プラハにて、チェコ・ビール探訪(1)
2012年 01月 09日
初めてのプラハでの1週間、主にビール・ハウス巡りに明け暮れ、数日前まで3回ほどレポしておりましたが、滞在5日目にて、衝撃のビールを飲んでしまい、正直これまでのビール概念を根底から覆されるほどのショックを受けたので、それまでのレポの内容がばかばかしくなりました。よって、それらを削除して、あらたに書き換えることとしました。
「神の水を供する店~ウ・ズラテーホ・ティグラ」
チェコは、現在世界中で飲まれているビールの主流であるピルスナー・ビール発祥の地であり、ビール消費量世界一の国でありますが、そのうまさについての知識はほとんどありませんでした。が、しかし今回のプラハ訪問で飲みまくった結果、多くのビール者達がチェコを絶賛する意味がよくわかりましたし、私も遅ればせながら、チェコ・ビール・ファン・クラブの末席に座らせてもらうことにしたのでした。
とにかく、もしプラハに訪れたら、必ずやらねばならないことは、何を差し置いても「ウ・ズラテーホ・ティグラ(黄金の虎)」に行き、そこで「ピルスナー・ウルケル」(プルゼニュスキー・プラズドロイ)を飲むことであると断言します。
ネット上では「世界一」いや「宇宙一」とまで表現される方もいましたが、まさに、そういっても過言ではないと保証します。
でも、ここは一般の観光客や一見さんには、かなり敷居が高い。何も知らずに、ガイドブック片手に夕食時なんかに訪れても、ほぼ絶対に入れません。なぜなら、地元の常連さんの「指定席」が厳密に決まっていて、そこには許可なく座る事はできないのです。で、毎日午後5時以降は、その常連客で一杯になり、彼らでさえ立ち飲みしている状態もあるとのこと。
ある意味、会員制ビール・クラブの様相を呈しているのです。ですので、一般人は店があく午後3時から5時までに、事を成さねばならないのです。
今回、私と妻は2時45分頃に店の前に到着しましたが、もうすでに多くの人が並んでおり、狭い入り口前の廊下に大男達がギッシリで、店が開くのを今か今かと待ち構えている様子。ただならぬ気配を感じます。
そして、3時少しすぎて開店すると、一斉にテーブルが埋まり始めました。しかし、ほとんどのテーブルに「17時から予約済み」の表示が。で、すでに各テーブルの角席には、いかにも常連らしき男性が、「テーブル主」のごとく鎮座してらっしゃいました。たった一つ「予約」表示のないテーブルは、アメリカ人の若者達に占拠され苦境に立たされた我々でしたが、突撃隊長である妻が、1人の「テーブル主」から手招きされて、何と相席を許されました!思ったよりもやさしかった。
で、ほぼ席が埋まったところで、ビールが供されます。えー、オーダーなんか聞きにきませんし、ビールはプラズドロイしかありませんし、ひょっとしたら300mlのスモール・グラスもあるのかもしれませんが、そんなことは関係なく、500mlのグラスになみなみと注がれたビールが客の前に、ドンドンドーンと次々に置かれていきます。
「ビール飲みに来たんだろう、ならビールを飲め」です。全く文句はありません。
さて、そのプラズドロイですが、これが何と言う美しい黄金色、そして何と言うきめ細かい泡、まさにクリームです。そして、普通なら写真を撮っている数秒間のうちに、泡がじょじょに消えていってしまいがちなのが、全くカタチが崩れませんでした。そもそも、どのジョッキも泡とビールの配分が驚く程一定です。サーバーさんの技術の高さに唸るだけです。うー、これだけで感動です。
そして、豊かな薫りを感じながら飲むと、実になめらか。そして、爽快。麦の甘さとポップの苦みのバランスの良さ、完璧です。そして、それらが口の中に持続して見事な旨味のハーモニーを生み出しています。「ううう、美味ーい。」思わず、日本語で言ってしまいました。
元々、プラズドロイは苦めのビールということで、一般的には認識されていますが、とは言え、ここで感じた苦みは、全く持って「高貴」であると思いました。この苦みが実に心地よく、口の中で長く残るのですが、まったくうざくない。「苦み」が「甘み」にも感じるような複雑さがあるのです。
「ティグラ」を訪れる前に、すでに2回、プラハでプラズドロイを飲んでいましたが、その時点でも「ウマい」と感動していたのに、ここに来て、全く次元の違う「美味さ」に遭遇してしまいました。はっきり言って芸術品です。この店のビール管理には何か秘密があるのでしょうか、わかりません。ただ、サーバーの方の技が超一流であることは間違いありません。
同じビールでも、扱い一つでこんなにも違うものだったのか!、と、脳天かち割られるほどの衝撃を受けたのでした。
そのあまりの美味さ、そして飲みやすさのため、あっという間に1杯目を飲み干すと、店員さんから次が供されました。別に「わんこビール」ってわけじゃないですが、客、特に常連さんが飲み終わるタイミングをちゃんと見計らっていたのです。さすがに観光客には「どうする?」みたいにしてましたが、私が「もう1杯」と合図すると、大きく微笑んでくれました。なんだ、こわくなかった。
ここでは一応食べ物もオーダーできるのですが、よっぽど慣れてないと、食事を注文するのは少しはばかれる感じがあります。なぜなら、ほとんどの人がビールだけ飲んでいるからです。仲間同士のテーブルはかなり会話が盛り上がっていますが、その他では、1人1人の会員さん(?)が、黙々とひたすらビールを飲んでいるのです。この「ビール至上主義」とも言うべき、孤高な男達の姿を見れば、へらへらと「ソーセージくれ」などと言えるでしょうか。(いや、言ってもいいんですけどね)
もちろん、基本的に下戸の人にはよりきびしいでしょう。「コーラください」なんて言えるもんなら言ってみな、なんて。
というわけで、私たち夫婦で4X500=2リットルのプラズドロイを飲み干しました。ここのビールは泡が消えかけても、美味さは変わりませんでした。このビールが最高のご馳走でした。個人的には他に何もいらないと思いました。何か食べて、この美味しさが崩れてしまうことが惜しいとさえ思いました。
相席のチェコ人の方が気さくにも英語で話しかけてくれて、お互いブロークン(もちろん我々の方がヒドイですが)ながら、会話を楽しむことができたこともうれしかった。そして、ビールを激愛しながらも、きちんと尊厳ある態度で楽しんでいるチェコ人達に大いに感動しました。
「ティグラ」ではうるさいアコーディオン演奏がありませんでしたし、お客の喫煙率もそれほど高くありませんでした。やはり、すべてはビールのためなのかもしれません。とにかく、適度な緊張感を漂わせるこの店の雰囲気は最高でした。ビールの神の下、その神の水を敬虔なるビール教徒たちが味わう聖地、そして、あのビール・サーバーを操作するマイスターこそ、司祭様そのもの。
我々は1時間ほどで、店を出ましたが、4杯で160コルナ(約640円!)、ホテルまで歩いて帰りましたが、その間中、あのビールの味わいが口の中に残っていました、それが何と心地よかったことか。
翌日朝、目覚めた時、その味がもう一度よみがえってきて、「あー、ビール飲みたい」と心の底から思いました。これぞ、至高の一杯と宣言します。「ピルスナー・ウルケル」とは、「ピルゼンの源泉」との意味。世界一のビールにふさわしい名前に納得でした。
プラハまで行った甲斐がありましたね(笑顔)
旅行楽しんで来てください。
お気をつけて・・・(笑顔)
もう少し続きますので、良かったら読んでください。
それから、14日のけいこさんのライブには、私は声をかけられていないので、別の編成でやるものと思います。
春ぐらいになったら、ツアーでお会いできるかもしれませんね。いつも、ありがとうございます。