ジョン・レノン・スーパーライヴ2011の詳細(6)

詳細(5)からの続き。

 ジョン・レノン・スーパーライヴ2011を振り返るコーナーの最終回。なのに、紹介しなければならないアーティストが3人も残ってしまった。この尻すぼみ的展開に深く反省する次第です。ここでは、奥田民生さんとのセッションを中心に書かせてもらい、吉井和哉さんとオノ・ヨーコさんに関しては短くふれ、次の機会にあらためて書きたいと思う。

 奥田民生さんを迎えて

 2011年のトリビュート・バンドにはキーボードに現・奥田民生バンドの斉藤有太くんが加わったので、民生バンドの経験者(ドラムスの古田たかし&ギターの長田進)が3人揃った。というわけだから、奥田さんにとっては、ほぼホームって感じだったかも。とは言え、「ひねった」選曲は相変わらず。かなりのビートルズ者であっても、思わず唸ってしまうような内容だった。

e0093608_17223692.jpg 特に目立つのは、今回のセット・リストの中で唯一、ジョージ・ハリスンの曲を選んだのは彼だけだったということ。2011年はジョージの没後10年でもあり、ビートルズのアルバムのように2曲ぐらいはあるのではと予想したし、他の出演者による"While My Guitar Gently Weeps"も候補に上がっていたのだが、残念ながら次回以降に持ち越しとなった。
 で、「ひねり」の奥田さんによるジョージ曲は、"Savoy Truffle"。くー、やられた。"While My Guitar..."と同じ「ホワイト・アルバム」に収録されているが、知名度ではかなり負けている。が、曲の中味で比べれば、"Savoy"はアルバムのベスト・チューンに選ばれてもおかしくない傑作だと思う。

e0093608_2274443.jpg この曲の歌詞は、エリック・クラプトンの甘いもの中毒をからかっているもので、ジョージの家にきたクラプトンは虫歯なのに、マッキントッシュ社のアソート・チョコレート「グッドニューズ」を食べまくっていた、というエピソードが元になっているとのこと。だが、クラプトンのチョコ食いは、たぶんドラッグのせいもあるんじゃないかな。

 そして歌詞は、その「グッドニューズ」のフタに書かれているチョコの名前を書き並べて作られた。「クリーム・タンジェリンにモンテリマ...、パイナップル・ハートを添えたジンジャー・スリング...コーヒー・デザート、そう、"グッド・ニューズ"だよ」で、トドメに「でもサヴォイ・トラッフルを食べたら、君は歯をすべて引き抜かなきゃならなくなっちゃうぜ」と、グサッ。
 ブリッジでは「You know that what you eat you are.(食べ物は人を表すのさ)」なんて言われてしまうクラプトンをからかいながら、ついでにホワイト・アルバム・セッションでポールから「何回もやり直しさせられたこと」への皮肉を込めて「Obla-Di-Bla-Da」と書き加える周到さ。これはチョコレート効果なのか、ジョージのインスピレーションはどんどん膨らんでいったようだ。

 おおっ!「グッド・ニューズ」のフタには確かに11種類のチョコの絵と名前が書いてある。Creme Tangerine and Montelimart あります、あります。Ginger Sling、Coffee Dessertも確認、そして、ちゃんとあったぞ!Savoy Truffle!

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 ジョークと皮肉のオンパレードみたいな歌詞だけど、サウンドの方は冗談抜きで最高にかっこ良く仕上がった。まずは、一番印象的なのが、クリス・トーマスのアレンジによるバリトン2本、テナー4本のサックス・アンサンブル、これにディストーションをかませて、ザクザクガツガツとチョコを食わせてる。ジョージがミュージシャン達に、「君たちのすばらしいサウンドに手を加えてすまない。でも、これが僕のやりたいことなんだ。」と、謝ったというから面白い。でも、素晴らしい効果となったことは間違いない。
 それと、ポールの大活躍ぶりに圧倒される。いつもの以上にスピーカーから飛び出しそうなベース・プレイはもちろん、ツボを心得たフィル・インをするウーリツァー(これについては、クリス・トーマス説、ジョージ・マーティン説もあるが、私はポール説に1票)に、随所でのボーカル・ハモと非の打ち所がない。何と言っても「But you'll have to have them all pulled out after the Savoy truffle」の部分はビューティフル。内容がシュールだから、そのギャップがクール(なんじゃ?)
 
 我々のリハでは、演奏をやり終わるたびに「カッケー!」と誰かしら声に出して、もう1回やるって感じ。バンド的には文句なし、今回のライブでのNo.1はこれでキマリ!この曲はある意味、70年代っぽいサウンドを先取りしてる感じもする。けっこうファンキーなのだ。

 もう1曲は、正真正銘ジョン・レノンの曲で"I'm Only Sleeping"。テープ・スピードの操作や、逆回転によるギター・ソロの効果もあり、歌詞の内容通り、実に気怠い感じになっている曲。確かに奥田さんのボーカルには合っていたと思うが、私には手強かった。レコーディングでは6時間もかかったという逆回転ソロを長田くんにトライしてもらったが、なかなか難しかったし、ポール&ジョージのコーラスの妖しい感じも難しかった。「Revolver」は全体にEQやエフェクトなどもかなり凝っているので、もし、次やる時があったら、このアルバムの曲への対策を練っておいた方がいいと痛感した。

 さて、この後、オノ・ヨーコさんを迎えての"Rising"では、本番前のリハの時から、ピリっと張りつめた空気があり、ヨーコさんの「震災」「原発事故」「福島」へのなみなみならぬ思いが感じられた。本番ではその思いを共有できるように、神経を集中させて必死についていった。
 本編ラストの吉井和哉さんは、全曲日本語歌詞による3曲を、"Yer Blues""Jealous Guy""Mother"を熱唱したが、つねに魂を持ってかれそうになる吉井さんのオーラを感じて、我々バンドは夢中になって演奏するのみ。彼の強いカリスマ性は、まさにスーパーライヴのトリをつとめるにふさわしいものだった。
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by harukko45 | 2011-12-20 18:27 | 音楽の仕事

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