今日のFREE(6)"Fire And Water"

 FREEの代表作、最大のヒット作"Fire And Water"は、すばらしい内容であることを認めつつも、CD化されてからのその音質にずっと不満を感じていた。簡単に言えば、抜けの悪い音で迫力がなかった。

 それは特に1曲目のタイトル曲に顕著で、印象的なコゾフのイントロから、ドラム・フィルでさあボーカルってとこで、グっとこないのだ。そこで一瞬、音が引っ込んだように感じてしまう。こういうことは気になり始めると非常に後を引く。だから、現代のポップ・ミュージックの「スピーカーに張り付いた」ようなコンプレッションの強い音に慣れた耳には、この1曲目はかなり物足りなく感じてしまうのだ。
 フリーは全体にボーカルが小さいバランスだが、このアルバムのイマイチな音質の場合、それならミックスにおいて、もう少しボーカルのバランスを整えてほしかった。曲の良さ、メンバーの充実した演奏ぶり、特にポール・ロジャースの唄のうまさがもっとダイレクトに聴き手に伝わるようにCD化において工夫すべきだった。
 そこが、ビートルズやレッド・ツェッペリンのようにちゃんとしたプロデューサーを持たなかったフリーの不幸とも言えるかもしれない。

 ただし、2001年にデジタル・リマスターされて、初期のものより格段に良くなった。でも、これでもまだ、ライブ盤や2ndの方が音質はいいと思う。

 なぜ、こんなにくどくど音質について言うのかは、ひとえにアルバムの内容が大変素晴らしいからに他ならない。彼らは最もバンドとして充実した瞬間をむかえ、それが全てににじみ出ていて、どの曲も何度聴いても飽きる事のない仕上がりなのだ。
 "Fire And Water""Mr.Big""All Right Now"というまさにキラー・チューンを3曲そろえ、その間に通を唸らせる最高のR&Bを聴かせてくれる。最近の私は歳をとったせいもあって、"Heavy Load""Don't Say You Love Me"あたりにムチャクチャはまってしまう。

 たぶん、2ndでこのバンドの持つ独特な「空間」を見つけたアンディ・フレイザーは、そのスタイルをより研ぎすませるべく、曲を書いたのだろう。それまでの、まず曲があって皆でやってみよう、という感じから、ユニークなサウンドを持ち始めたバンドにあわせた作曲、アレンジになっていると思う。そういうことは、間違うと人工的すぎるような、あるいは作為的なプロダクションになりかねないのだが、彼ら4人の個性とお互いの信頼関係が、そういった不安など簡単に吹き飛ばしてしまったに違いない。

 最初、批判的で後半は大絶賛とはどういうことだ? いや、それがこのアルバムの真実だ。代表作とされるゆえに、他の聴き手がその内容を深く見いださないまま、「渋い」「ロック・オヤジの音楽」と片付けてしまうのが嫌だから、どうしても矛盾をかかえながらも扱いに慎重になるのだった。

 結局、私にとってフリー鑑賞のキッカケであった"Fire And Water"は同時にゴールでもある。ここにきて、ようやくわかるような部分もいろいろある。だからこそ、もっと鮮明な音でコイツらの名演を聴いてみたいという願いはどうしても残る。
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by harukko45 | 2005-12-02 02:39 | 聴いて書く

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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