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大橋純子/夏の陣(2)

 夏の陣(1)の続き。

 大橋純子さんとの活動を振り返る2回目。前回は、キーボードのシステム云々の話ばかりになってしまったので、今回からはクラブ・サーキット2012のメニューにそって書いていきます。

大橋純子/夏の陣(2)_e0093608_10561998.jpg m1.夢を見ようよ〜2.Smile Again

 1979年の美乃家セントラル・ステイションのアルバム"Full House"を久々に聴いているが、飽きないなぁ。何回か繰り返してみても、スっと聴ける感じがいい。このアルバムから、美乃家は「第2期」となるんだけど、メンバー構成(現バンドと3人が一緒、ケンさんも入れば、すでに「ほぼ美乃家」状態)からして現在につながるジュンコ・サウンドの全てはここにあると言ってもいいわけ。

 特に面白いなぁと思うことは、このアルバムの場合、A面(Funky Side)では、メンバーの個性を強調したサウンドが生かされ、B面(Mellow Side)では、きちっとしたスタジオ・ミュージシャンによる職人的な仕上がりになっていること。これを両方とも同じミュージシャンがやっているのが、興味深い。
 それは、この時のメンバーがバンドとしての表現を一番に考えながらも、同時に一人のミュージシャンとして職人的なアプローチもこなせるだけの技量と意識を持ち合わせていたということ。まぁ、これはこの当時のミュージシャン達全般に求められていたことだけど、残念ながら現在ではほとんど忘れられてしまった美徳と言えるんじゃないかな。

 小田健二郎さんが大活躍のA面は、まさにバンド、それもルーファスっぽい感じだ。彼が弾くアナログ・シンセが随所で耳をひくし、オダケンさんの曲・アレンジは今の時代にすごく新鮮に映る。方やB面では、佐藤健さんの3曲が圧倒的で、いい意味でバンドがどうのということを忘れて、歌と曲に浸れる。
 サトケンさんは、この前のアルバム「Flush」でも"サファリ・ナイト""傷心飛行""マイ・ソング"と強力な3連発をかましたが、「Full House」においても無敵の3連発"ビューティフル・ミー""9月になったら GOOD-BYE""Smile Again"をやってのけた。

 さらに、何回か聴いていて気づくのは、六川正彦さんのベースが両サイドの橋渡しを見事にやっているということ。実は、このアルバムの心地よい統一感は、彼のベースによる貢献が大きいのかもしれない。
 アルバム全体にはそれほど派手さはないものの、噛めば噛むほど味が出る佳曲が揃っている「隠れ名盤」だと思う。

 で、この中から"夢を見ようよ"と"Smile Again"が選ばれて、ライブのオープニングとなった。

 "夢を見ようよ"は、元美乃家メンバーにとっても20数年ぶりだし、もちろん私は初めての演奏。でも、すぐにピタっとはまる感覚っていうのがあって、ベーシックな音はすぐに仕上がった。問題はコーラス部分で、特にサビは男性陣がメロディで、ジュンコさんはフェイクにまわり、女性コーラスのお二人は助っ人に入るという段取りに。
 最初のうち、リード・ボーカルを取ることに慣れない男性陣が四苦八苦して、なかなか決まらず、ケンさんからのシゴキ、いやいや指導により、何とかかっこがついていった。最終的にはヒロコちゃんが男性側に来て芯になってくれたので、うまくまとまった。さすがプロは違うね(あたりまえじゃ!)。彼女が我々のパートに入ってくれただけで、段違いに自分がうまくなった気がして、急に余裕かます男達でありました。

 私は、ヤマハのピアノ音と左右に動くトレモロ・エフェクトのエレピを基本に、アナログ系のパッドをサビなどで加えた。ゴトウさんとのセクションのパートでは、コルグでのサックス音に、アナログ・ポリ系の音を加えて厚みをつけた。
 
 美乃家時代をあまり知らない人にとっては、馴染みのない曲によるオープニングだったので、面食らった方も多かったかもしれないが、シンプルなリフの繰り返しによるグルーヴィな曲調なので、すぐにノリをつかんで楽しんでくれるに違いないと思っていた。
 全員コーラスによる厚みのある音でのエンディングでは、名古屋初日から熱狂的な拍手をいただいたので、大いに手応えを感じ、すっかり自信をつけたのだった。

 2曲目の"Smile Again"は、昨年もやっていたが、より自由なアプローチでのパフォーマンスとなり、ゴトウさんのサックスを大フィーチャア。テンポはCDよりもだいぶ遅くなっているが、それによりAOR的なニュアンスが濃くなり、ビートも粘っこい感じになった。

 私はエレピを中心に、アナログ系のパッドを加えたのと、ところどころにモノ・シンセのリード音でオブリを入れたりした。やはり、オダケンさんのアプローチに触発された部分は大きい。
 そして、この2曲の存在は、我々にあらためて、バンドで音を作っていくとは何だったのかを思い出させてくれた気がする。
 
 大阪公演では、現在関西に拠点を置く、元美乃家のドラマー、マーティン・K・ブレイシーさんが観に来てくれて、本当に美乃家再結成か!って感じだった。マーティンさんには、当時の曲をやることは全く知らせていなかったので、楽屋では「マーティン、きっと泣いちゃうよ。」って盛り上がっていた。案の定、終演後には「パオ!ヤラレタヨー」とかなりのハイテンションでありました。

 夏の陣(3)へ続く。
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by harukko45 | 2012-08-15 23:48 | 音楽の仕事 | Comments(0)

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる


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