夏焼雅/メロディーライン

 昨日は、夏焼雅さんのライブがあり、20日の大阪からの4公演が終わりました。彼女にとっては初めてのソロ・イベントであり、20歳の記念ライブという意味合いもあり、やる気と緊張感で頭が一杯になっていたはずですが、いざステージに上がれば、自分のスタイルを貫いて、最後までしっかりと歌い切ってくれました。
 リハの当初では心配していた喉の調子も、実際にはかなり強いことを証明した感じ。たぶん、今までグループでやってきたから、一人でやることへの不安が大きかったのでしょうが、これをやり切ったことで、自分の力に自信が持てるきっかけになったのでは。持ち前の才能は十分あるので、どんどん積極的に活動を広げていってほしいな、とオジサンは強く願うのでありました。

 まぁ、とにかく、バンドで音楽するっていうのは、みんなで合わせた時に音でピタっとくるかどうかであり、その「ピタっ」とはまる感触がリハの初日からあったので、その時点で、私は今回のシリーズの成功をほぼ確信しました。また、選曲が彼女の声質によく合っていたということもあるでしょう。ミヤちゃんは、全体にアコースティックなサウンドとの相性がよく、それは特にオープニングからの3曲に顕著でした。つまり、この3曲を選んだ時点で「ツカミはOK」というわけ。

 m1.あいたいけど〜2.ちょっとさみしいな

 2曲ともに、Berryz工房のつんく氏による曲で、いかにも彼らしい「せつない系」の曲調だ。CDのアレンジはアコギやアコピが重用されていて、ゴージャスなバックグラウンドや、パキパキしたリズムじゃないのが、むしろ好ましい。
 m1は、フォーキーなビートルズ・サウンドを下敷きにしているのと、バグパイプ風のシンセが印象的。タカくんにアコギでベーシックを支えてもらい、私はウーリッツァーのピアノとアコーディオン風のシンセでカラーリングした。私以外の3人によるコーラスも効果的だったと思う。アサミちゃんは他の曲でも字ハモで活躍してくれて、本当にありがたい。
 m2は、リズム的にはR&Bなんだけど、裏側にディキシーランド・ジャズっぽいグルーヴが感じられるのが特徴。その辺のニュアンスをうまく出すのはなかなかむずかしい。今回は前曲との流れを大事にして、アコギをベースに大阪・東京ともに会場に常備されたアコピで主要なフレーズを弾き、昔っぽいムードを強調したかった。特にシャレた感じで気の利いた間奏は、弾いていてとっても楽しい。
 オリジナルではメンバーが交代で歌うのを、すべてミヤちゃん一人で歌うことで、より「せつない」感じが強まったのでは。それと、彼女の声がサウンドとして全体を落ち着けてくれる。これが癒し効果とも言えるのだ。

 m3.ロマンティック 浮かれモード

 同じつんく氏作で、藤本美貴さんのヒット曲を、ボサノヴァ風にしたいというアイデアがプロデューサーからあり、スタンダード風のヴァース部分のみ残して、本編をリ・アレンジした。で、ミヤちゃんがスタジオに到着して最初に合わせたのがこの曲で、何の曲だがわからずキョトンとしていたのだが、試しに歌い始めたら、マッチングの良さに一同感動。ミヤちゃん的には1ハーフで終えるつもりが、「もっと聞きたい」という我々の要望でフル・コーラスとなった。
 この曲以外でも、全体的にアコースティックなサウンドを求められたのは、ライブ会場、特に東京のメロディーラインが普段のライブ音量に適さない場所だったせいで、演奏する方も音量を抑えめにしなければならなかった。なので、小さな音でも曲を生かせるボサノヴァ風のアレンジはいいアイデアだった。

 この曲について、私はサビよりもAメロにヤラレル。また、藤本美貴さんのちょっとドスが効いた歌も魅力的だが、ミヤちゃんの歌はどことなく「ほっこり」するような気分があり、独特な世界観を見せてくれたと思う。というわけで、この曲の成功は、アレンジよりも彼女の歌によるものであったと思っている。

 m4.夏の星空〜5.ORION

 バラード2曲を続けて。Buono!でのm4は、なかなかの名曲で、年齢を重ねていっても歌い続けられる作品。たぶん、フルコーラスでやっても良かったと思うが、1ハーフにしたのは、次のm5とのパックで「星コーナー」とし、ある種のストーリー性を持たせたかったようだ。私はこの曲のアレンジが好きなので、歌のバックでうまく配置されたストリングスやシンセのフレーズを生かしたつもりだ。ちょっと、70年代ソウル風なところにニヤリなのだ。
 m5は中島美嘉さんのヒット曲で、確かに良い曲だと思うが、実を言うと、少々エグ味の強い中島美嘉さんよりも、ミヤちゃんのピュアさの方が個人的には共感しちゃう今日この頃。で、前曲が夏で、こちらは冬というわけで、音の方も「寒い」感じが必要。オリジナルにあるエレキ・ギターがすごくいい効果を出しているので、ここはタカくんに頑張ってもらい、イメージ通りの世界を作ってくれた。この辺の巧みなサウンド作りは父上譲りに違いない。

 m6.Story

 AIさんの大ヒット曲は、ミヤちゃんの挑戦とも言えたか。正直、アメリカ仕込みのR&Bフィーリングを真似ても、あまり面白くはないだろう。なので、もう少し内省的なシンガー&ソングライター風の世界をイメージした。ピアノのみの1コーラス後、オリジナルにはないベース・ソロの間奏をはさんだが、これはショーコちゃんが何気なく弾いていたのがすごく良かったので、すぐに取り入れさせてもらった。
 おっと、昨日の夜の部。イントロを弾く時に真っ暗で譜面が全く見えなかった。とりあえず、最初のコードを弾き始めれば明るくなるかと期待したが、その気配なく、どう弾くのかわからなくなってしまった。そのまま、即興で続けても良かったのだろうが、やはり一度止めて、少し明るくなってから弾き直した。流れを止めてしまい、とても申し訳なかったが、1曲のクォリティとしてはそれで正解のようにも思う。もちろん、暗譜しているに越したことはないので、反省はしなくてはいけません。

 m7.れでぃぱんさぁ〜8.Loving You Too Much

 今回のセットの中で、2曲だけの「上げ」もの。元々、ロカビリー調のm7はもちろんギターが大活躍。タカくんの父上、徳武弘文さんは日本における第一人者で、世界にも名が轟く名手。よって、その特殊技能とも言える部分は息子にも引き継がれておりました。
 一方で、大変だったのはドラムスのアサミちゃんで、リハ前から「あまり音量を上げないように」と制約を受けていたために、この手のものをやるにはものすごく不自由したはず。なので、彼女はリハで最初は普通に「ドッカーン」とロックしてから、じょじょに現場仕様の音量に調整していった。
 つづくm8は一転して16ビートのダンスもの。タイの国民的人気歌手トンチャイ・メーキンタイのカヴァーで、テンポアップして見事にハロプロ仕様になっていることに感心。鈴木Daichi秀行さんの職人技に敬意を表する。
 だが、今回はBerryz工房ではないので、Rap部分をメンバー紹介に変更、4人のソロ回しをして、その後の盆踊りパターンは残した。こういう「植木等系」アプローチは大好きだが、それ以上にサビに戻る時のインパクトが増すので、絶対にカットしたくなかった。

 m9.消失点

 Buono!はロックが売りなのだろうが、その中で異彩を放つ曲。だが、ミヤちゃんの個性はよく引き出せていると思う。作曲が崎谷健次郎さんで、つんく氏よりもベタなマイナー感が強く、より80年代っぽい。コード進行なんかはほとんど同じ繰り返しで、少々単調なのだが、それが逆にハマる要因にもなっているのだから軽視できない。歌詞も「せつない」じゃすまない「悔いと嘆き」に至るので、ピュアな声で歌われると聴き手はよりタマラン・モードに入るに違いない。
 ここでは、構成上やっかいな作りになっているのを整理しつつ、m5でもトライしてもらった「寒い」ギターをタカくんにお願いした。バンド全体でイメージしたのは、U2の"New Year's Day"ようなサウンドに、80年代ポップスの甘さを加えた感じが理想。あまりゴテゴテしたくなかったので、私はアコピに徹して、歌詞を中心にしたシンプルな仕上がりを目指した。

 En.タビダチの歌

 アンコールでのライブ最後の曲は、Buono!本道のロック・チューン。この曲には中期ビートルズの影響があり、特にメロトロン風のシンセやザクザクしたストリングスがそれ。ハードなギターも重要だが、アコギの方も欠かせないので、ちょっと悩んだ。今回はショー全体の方向性からアコギを選び、そのかわりに「ウォルラス」風のウーリッツァーとストリングスで、サイケっぽいニュアンスを補うことにした。もちろん冒頭のトロン・フルートの音も外せず、ところどころで使った。
 ハードなBunno!バージョンではないというだけでなく、ミヤちゃん一人で歌い切るというのも新鮮だったかも。
 詞も曲もラストを飾るのに相応しいもので、ファンには大事な1曲に違いない。ところで、Buono!の曲は、なかなか充実したものが揃っていることを今回知りました。

 というわけで、夏焼雅さんとのショーを簡単に振り返りましたが、たった4回でおしまいなのが寂しいです。ハロプロ関連の仕事の時は、いつもそう思いますが、まぁ、しかたがない。でも、ミヤちゃんという、今後が楽しみな才能と会えたことには感謝しなくちゃ。とっても良い刺激をもらえました。そして、会場に来てくれたファンの皆さんにも大感謝です。また、どこかでお会い出来ればと思います。
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by harukko45 | 2012-10-29 19:43 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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