ジョン・レノン・スーパーライヴ2013の詳細(8)

詳細(7)からの続き。

 井上陽水/I Call Your Name~You're Going To Lose That Girl~Love

 井上陽水さんは日本を代表するシンガーソングライターであり、日本ポピュラーミュージック界の最重要人物の一人である。と同時に、熱狂的なビートルズ者であり、ビートルズ作品を熟知されている。

 そんな陽水さんが、今回初めてスーパーライヴに登場。バックをつとめる我々にもピリっとした緊張感が走る。また、これまでにない異例の2日間のリハーサルがセットされ、曲も候補が5曲上がり、実際に合わせながら決めるということになった。なので、バンドの方はどの曲もすぐに対応できるように準備をしておかなくてはならなかった。ただし、候補の一つだった"Because"は、コーラス・ワークもサウンド・メイクも短い時間で形にするのは難しいと双方で判断して外された。
 その他の4曲は、"I Call Your Name""You're Going To Lose That Girl""Love""You've Got To Hide Your Love Away"だったが、リハの前に奥田民生さんとキーボードの斉藤有太くんと陽水さんでプリプロをしていた"...Lose That Girl"と"Love"、それに、私も是非にと推し、陽水さんもほぼ決めていた感のある"I Call Your Name"が残った。
 また、プリプロに参加していた奥田民生さんがその流れで、2曲にベーシストとして参加。押葉くんは、"I Call Your Name"以外では、私とともにコーラス隊になった。

 で、この3曲をリハしながら固めて、2曲にしぼるつもりだったが、どの曲もかなり面白い出来になっていったので、1曲は切るのは惜しくなり、3曲を全て演奏することになった。

e0093608_0374797.jpg まずは、"I Call Your Name"。この曲は、1963年にビリー・J・クレイマー&ザ・ダコタスに提供されたもので、ビートルズがセルフ・カヴァーしたのは64年の「A Hard Day's Night」セッション中だった。だから、内容が良いのは当たり前。
 このアルバムで多用されているジョージの12弦リッケンバッカーが、この曲でも効いていて、イントロ、Bメロ、間奏で大活躍。その間奏では、突然シャッフル・ビートになり、サイド・ギターが裏打ちの刻みをするのが面白い。ジョンによると「スカのリズムを意識した」とのこと。
 ちなみに、ビリー・J・クレイマーのバージョンではこの部分はハネておらず、ゴリゴリの8ビートで押切っている。イントロも微妙に違うが、やはりビートルズの12弦に軍配が上がる。
 
 陽水さんは「試しに間奏をストレートにやってみようか」と言い、トライしてみたのだが、このシャッフルの面白みを打ち消すことは出来なかった。なので、我々もハネたスカ・ビートに土屋さんの12弦をフィーチャアした。
 陽水さんのヴォーカルは最高にマッチしていて、ほんとゴキゲンだった。なので、絶対にやりましょう!と太鼓判を押した次第。

e0093608_040335.jpg "You're Going To Lose That Girl"は、プリプロの段階ではバスドラ4つ打ちのディスコ・アレンジのようだった。これもなかなかな感じだったのだが、陽水さんは、もっと陽気に「例えば南国風にスティール・ドラムかなんかで始まったりして」と提案、すぐに有太くんが弾き始めたので、即採用となった。
 もちろん、リズムもカリブ海系のパターンになり、何とも言えぬ「ふざけたシュールさ」が表れたのだった。
 ただ、この曲はジョンのリードとポール&ジョージの掛け合いヴォーカルが最高の魅力、だから、陽水さんもそこにこだわって、何度か練習を繰り返した。最終的には、我らがポールである押葉くんがコーラス隊に復帰して、バッチリまとまった。

e0093608_0401557.jpg そして"Love"。これは、陽水さんのアレンジ力の凄さに参った。その奇抜なアイデアと着眼点の鋭さに感動した。

 まずは、このシンプルなバラードをブルーズにしてしまった。クールなシャッフル・ビートで始めて、まるでマディ・ウォーターズの"Hoochie Coochie Man"のようなリフがキメなのだ。
 歌が入ってからも妖しげな空間を感じながらシャッフル・ビートは続き、じょじょに盛り上がりながらサビへ、そしてギター・ソロへ。
 再びAメロに戻っても危険なムードはそのままだが、1コーラスを終えたところで突然、オリジナルの静寂な世界に突入した。

 ここでは、有太くんがピアノのアルペジオとメロディを奏でるが、そのバックで私は深いリバーブをかけたもう一台のピアノ・サウンドで絡んで行った。
 そして、最後に陽水さんが入ってきて「Love is wanting to be loved」で締めくくった。

 このアレンジには、完全にやられた。リハでのテイクがいくつか残っているが、どれを聴いてもシビレル。もちろん、本番も素晴らしかったのだが、途中で思わぬ機材トラブルがあり、少し残念なパフォーマンスになってしまった。それ故にリハーサルでの音源は、私にとって永久保存版として大事に残しておきたいほどの価値がある。

詳細(9)に続く。
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by harukko45 | 2013-12-21 22:09 | 音楽の仕事

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