水越けいこ/Spring Tour 2013の詳細(1)

 27日に大阪より帰宅しました。車で名古屋・大阪を巡った水越けいこさんの「Spring Tour 2013」は無事に終了しました。初日であった東京・江古田マーキーでのライブが4月27日だったので、1ヶ月の時間があいてしまい、モチベーションの維持がちょっと心配されましたが、実際には新しい試みによる出会いがあったり、ファンの皆さんとの交流の場があったりと、かなり充実した3泊4日でありました。
 江古田マーキー、名古屋ムジカ、大阪・高槻ミュージック・スクエア1624天神にお越し下さったファンに皆さんには、心よりお礼申し上げます。皆さんの力なしでは、ライブの成功はありません。

 さて、今回もいろいろと思い出多い内容となったステージをセット・リストにそって振り返っていきたいと思いますので、どうぞおつきあいのほど、よろしくお願いします。
 なお、東京と名古屋は同じ曲目でのパフォーマンスでしたが、大阪では、ベース、ドラムス、サックスの地元ミュージシャンとのバンド編成で、曲目・曲順が少し変更されました。ここでは、大阪の曲順にそっていきます。

e0093608_14393442.jpg m1.Love Song For You

 81年の「Jiggle」はアレンジを大村雅朗さんが8曲で、佐藤準さんが2曲。この後の「I'm Fine」が全曲、大村さんのアレンジなので、この時期は大村さんとのコラボが中心と言えるか。が、80年の「Like You!」は佐藤さんが全曲アレンジ、79年の「Aquarius」では二人が5曲ずつということで、これは偶然だったのか、単にスケジュール的な問題だったかもしれないものの、私には当時のプロデューサーが、なかなか絶妙な配分で能力の高いアレンジャー二人を使い、けいこさんの世界を豊かに色付けていたのだなぁ、と感心するのでした。

 かなりザックリ言って、けいこさんの楽曲で、サトジュンさんか大村さんがアレンジしているものにハズレはない。それどころか、かなりの名曲、驚くべき傑作、く〜たまらんの連発曲がそろっていることは間違いない。それぐらい、けいこさんと、この二人の相性は良いのだ。

 で、"Love Song For You"は、さすがロック系に縁の深い佐藤準さん(元「SMOKY MEDICINE」)の特色がうまく出ていて、ちょっとポール・マッカートニーの"Live and Let Die"風とも、ソフト・プログレとも言えそうなドラマティックな流れは、演奏しているものもワクワクさせられて実に楽しい。なので、こういう曲は、やっぱりバンドでドカーンと派手にかましたい。だから当然、そういう思いは大阪での2ステージではある程度果たされたのだった。もちろん、欲を言えばキリがない。ディストーションの効いたエレキ・ギターも欲しいし、コーラスも欲しいってことになる。

 ところが、ピアノだけでやった東京・名古屋では、アレンジの骨組みだけで演奏する感じになってしまうにもかかわらず、それでも十分満足できる内容であることに気づくのだった。あらためて、けいこさんの歌詞の方に目を向けると、ステージでのボーカリストが主人公の曲でありながら、彼女の心は失った恋の哀しみでいっぱいなのだから、やっぱり、けいこさんの曲は簡単ではない。だから、ピアノのみで、時にミニマムさを意識していくことで、「特定のあなただけ」に捧げる愛の歌の世界に浸ることになった。

e0093608_1125865.jpg m2.ジェラシー

 82年の「I'm Fine」は大村さんのアレンジで、演奏はTOTO。この当時の最先端であるアダルト・コンテンポラリーな(AC/日本ではAORと呼ばれる)サウンドと素晴らしい演奏に文句などないのだが、あえて惜しいと思うのは、時にLAのミュージシャン達の持つ根っからの陽気さが、けいこさんの音楽を「明るくしすぎた」部分が少し見られる点だろうか。そこが、「I'm Fine」の小さな弱点かも。

 実際に、この"ジェラシー"では、エンディングでのスティーヴ・ルカサーのギター・ソロがテイク1では明るすぎていたとのこと。それで、けいこさんはスティーヴに「この曲は"ジェラシー"なのよ」と注文したのだそうだ。それを理解した後のテイク2がOKテイクになっているわけだが、確かに彼にしてはいくぶん影のある泣きのフレーズも聴こえてきて興味深い。それでいて、きっちりとテクニカルな速弾きも披露しているし、音楽的な構成力も見事だ。
 とにかく、この頃のルカサーは「どんなスタイルの音楽だろうが、一発で最高のプレイをキメる」ギタリストとして有名だったわけで、たぶんどのテイクを選んでも完璧だったろうが、それでも歌詞の世界観を一番に考えた、けいこさんはエライ。

 今回のライブにおいては、大阪でサックスの山本さんをフィーチャアして、曲本来のAOR感を出せたと思う。期待に応えて、山本さんはメローなプレイでキメてくれた。

 このあと大阪のみ2曲、バンド編成を生かした曲が加えられた。

 m3.Dear Summer Time

 同じく「I'm Fine」からの曲で、これはLAっぽさとTOTOの演奏を意識した曲、アレンジだと思うし、その意図が十分に生かされたテイクがアルバムに収録されている。アメリカ人ミュージシャン独特のグルーヴィな8ビートが気持ちいい。この当時20代だった私のようなミュージシャンには、こういう「ゆったり」しながら「スムース」に流れていくグルーヴ感を出すのがむずかしかった。とにかく、ジェフ・ポーカロの歌うようなドラミングが、ほんと、素晴らしい。

e0093608_10111.jpg m4.少し前、恋だった。

 83年の「KAREN-NA-KISS」は、全体にニュー・ウェイヴ的なニュアンスが強いアルバムで、「I'm Fine」のようなAORサウンドはなくなってしまったが、その中では唯一この曲は、どちらかと言えばオーソドックスな「夏っぽい」サウンド作りが、逆に時代を感じさせずに良いのかもしれない。
 78年から80年代、ほぼ毎年1枚から2枚のペースで制作されている、けいこさんのアルバムを年代順に聴いていくと、当時の音楽的傾向の大きな変化がすごくよくわかって、実に面白いです。

e0093608_19405861.jpg m5.32階のBAR

 「I'm Fine」と「KAREN-NA」にはさまれた「Vibration」はAOR的な要素とニュー・ウェイヴ的な要素が共存しているアルバムで、アレンジャーが4人もいるのだが、それよりも何より、このアルバムに収録された曲には、面白さと強さがあり、個人的には前述の2作よりも好きだ。
 "32階のBAR"は、以前にも書いたが、どことなく「昭和」的で「バブリー」な感じでもあり、およそ現代の作家では書けないような内容の曲。
 かつて音楽業界の人達が好んで使っていた言葉「ゲセワ」は、ある意味、今なら「ヤバイ」ってことに近いかも。つまり「ゲセワでクサイ」ムードを曲が持っていて、その危険な香りがたまらんのです。

 実は、私はこの曲をずっと一人だけで演奏してきたので、今回初めてバンドでやって、すごく楽になってうれしかった部分と、その分スリリングな気分がなくなって残念な部分を両方体験した。音楽って、何年やってもホントむずかしいもんですわ。
 
 m6.黒いドレス

 続けての"黒いドレス"は、最初から最後まで「危うい/アブナイ」。アレンジした萩田光雄さんは、もちろん日本を代表する名アレンジャーの一人だが、その彼が思わず自画自賛した曲なのから(スタジオでは先生自らタンゴを踊りだす場面もあったとのこと)、随所に演奏する喜びがあるし、むずかしさもある曲。
 音楽の中にストーリーを感じるようにしたいのだが、それが自己中な押しつけにもなりかねないので、そのバランスが求められのではないかと思う。

 元々、タンゴとかフラメンコとかファドとか、ジプシー系の音楽には強く惹かれるので、弾いてて楽しかったし、やりがいもあった。イントロからAメロでのタンゴ、Bメロでの崩れた感じから、サビはハバネラ(いわゆる「カルメン」のあれです)になる流れが、特に大好き。
 ただし、私としてはスタジオ版は、少しお行儀が良い、と感じる。たぶん今だったら、もっと崩れた部分を強調したいかもしれない。ハバネラの部分も、もっとデフォルメして「クサみ」を出したいかな。
 たぶんに、ポップスであることを大事に考えれば、ドラムスとベースでリズムを刻むことで、万人向きに安心感を作れるわけだが、今だと本物のバンドネオン奏者と弦楽とピアノで、揺れたリズムでやるかも。いろいろと想像力をかき立てるのは、それだけ曲の出来が良いからに違いない。

詳細(2)に続く。
 
 
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by harukko45 | 2013-05-30 01:57 | 音楽の仕事

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