彼の演奏もその大任を果たしている。ジョン曰く「ロックンロールなハーモニカ」である。
 その「ロックンロールな」奏法について、ブルース・チャンネルのヒット曲"Hey! Baby"での、デルバード・マクリントンの演奏に影響を受けたと発言していて、1962年にイギリスで共演した際、マクリントンはジョンに請われて、"Hey! Baby"を吹いて見せたのだそうだ。
 それがいつのまにか、マクリントンがジョンにハーモニカを教えた、ということになったらしい。これが10ホールズとの出会いだったか?

 YouTubeにブルース・チャンネルとデルバード・マクリントンが"Hey! Baby"やジョン・レノン、"Love Me Do"について語っている映像があった!



 ジョンは、クロマティックと10ホールズをきっちり分けて定義して、ちゃんとこだわりを持っていたようだ。BBCライブで"I Got To Find My Baby"を演奏する前にジョンと司会者のやり取りが、それを示している。

司会者「今ジョンは次の曲の準備に入っていて、ギターを首にかけたり外したり、ハーモニカを顔の前にかけたり外したりして……。」ジョン「ハープだよ。」司会者「ハープって?」
ジョン「この曲ではハープをプレイしているんだ。」
司会者「ハープをプレイ?」ジョン「ハーモニカは"Love Me Do"でプレイしているんだ。この曲ではちょっとだけハープをプレイしてる。」司会者「でも、したり外したりして……。」ジョン「マウス・オルガンだね。」


 つまり、クロマティックをハーモニカ(with a button)と呼び、10ホールズをハープと呼んで区別していた。

 さて、もう1曲の"Please Please Me"もハーモニカが実に印象的だが、それ以上に全体のアグレッシヴなノリ(特にポールのベース)がイントロからワクワクさせてくれるし、ジョンのリードに対して、ポールがE音でキープしているAメロがいい。見逃せないのが、4小節目のG-A-Bの「ンジャジャ・ジャジャ・ジャカジャカジャ」と、8小節目にかかるEの「ジャカジャカジャ、ミミ・ミミ・シシ」の仕掛け。これって、演奏でビシっと決めるのは結構難しいぞ。この仕掛けがかっこ良くないと、次のジョンが生きない。
 
 で、やったらドヤ顔っぽいジョンの「Come On!」を受けて、ポール&ジョージのハモがどんどん上がっていくのが実にスリリング。その上がり切ったところでの「Please please me,wo yeah, like I please you.」は、3人のヴォーカルの動きがカッコイイ。
 2コーラス後のブレイクでのドラム・フィルも実にシブい!その後の別メロもウキウキさせられっぱなしじゃないか!「in my heart」のバック・ヴォーカル部分が特にいい、大好き。

 わずか2分少々で、これほど満足させてくれるなんて、文句のつけようがない。レコーディングでOKテイクが録れた後に、ジョージ・マーティンが「 きみたちはたった今、ナンバー1のレコードをつくったんだ 」とトークバックから語りかけたのも頷ける。

 だが、この曲は元々スローテンポで、ロイ・オーピソンの"Only The Lonely"風のアレンジだったのを、マーティン卿が気に入らず、彼らに宿題として「テンポを上げて、アレンジを変えろ」と提案していなければ、ただのボツ曲になっていただけでなく、ビートルズ自体も「Love Me Do」の一発屋で終わっていたかもしれない。

 この時のことを語ったポールの言葉が印象深い。「テンポを上げて曲が格段に良くなり、ジョージ・マーティンの方が正しい曲のテンポを解っていたことを恥ずかしく思っている。」
 だが、ちゃんとそれを受け入れ、曲を練り直した彼らは、歌詞を変更し、"Love Me Do"のようにハーモニカを使い、ヴォーカル・ハーモニーを工夫した。ジョン曰く「セッションに入る頃には、僕らは結果に大満足してたよ。もっと早くレコーディングしたい気分だった。」のだから、彼らは本物のプロだった。

 とにかく、この曲は何から何まで、最初から最後まで、ビートルズ4人の情熱が詰まっている。我々はその熱を感じ、その熱にうなされるように夢中で演奏した。それは至福の2分間だった。
[PR]
by harukko45 | 2013-12-22 14:44 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる