ジョン・レノン スーパー・ライヴ2012の詳細(3)

(2)からの続き。

 杏さんを迎えて Norwegian Wood〜I Want To Hold Your Hand

 昨年は詩の朗読で参加してくれた杏さんは、今年は歌手として戻ってきてくれた。今や超売れっ子となった彼女は、その過密スケジュールの中、2度もスタジオにやってきて、我々とリハをしてくれたのである。テレビを中心に多方面で活躍する杏さんが、歌うことにこれほど情熱があるとは思っていなかったので、その頑張りには驚かされたのと、このイベントへの真摯な取り組みに深く感謝したい。

 ヒッピー風の衣装で登場した杏さん。さすがモデルさんだ、着こなしが本当に素敵。彼女の合図で始まる1曲目は"Norwegian Wood"。

e0093608_18164348.jpg 私は「Revolver」よりも「Rubber Soul」の方が断然好きだし、ひょっとしたら最高傑作かも、と思いつつ、やっぱり「Abbey Road」や「Sgt.Peppers」の方を上にしておいて、このアルバムはそっと後ろに隠しておこうって感じ。それに、このアルバム全体に「隠れた/隠された」良さってもんが存在すると言えないだろうか。

 "Norwegian Wood"はジョンによる「他の女性との情事」がテーマであるのに、日本では邦題の「ノルウェイの森」から連想される、何とも幻想的なイメージとなり、その本当の意味が隠されてきた。しかし、タイトルとしては「森」の方が断然よく、この曲の素晴らしさをしっかりと表しているのだった。最初から「ノルウェイの木=ノルウェイ材の部屋」じゃ、ノラナイでしょ。
 それに、メロディがミクソリディアン・モードになっていて、エキゾチックというかエスニックというか、なので、シタールとのマッチングもピタっと来るのだった(まぁ、後づけ解釈で、現場はもっと直感的なもの)。

 今回、キーがEからDに下がり(女性ボーカルだから上がりか)、より不思議な響きになった。その影響もあって、私がメロトロン風フルートとコンボ・オルガン、十川さんがタブラの音を加えることにした。これでサウンドの色彩がより艶やかになったと思う。

 また、杏さんの声と押葉くんの声のマッチングが良く、Bメロでのハーモニーが実に気持ち良かった。アイルランド民謡でもやっているようでもあるし、彼女のコスチュームと相まって、フラワームーブメント的な感触もあり、すごく楽しい仕上がりになった。

e0093608_1735761.jpg "I Want To Hold Your Hand"は言わずもがなのビートルズ初期の代表作であり、彼らがアメリカを席巻し征服するきっかけとなった曲でもある。そして、ジョンとポールが一体となった最上の結果の一つだろう。なので、もちろんオリジナル・バージョンへの思いはとても大きいのだが、今回は全く違う方向性からのアレンジで、この曲の新たな魅力に気づくことになった。

e0093608_1545817.jpg 杏さんが提案してきたのは、2007年の映画「アクロス・ザ・ユニバース」の中で使われたバージョン。この映画はジュリー・テイモア原案・監督によるもので、33曲ものビートルズ・ナンバーを使い、歌詞とストーリーをリンクさせてミュージカル仕立てにした作品。よって、全曲アレンジしなおされ、出演者自らが歌っている。
 私は、遅ればせながらDVDで観たのだが、正直、この手の青春ミュージカル系は照れくさい。なので、前半はなかなか入り込めなかったのだが、ジョー・コッカーによる"Come Together"で目が覚め、"Dear Prudence"から"Walrus""Mr.Kite""Because"と続くあたりは夢中になり、その他にも"I Want You""Strawberry Fields""Happiness Is A Warm Gun"のシーンは、テイモア監督が意識したと言うミュージック・ビデオ風のアプローチが冴えて、かなり楽しめたし感心する部分も多かった。私が特にいい出来だったと感じたのが、ジョンの曲での映像ばかりだったのは、やはり彼の詞の世界が妖しくも深くて、映像的な刺激に満ちているからにちがいない。

 さて、映画ではバイ・セクシャルのチア・リーダー(役名:プルーデンス)が歌うシーンで使われた"I Want To Hold Your Hand"は、オリジナルとは全く違うバラード調。淡々とベースとギターでビートを刻みながら、12弦ギターやオーケストラ風のシンセが印象的に使われていた。これはこれで、なかなか新鮮であり、特に女性ボーカルを生かすにはとても良いと思った。
 その分、ビートルズの持っていた爆発的なエネルギーはなくなったが、杏さんのピュアな歌声が合わさることで、何とも言えないファンタジックな世界が生まれたようだった。この曲がこんなにも切ないとは、初めて感じた。

(4)に続く。
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by harukko45 | 2012-12-30 20:17 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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