水越けいこ/Spring Tour 2013の詳細(2)

(1)からの続き。

e0093608_6421936.jpg m7.あなたがいたら

 89年の「Dramatically」からの"あなたがいたら"は田中章さんのアコースティック・ギターのサウンドが素敵で、他には何も入らないほど曲にマッチしている。竜真知子さんの詞もすごく良くってさすがだと思う。曲は、けいこさんの別の側面でもある「不思議」系と言えるだろうけど、あえて感情を殺したような歌い方が、何とも言えない非現実的なムードを作っていて、手を離したらどこかへ行ってしまいそうなボーカルを、アコギがやさしく包むことで、現世に留まっているような感じ。それにしても深く、切ない。
 今回のライブではピアノのみでやったので、オリジナルとはちょっと違ったニュアンスになったかもしれない。スタジオ版の暖かい感じよりも、寂寥感の方が強調されていたかも。私はアコギの印象が強くて、ピアノでやるのはいかがなものかと心配していたが、実際には新しい刺激があって、個人的に"32階""黒いドレス"からの3曲の流れが、今回一番のお気に入りコーナー。

 東京・名古屋ではこの曲は"黒いドレス"からつながるように組まれていて、ライブ前半をしっとりと終えることで、とても印象的になったと思う。この後私は引っ込んで、けいこさんの弾き語りコーナーへ。曲はその場その場で3〜4曲ピックアップされ、ファンの皆さんのリクエストにも応える内容だった。私は、東京の2部(ファンクラブの集い)での"流れるままに"を久々に聴けてしびれましたね。ファルセットの高音が素晴らしかった。

 大阪では、バンドのメンバーはいったん下がり、私だけが残ってピアノのみのコーナーの1曲目に"あなたがいたら"を演奏した。

e0093608_1149691.jpg m8.For Myself

 91年の「Humane」収録の"For Myself"は、前曲以上に「不思議系」で、演奏的にはつかみどころがないフワフワさ。こういう曲は、歌のムードについていくことが大事で、アレンジ上で何かを仕出かしてやろうなんて思わない方が、うまく行くようだ。けいこさんの声に導かれるように、かなり即興的に二人で作っていく感じが楽しかった。歌詞が心静かに自分の内面に語りかけていく内容だから、このやり方で良かったと思う。

e0093608_19405861.jpg m9.波に寄せて

 アコギに我らがプロデューサーである森崇さんを迎えての"波に寄せて"は、もはや説明不要の名作。ひょっとしたら、発表当時よりも今の方がファンに方々の思いが重なり合って、より深く大きな存在の曲に成長しているのかもしれない。
 私個人も、つねに敬意を持って演奏にのぞむ感じであります。それにしても、波がドーンを寄せて、スーッと引いていく感じがうまく音化されてますなぁ。曲とアレンジの両方でね。毎回、関心する。

e0093608_9321461.jpg m10.カーニバルの終わりに

 後半はノリのある楽曲が並び、ファンの皆さんの熱い手拍子も加わっての、ライブならではムードが盛り上った。ただし、東京では私と森さんのギターだけだったので、少々パワー不足を感じた。そこで、名古屋では打ち込みのリズム・トラックを組んで、それに合わせることにした。そして、大阪ではリズム・セクションにサックスも加わってくれたので、本来の形に近い演奏をすることができたのでありました。これは、文句無く楽しかった。

e0093608_19405861.jpg m11.Africa

 前曲から続けるように、リズム先行で"Africa"に突入。東京と名古屋ではスタジオ版のイントロで聴こえるドラムスをループにして、そこにパーカッションを新たに打ち込んだトラックを使った。これは、あくまでオリジナルに沿ったアプローチだったが、大阪の時は、かつてのツアーでやっていたレゲエ・バージョンにしてみた。この方が全体にバンドっぽい自由さや、ライブならではワイルドさが加わり、ノリも良くなったと思う。
 リハをやっていて、なかなかいい感じだったので、途中でメンバー紹介のソロ回しを入れて長くすることにした。これもライブならではで面白かったけど、何と言っても、けいこさんが長い付き合いであるはずの、森崇さんの名前を「イノウエ?崇さん」って飄々と間違えたのがハイライトでしたね。

 東京・名古屋では、この後に"Dear Summer Time"を続けた。

e0093608_7275087.jpg m12.シンガポール

 大阪のみで演奏した曲で、これはバンドでやるために選ばれた。

 85年の「Actress」は80年代のニュー・ウェイヴ感覚をうまく処理しながら、けいこさんのボーカルのポップさが生かされた作品で、かなり良いです。それで、この中の曲はライブでもずいぶん取り上げられてきたのだが、私が唯一やっていなかった曲が、この"シンガポール"。
 三越正幸さんの曲は、思いっきりニュー・ロマンティック。けいこさんの歌詞もこれまた思いっきりキャッチ・コピー風で、どっぷり80'sしてる。シンガポールってタイトルだけど、それは単に暗示的な意味合いだけで、その軽さがいい。ちょっとBOØWYっぽいニュアンスも。
 それにしても、けいこさんがこの手のニュー・ウェイヴにピタっとはまるのが面白いし、それもなかなか相性がいいと思った。これは新発見。
 で、バンドによるパフォーマンスも、ことのほかうまく行ったと思う。会場の皆さんのノリも良かったし、ライブで実に映える曲でありました。エレキ・ギターなしでもそれっぽいニュアンスが出ていたのは、バンドのメンバーのおかげ。ギターとシンセのテクノっぽいフレーズをサックスとエレピでやったのも、なかなかクール。そして、曲のエンディングのためだけに、ドラムスの井上さんはドラを仕込んでくれた。これもサイコーでした。

e0093608_117441.jpg m13.Only One

 けいこさん以外の作家の作品を多く収録した「Precious」のオープニングであった"Only One"は派手さも十分で前向き歌詞を持つポップ・チューン。ライブ向きの明るい曲だから、本編の後半にピッタリだった。ただし、東京・名古屋でのアコ・バージョンでは、さすがに手が足らない感じで、良さを引き出すのが難しく、十分にやりきれなかった。大阪で3人のミュージシャンが加わってくれたことで、やっとちゃんとした"Only One"をお聞かせ出来たように思う。こういう、ガンガンに行ける曲は生ピアノを引っぱたけるので、個人的にも大いに盛り上がる。

詳細(3)へ続く。
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by harukko45 | 2013-06-03 01:27 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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