サカイレイコ/南青山マンダラ

 また更新が滞っておりましたが、9月末から約一ヶ月間、CD音源から譜面を起こすことばっかやってた気がする。耳も疲れるが、何て言っても音符書きすぎて、手の感覚が変になった。
 なんだけど、楽器弾いたりすると、元に戻ったりする。たぶん、固まっていた筋肉が、運動(?)してほぐれてくるんかな。

 さて、10月10日はサカイレイコさんとの南青山マンダラでのライブ。このところ年2回ペースで定着してきたが、今年は春に出来なかったので、バンドとしては約1年ぶりの集合だった。だが、かなり気心しれてる現メンバーは、短いリハでも飲み込み早く、実にありがたい。久々ではあったが、レイコさん独特な世界に、こちらも気持ちよく浸って、実に刺激的な時間を共有できた。

 特にエディット・ピアフの「オートバイの男(L’homme à la moto)」にまずやられた。この曲は、1955年に有名ソングライター・コンビ&プロデューサーである、ジェフ・リーバー&マイク・ストーラーがThe Cheersというグループに書いた「Black Denim Trousers and Motorcycle Boots」のカヴァーなのだが、確かに全米6位になったヒット曲とは言え、ピアフがこれを面白いとしたことが、実に興味深い。そして、The Cheersの青春ミュージカル風ロックンロールをぶっ飛ばす「パンク・フレンチ」歌曲となって生まれ変わったのが、衝撃的。





 基本のアレンジは同じだが、聴き終わった印象が全く違う。で、特にブラスの過激なアレンジが面白く、これは出来る限り再現したいと思った。私のような世代には、クレージー・キャッツの名曲の数々を作った萩原哲晶さんのアレンジを思い起こさせる。実を言うと、The Cheersバージョンの方がクレージーっぽいし、豪華で映画じみてる。それに比べて、ピアフ版はもう少しシンプルなんだけど、ピアフの歌のエネルギーがすごくって、どんどん緊迫感が高まってくるのが、たまらん。
 とにかく、スピード狂のオートバイの男が、機関車に突っ込んで死ぬ、って話。それがたった2分弱で語られるわけだが、ピアフの強烈なフランス語に圧倒されて、ドキドキが止まらない。

 そして、我らがレイコ嬢もヘンな日本語訳詞を付けずに、いつものように原語での熱唱。もちろん、歌う前に内容の説明はあったものの、この曲の核心を伝えるには、フランス語でなければという彼女の考えは正しい。それこそが、リスペクトというものだろう。

 もう1曲、セルジュ・ゲンスブールの1958年デビュー曲である「Le Poinçonneur des Lilas(リラの門の切符切り)」にもしびれた。ゲンズブールは、シャンソン以外のポップス・ファンにも近年信奉者の多いアーティストだが、彼の作ったものはどれもこれも一筋縄ではいかないものばかり。地下鉄の改札係の鬱屈した気持ちを歌ったこの曲は、暗い地下から逃げて広い世界に出たいという着想に基づいているそうだが、歌詞の中で何度も繰り返される「trous(穴)」という言葉が、何とも意味深。彼のことだから、もちろん性的な気分を煽るようでもある。
 そして、音も常に刺激的で聴き手を煽り続ける。かなり、シビレルね。こちらも、バリトン・サックスにフルート、オーボエといった管楽器の扱いがクールだし、ピアノの過激な演奏もサイコーなのだ。というわけで、原理主義者とまではいかないものの、かっこいいものは出来るだけ再現したい私としては、譜面にするだけで楽しかったわけ。



 もちろん、ピアフ曲の王道とも言える「群衆」「パダン・パダン」は、何度やっても感動させられるから、レイコさんのパフォーマンスは本当に素晴らしい。また、彼女が最も力を入れる日本語によるオリジナル曲も、毎回新曲を加えて、ずいぶんと数も増えたし、内容もますます充実してきたと思う。そしてそして、バンドによるステージに、ファンの皆さんが熱く応えてくれるのが、本当にありがたかったし、コツコツと続けてきたことが無駄じゃなかったと、つくづく思うのでありました。
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by harukko45 | 2012-10-23 23:06 | 音楽の仕事

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