安倍なつみ/Live2012の詳細(2)

詳細(1)の続き。

 6月2日の渋谷O-EastにおけるSparkling Liveから2ヶ月後、8月10日渋谷AXで行われた安倍なつみさんのBirthday Liveについて書いていきます。

 AXのライブへの準備として、7月18日に最初の打ち合わせがあり、その前にはメニューの概要と音源が送られてきたので、いつもよりも余裕のある始まりとなった。ただ、細かい内容はバースデイ・ライブの性格上、シークレットな部分も多く、実際にはどういう流れになるのかは、当日にならなければ私にもわからないのだった。
 そんな中、曲については彼女の代表作と言えるものがずらっと並び、そこに大きな変更を加えるのでなく、じっくりと歌い聴かせるという意図が感じられた。6月の「ハジケ・バージョン」とは対称的な内容を目指すわけだ。
 
 m1.トウモロコシと空と風〜2.くちびるで止めて

 ライブの前に行われた会場のみんなとのバースデイ企画については、我々バンドもよく知らずに参加していて、「おー」「へぇー」って感じで見守っていたわけです。で、司会の方のキューでライブ・ステージとなったのでした。
 m1は、なっちコン・夏の定番でありますが、O-East同様、そんな定番曲を頭に置き、メンバー紹介もやり、会場とのフリツケ・コーナーもありという、まさにフル・コース仕様となった。
 ライブでの「トウモロコシ」は、CDとは違う岩崎はじめさんのアレンジが定着していて、今回もそれを踏襲する形。
 そもそも、CD版はイントロのキーがF#で、歌に入るとAになる進行。リズムもキメキメのベース・ラインで、R&Bぽいグルーヴ感を強調している感じ。これはこれで悪くないのだが、ライブではちょっとキーが低く、ボーカルが少し暗い印象。なので、キーをBに上げた現在のバージョンになったのだろう。

 ただ、オリジナルにも捨て難い部分があり、特にBメロの部分のベースの動きは面白い。ただ、グルーヴ感が違うので、その辺をしょーこちゃんがうまく処理してくれ、これは実に良かった。また、2コーラス後にブラスのセクション・パートも取り入れたし、ブラスのフレーズはサビでも効果的だったので復活させた。そんなこんなで、私はいきなり頭から忙しい。他の曲でもやることが増えたので、キーボードが2台から3台になり、音源も増え、システムも複雑化した。
 しかしこれは、私としては最初から意図していたことで、この2ヶ月の間に経験した大橋純子さんとのツアーでの成果を、なっちのコンサートにも生かしたいと思ったのだった。
 言わば、やれそうなことは全部やる準備をし、そのためにはシステムを拡大し、なおかつトライすることに留まらず、完全にやり切る。これが今年のモットーとなったわけ。

 具体的には、曲のオーケストレーション、色づけは私一人でやってしまうということ。その上で、他のメンバーは生き生きとした個性を発揮してもらい、それを大きくフィーチャアしたいと思った。それはギター・ソロだったり、コーラスだったり、リズムのグルーヴだったり。
 この構想は、なかなかビューティフルなのだが、その分、自分自身への課題が増えて、責任も重くなった。まぁでも、これも楽しむことが大事。

 とは言え、1曲目の「トウモロコシ」からプレッシャーを感じてしまい、全体に固くなっちゃったところもあった。メダルを前に足が止まるってムードか、いやはや。

 m2は6月にもやっていたので、かなりスムースでノリも良かったね。バンド全体に自信が感じられて頼もしかった。

 m3.晴れ雨のちスキ〜4.雨上がりの虹のように

 「さくら組」のシングルであるm3は、つんく氏の名曲の一つでしょう。私には、オリビア・ニュートン・ジョン的な70年代後半の良質な女性ポップ・ソングのエッセンスが感じられて好きだ。
 初めて聴いた時は、Bメロ冒頭のベース音がおかしく思った(最も保守的に考えると、コードはA♭が無難だが、ベースだけAを弾いている)んだけど、ここの響きは、聴けば聴くほど病み付きにやる。だが、単にコードネーム(例えば、Adim▵7)通りに鍵盤を押さえるというよりも、Adimのコードの上に、8分でC・E♭・A♭と弾くことでクールな感じになる。
 こういうちょっとしたところにアレンジャー(鈴木Daichi秀行さん)のセンスの良さが見えてくる。

 続くm4と合わせて、このブロックは「雨」コーナーで、私は意図的かと思ったら、選曲したご本人は、全くの偶然だったとのこと。
 その「雨上がり」は、岡村孝子さんの曲で、萩田光雄さんのアレンジ。こちらは音楽的には実に明解でやることがはっきりしている。萩田先生のアレンジはほぼ全て指定の書き譜で、その通り弾かないとちゃんと成立しない。とは言え、この曲ではちょっと作り込みすぎて、窮屈な印象がある。(だからミスっちゃった?、そうじゃねぇだろう!)今回はオリジナル通りにやったが、次回やる時は少し変えてみたい。

 m5.さよならさえ言えぬまま〜6.恋

 今回のメニューの中で、バンド的に一番難しかった部分がm3から5の3曲。決め事が多いのと、あまり感情の起伏を出さずに淡々とやることが必要。とは言え、特にm3と5では、「なっち/モー娘。/つんく」の重要ファクターの一つである「ちょっぴり、切ない」感じは絶対に外せないので、大事に扱わなければいけないのだった。
 この3曲でのキーボードの演奏は、いろいろな音色を設定していたので、かなり忙しくなってしまった。もう少し簡略化しても、対外的にはたぶんOKだったのだが、個人として今回は妥協したくなかった。その辺のバランスの取り方は次回までに整理しなくては。

 よって、曲調とは裏腹に切迫した状況でm5が終わったあとに、松山千春さんの「恋」を弾き始めるのには、十分に落ち着かなくてはならなかった。まぁ、何とかうまくいったと思う。

 m7.灯

 ライブ前半の最後を締めるのは、奥華子さんのカヴァー曲。弾き語り調が基本だが、ところどころ歌詞や気分に合わせてメロディやサイズが変わっていくのが特徴。あくまで自然な流れを大事にしている感じで、作為的にダイナミクスをつけるのは合わない。
 全体としては歌詞をよく聞いてもらえるように心がけた。なっちも歌詞を通じて、感謝の気持ちを伝えようとしていた。

 m8.せんこう花火〜9.真夏の光線

 後半戦は、モー娘。時代の曲が続いて、華やかさが広がった。ここでの2曲、本当によく出来てる作品。製作陣に敬意を表したい。m8は、全体にギター・サウンドが心地よく、ザ・バーズのようなフォーク・ロック系の響きだと思う。私は、ザ・バーズが大好きなので、それだけでもこの曲は神棚行きだ。イントロや間奏、また歌中でもボーカルにからむボトルネック・ギターも印象的だが、個人的にはペダル・スティールだったら、もっと最高。
 というわけで、私は一人盛り上がって、シンセでペダル・スティールっぽいサウンドを作ってみた。久保田くんのリードと一緒に弾くことで、ずいぶんいい効果になったと思う。そのかわり、この音色を弾いている時は、常にアフター・ビブラートをかけてないといけないので、鍵盤を押しながら左右に揺らし続けていた。
 
 続くm9は、タイトル通りの夏っぽさと、アイドル・チューンらしさと、70年代風のR&Bをうまくブレンドしていて素晴らしい。ぶち込まれている音が多すぎる部分もあるが、生のブラスとシンセ・プログラミングを併用して、ここまでやり切ったことに頭が下がる。
 間奏でのフュージョン〜E,W & Fっぽい仕掛けも、なかなか面白いし、ただのアイドル・ソングに終わらせない心意気がいいじゃん。当然、ライブでのダンス・シーンも想定してただろうし。

 この曲はさすがにコンピュータを使って、パーカションだけでなく、ストリングスやブラスなども打ち込んだ。ただ、かなりの部分を人力でも対処したので、3台のキーボードはフル稼働だった。その分、コーラスはAsamiちゃんに任せた。彼女と久保田くん、しょーこちゃんのコーラスで、サビの厚みとポップ感を強調してくれたのは大きかった。Asamiちゃんは、なっち以外のソロ・パートもやっていたから、大活躍。

 m10.I Wish〜11.夕暮れ作戦会議〜12.微風

 ロンドン・オリンピック開催中との絡みもあったのか、m10はシドニー大会時のキャンペーン・ソングだった曲。で、アレンジが「真夏」と同じ河野伸さんなので、何かと共通点が見いだせる。この人はかなりきちっとオーケストレーションを構築する人のようだ。特に間奏は、オリンピックっぽい感じもちゃんとあって、これまたよく出来ている。
 で、これをやるには人手が圧倒的に足らんので、打ち込みを使った。前半のヒップホップ系のビートはもちろん、その後の速弾きアルペジオのストリングスやホルンなどはコンピューターにまかせ、ブラス・セクションは手弾きで合わせた
 CDでは、モー娘。メンバーが入れ替わり立ち代わりフィーチャアされるが、もちろん今回はなっち一人だけで歌い切ったので、また違ったイメージになって面白かったのでは。
 
 スケールの大きな「I Wish」の後、全く違う曲調の2曲が続くので、一瞬も気の抜けない終盤戦であります。

 m11は、歌詞があどけない要素で一杯なのに、サウンドは完全なるハードロック、そのギャップがかなり面白い。それと、Aメロのベースの動きが相当カッコイイ。しょーこちゃん、いい感じでCDの良さを再現してくれました。私は、大忙しモードから一瞬解放されて、思う存分ロックできるので、大いに楽しむつもりだったが、イントロ部分でシステム・エラー発生。オルガンが最初出なくて、ガックリ。演奏しながら、対処して復活させた。やれやれ。

 そんなドタバタを引きずったか、次の「微風」では間違って「ふるさと」のプログラミングを呼び出してしまった。これは、完全なる凡ミス。イントロではストリングスのみで演奏する予定だったが、エレピの音も一緒に鳴ってしまった。かなりショックではあったが、こういう時は意外に冷静になるもの。指は動いているが、頭ではどこでプログラム・チェンジするかを考えていたのだった。いやはや。
 ただ、全てが復活した後は、激燃え状態になるので、何だかやけに盛り上がってしまった。それが影響を与えたかどうかはわからないが、バンドも呼応してくれて、この時の演奏は今までで一番ロックした「微風」になった。特に後半のサビはかなりハイテンションでありました。

 En1.ふるさと

 さて、正直、個人的にはちょっと苦い後味を残してのアンコールとなったが、Asamiちゃんのワイルドなビートにしびれた2小節で、気分は全快。なっちの最高傑作と言っていい「ふるさと」は、ものすごく新鮮な気分で大いに楽しんだ。
 この曲に関しては、どうのこうの言う必要もない。やれることを全てこなして、曲の良さを最大限引き出すことに集中したし、冒頭のドラムスに刺激されたメンバー全員のパフォーマンスは素晴らしかった。

 En2.空LIFE GOES ON〜3.愛しき人

 「微風」「ふるさと」「空LIFE GOES ON」と壮大なバラードが3曲も並ぶと、かなり重厚。でも、今回はじっくり歌い切ることがテーマ、それを真っ正面から取り組んで、やり切ったことを讃えたい。そういう、なっちの思いに引っ張られて、緊張感のある「空」があり、そこから一気に解放されての「愛しき人」もまた格別でありました。

 というわけで、先日のAXでのライブを振り返りました。個人的には多少悔いを残す部分がありますが、今回は妥協せずに、自分がやろうと思ったことは、全てやり切ったことは評価したいと思います。もちろん、安倍なつみさんのコンサートとして、それが音楽的に良かったかどうかは別物、ファンのみんなが楽しんでくれたかどうかが一番大事で、その辺りは今後冷静に考えていかなくては。

 とは言え、何とか無事に終えることが出来て、ほっとしていると同時に、あらためてファンの皆さんに感謝したいと思います。本当にありがとうございました。また、なっちのライブで再会出来たら幸せです。
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by harukko45 | 2012-08-14 20:47 | 音楽の仕事

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