ジョン・レノン・スーパーライヴ2011の詳細(1)

 2011年の3月9日。私は、記念すべき10回目のジョン・レノン・スーパーライヴを成功させたスタッフ、バンドメンバー達とともに、渋谷の料理店でそのお祝いと慰労をかねた会に参加していた。10回という大きな区切りで、このイベントの終結も少し頭をよぎったが、「Starting Over/新たなるスタートを!」という力強い宣言がなされたことで、その日の宴会がいかに盛り上がったかは言うまでもない。我々現場の人間は、いたってシンプルなのだ。

 その2日後、3月11日。東日本大震災は起こった。あの時「安全な側」にいた私が感じたのは、異様な興奮・高揚感、その後の絶望と怒り、そして現在も残る、空しさと後ろめたさ。
 私は、震災後に繰り広げられた「日本はひとつ」的キャンペーンに強い違和感と危うさを感じた。少なくとも私は「安全な側」にいた「後ろめたさ」を克服できてないし、今はその事をちゃんと見つめるべきだと考えている。そして、そんな中でジョン・レノン・スーパーライヴに参加する意義も、あらためて考える必要があった。正直、なかなか答えは見つからなかったし、今もまだあやふやだ。しかし、このイベントが10年以上続けてきたのは「世界の子どもたちに学校を贈ろう!」であり、その一貫した姿勢は全くブレていない。おそらく、そこにこそ意味があるのかもしれない。
 
 11月9日、再び渋谷にて。私はスーパーライヴ2011の打ち合わせに参加した。その日は、特にオープニングでの演出について、多くの時間が割かれた。具体的に提案されたのは以下の事。
 
 ・1曲目は"Gimmie Some Truth"
 ・ジョンがレコーディングで残したヴォーカル・トラックと生演奏を同期させる
 ・レコーディング時に撮影された彼の映像を、3D効果を使ってステージ上に映し出す
 ・それ以外の部分に津波の被害や福島原発等の写真を挟み込む
 ・吉井和哉・奥田民生・斉藤和義の3人に共演してもらう

 実際に私が引き受ける作業は、ジョンのトラックに合わせて、テンポ・キープ用にクリックを打ち込むのと、イントロとエンディングを加えて、曲全体の尺を決めることだった。

e0093608_1652627.jpg 1971年のアルバム「Imagine」で、B面トップに置かれた"Gimmie Some Truth"は、"Imagine"で歌われるユートピアとは対局の、ウソに満ちた現実の世界を強烈に揶揄している曲だ。
 ここでのジョンのボーカルは、過激な言葉をまくしたて、聴き手を煽動するかのように押しまくっているが、それがまさに「ロックそのもの」であり、この曲の最大の魅力であると言っていい。
 また、連ねられた言葉には政治家や知識人達をあげつらうものが多く、それら一つ一つを探るように歌詞を読んでいくのも面白い。
 
 Aメロでは、「型にはまって、先の見えない、心の狭い偽善者達の言う事」や「ノイローゼで、精神病で、頭の固い政治家達の書いている事」、「口を閉ざして、人を見下した態度の、(ママに可愛がられてる)狂信的排他主義者達のしている事」や「分裂症で、利己主義で、偏執狂で、特別扱い気取りの奴らが見せるさま」に、彼はうんざりして、死ぬほど気分が悪いのだ。だから、「欲しいのは真実、真実をよこせ」と訴える。

 Bメロに出てくる「tricky dicky」は、リチャード・ニクソンのこと、「mother hubbard」は、たぶんマザーグースのハバードおばさんで、童謡を逆手にとって「赤ん坊扱い」にかけているのだろう。「dope」はヤクだが、「rope」は逮捕の象徴か、それとも首つりか。
 ここのくだり、「髪の短い、臆病者、腹黒くて狡猾な(ニクソン)野郎なんかが、俺を赤ん坊のように丸め込めるわけがない、たったポケット一杯の希望を餌にして(それは、ドープを買う金、ロープを買う金)」の英語歌詞は、ノリの良さ、韻のふみ具合、暗喩的な言葉遣いが実に巧みで、静かに感動する。

 ここからは私の勝手な推測だが、ヨーコさんがこの曲を選んだのは、大震災における、特に原発問題での日本政府の情報隠しと無能ぶりへの怒り、そして、多くの日本人が原発への安全神話を信じ込み、ずっと思考停止になっていたこと、もっと広げて、この震災の少し前、世界では原子力こそがクリーンエネルギーとして認知されていたことへの反省と警告を促す必要を強く感じたからではないだろうか。それが、70年代に二人で展開した反戦運動への記憶とリンクした。
 Aメロでコテンパンに罵られている連中は、原子力村の政治家・官僚・学者達を容易に重ね合わせることが出来るだろうし、同時に、ずっと無口で自分のことしか考えてこなかった一般民衆達も同類だったと知ることになる。

 12月8日、武道館本番。ジョンのボーカルとの共演、映像とのリンクは万事うまくいった。ジョージ・ハリソンが弾いていたスライド・ソロは奥田さんにお願いし、後半は「All I want is the truth, Just gimmie some truth」のコーラスを繰り返す中、斉藤さんにもギター・ソロをお願いした。

e0093608_17223692.jpg 会場からの拍手の中、続けて演奏したのは、"Everybody's Got Something To Hide Except Me And Monkey"。これは、2008年の時にもオープニングでやった曲。その時は「Come on, take it easy」というマハリシの口癖を思いっきり体現しようとした感じ。だが、今回はかなりヘビーな心境からの2曲目となった。

 あえて言えば、どちらも「真実を隠している」というメッセージ・ソングになるかもしれないが、それよりも重視したいのは、ともにジョンお得意の言葉遊びであり、彼のジョーク・センスは常に冴えまくっていて、特にこの曲では、ノリのいいセンテンスをバァーっと繰り出したあげく、シメに「僕とヨーコ以外は、みんな隠し事をしているぜ」とキメるなんて、これぞ「ロックンロール!」。
 ジョンはこの曲を書く前、風刺画にヨーコがジョンの背中にしがみついている猿として描かれた事に腹を立てていたということだが、それを逆手に取って、まんまと聴き手を惑わしてしまう天才ぶりに降参じゃないか。もちろん、ビートルズによるテイクも最高。カヴァーする我々はワクワクしっぱなしだ。そう、「言いたいことは言ってしまえ」「やりたいことはやってしまえ」だ。少し希望が見えるようだった。

詳細(2)へ続く。
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by harukko45 | 2011-12-15 19:16 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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