第54回グラミー賞

 今年のグラミー賞授賞式は、前日のウィットニー・ヒューストンの突然の死が全体を覆うような感じでした。特にR&B系のアーティスト達にはショックと悲しみが、少なからずパフォーマンスに影響を与えていたのかも。WOWOWの放送でゲストとして登場したパティ・オースティンが、そういった若いアーティスト達に激を飛ばすようなシーンがあったのは印象的でしたなぁ。
 WOWOWの特設スタジオに登場したゲストの中では、パティの他にもシンディ・ローパーがなかなかの毒舌で面白かった。特にラストのポール・マッカートニーらによるアビイロード・メドレーでのパフォーマンスで、6人の男性ギタリストがソロを回しまくるシーンを、「男、男、男、男...」これじゃまるで性差別よ、なんて言ってたし。この二人のオバサマの歯に衣着せぬ元気な発言に個人的には大いに盛り上がっちゃいました。

 とは言え、各パフォーマンス、今年はなかなか見所が多く、これはこれでかなり楽しめました。

 まずは、オープニングのブルース・スプリングスティーン、さすがです。サックスのクラレンス・クレモンズが昨年亡くなったのが、ほんとにさみしいが、それでもスプリングスティーンは立派に健在ぶりを示した。

 一昨年から大ブレイク中のブルーノ・マーズは、正直ヒットした曲がどれも好きになれない感じだったのだが、今回の50(60?)年代風に決めたパフォーマンスは楽しかった。まぁ、曲自体はたいしたことないんだけど、ノリの良さで飽きさせなかった。後半はジェームス・ブラウンになり切ったりしてたのもなかなかでした。

 今年1月に亡くなったエタ・ジェイムズへのトリビュートで、アリシア・キーズとボニー・レイットの競演。うー、スライドが聴けなかったのは残念だったが、ボニー・レイットがやっぱり素敵だった。(シンディ・ローパーが「なぜ彼女にスライドを弾かせないの!」とお怒りでした/ちなみに、これはポールのパフォーマンスの時ですが。)

 クリス・ブラウン、ダンスは頑張ってましたが、興味なし。
 ジェイソン・アルディーンとケリー・クラークソンのデュエットも、フムフムなるほどって感じ。ヒップホップ・ダンス系vsカントリー系という2大勢力による図式は今年も顕著な特色でした。その谷間でロックは沈む。

 フー・ファイターズ、実は数日前に彼らの自伝映画と言える「Back And Forth」を観て、何とも興味が再び沸いてきていたので、けっこう期待してました。前から結構好きではあるんだけど、ここ数年はちょっと遠ざかっていたわけで。まぁ、とにかくガンバッテる!って感じがするバンドで、憎めません。なんだかんだ言ってもデイヴ・グロールの男気あるリーダーシップなしでは、ここまで来てないでしょう。

 リアーナとコールドプレイ、こちらは興味なし。コールドプレイも、ずっと売れ続けてすごいとは思うけど、どうにも彼らへの熱はすっかり冷めてしまった。そういえば、リアーナとクリス・ブラウンは元恋人で、暴行事件起こして破局したんだっけ。それでも、両方をステージに上げちゃうアメリカの芸能界はすごい。

 ビーチ・ボーイズ50周年再結成へのトリビュート。マルーン5なんか引っ込め!フォスター・ザ・ピープルは許す。そして、本家ビーチ・ボーイズの登場での"Good Vibration"には、いろんなことを全て抜きにして、感動です。メンバーはみんな化石のように固まってたけど。ダリアン・サハナジャをはじめとするブライアン・ウィルソンのバックバンドの面々が支えていたので、パフォーマンス的には安心して楽しめた。

 ブライアンの後に、ポール・マッカートニー。これも因縁付けかな。ポールははっきり言って怪物的な部分があるので、永遠に若いのでしょう。新譜のアメリカン・スタンダード集に合わせたパフォーマンスは、あまり好みじゃなかったけど、相変わらずレベルの高さは十分示しました。

 テイラー・スウィフト。いやぁ、やっぱ好きですし、このところ一段と美しくなりました。こういうパフォーマンスを常にコンサートでやっているんだったら、きっと楽しい。それから、彼女を紹介するために「前座」として歌ったザ・シヴィル・ウォーズ、かなり良かった。注目したい。

 ケイティ・ペリーは、元夫へのあてつけパフォーマンスだったそうだが、まぁ、元々期待してないので、どうでも良かったです。

e0093608_22172871.jpg アデル。2年前の素朴な感じも好きだったけど、今回は文句なしの6冠制覇。始まる前から「アデル・ナイト」を予想していた人は多かったし、まさにその通りになった。パティ・オースティンからも大絶賛のコメント(WOWOWでのインタビュー)だったし、「今まさにイノベーションを起こしているのよ」とまで言わせたのだから、凄い。ただし、喉の手術を受けた直後ということについて、パティは「発声が悪いから」と一喝。「オペラの発声を習うべき」とも発言していたのが、興味深かった。

 とは言え、「Adele 21」が良い出来なのは間違いない。なぜ、このアルバムが去年こんなにも売れたのかについての分析は、ミュージック・マガジンの1月号での長谷川街蔵さんの記事が面白かった。
 簡単に言うと、リベラルと保守に分断されたアメリカでは、ポップミュージックの世界も、ヒップホップ〜R&B〜ダンス系とカントリー〜アメリカン・アイドル系に分断されてしまっており、そのリスナーの壁を飛び越えたのが、イギリス人ボーカリストだったということ。どちらかの陣営のみターゲットにしたアーティスト達は知名度や露出度の割に売り上げには結びつかなかった。

 それに、派手な仕掛けやダンス中心のパフォーマンス(どうせクチパクだし)も、そろそろ飽きました。そこに、彼女のように、「歌のみ」で勝負してきたのは圧巻だった。

 グレン・キャンベルへのトリビュート。この日、一番感動した!バンド・ペリーとブレイク・シェルトンもすごく良かったですし、最後に迎えた御大グレン・キャンベルがなんと素晴らしかったことか!"Rhinestone Cowboy"に涙ですよ、涙。

 ジェニファー・ハドソンのウィットニー・ヒューストン・トリビュート。突然の悲報を受けて急遽行われたパフォーマンスだったろうが、よく頑張っていたと思うし、大役を見事につとめた。歌った"I Will Always Love You"はドリー・パートンのバージョンの方が好きだし、ピアノが一瞬違うコードに行ってドキっとしたが、それでも思わず聴きながら熱いものがこみ上げる瞬間があった。
 ウィットニー・ヒューストンは素晴らしいボーカリストだったし、本来ならクイーンとしてもっと長く君臨することのできる人だったと思う。

 トニー・ベネットとキャリー・アンダーウッドは、ピアノの方がうまくて素敵でした。「アメリカン・アイドル」出身のキャリー・アンダーウッドもこういうスタンダードがうまいことがよくわかりました。

 クリス・ブラウン&デイヴィット・グエッタ、フー・ファイターズ&デッドマウ5。これは企画だおれ。まぁ、こんなもんでしょう。無理して、若向きにしなくてもいいのでは。メジャーでやっても面白みはない。

 ニッキー・ミナージュ。演劇的な部分は面白かったけど、全体としては「なんだかなぁ」でした。

 そして、アデルが6冠達成した後に、大ラスは再びポール・マッカートニーで、自身のバンドを引き連れての「アビーロードBサイド・メドレー」の「ポール部分」ラスト3曲。これは、ビーチボーイズの"グッド・バイブレーション"と同じで、まず、なんだかんだ言ったって、圧倒的に音楽レベルが高いってこと。でもって、結局、これらの偉大な楽曲を越えるようなものをポップミュージックは未だに作れていないって結論。
 60年代に魔法のようなポップスを作った、かつての(今も)スター達は、ついに70才へ。正直、この日の出来はそんなに良くはなかったし、スプリングスティーンやジョー・ウォルシュ、デイヴ・グロールを加えてのいかにもグラミーっぽい演出がダサかった。でも、"The End"の抗し難い素晴らしさに、文句なんて誰が言えるかってこと。

 などなど、と要らぬ御託を並べながらも、大いに楽しんだ今年のグラミーでした。
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by harukko45 | 2012-02-14 23:11 | 聴いて書く

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