大橋純子/クラブサーキット2011詳細(9)
2011年 09月 19日
m7.Disoco Medley_d.Boogie Wonderland
長々と引っ張ってきた「ディスコ・メドレー」をネタに昔の音源を掘りまくるコーナーも、いよいよ最後か。"Boogie Wonderland"はそれほど広がりはないか?どうなりますか。
1970年代も最後の年の6月にリリースされたEW&Fの新作「I Am」は、前作同様に大ヒット、シングル・カット第1弾であった"Boogie Wonderland"は、スペシャル・ゲストにエモーションズを迎えた、実に華やかな曲で、まさに「ディスコ」そのものだった。とにかく理屈抜きで、楽しく盛り上がれ!ビートを感じるだけでウキウキしちゃうんだから。
「ブギー・ワンダーランドで踊りだせば、ロマンスが生まれる」
「すべてのレコードが演奏され、私の心はずっとつぶやき続ける『Boogie Wonderland!』『Wonderland!』って」
天下のアース、怖いものなしのEW&Fの「ディスコ賛歌」は、それまでの凝ったアレンジを抑えて、シンプルで力強く、こむずかしいメッセージも一切なし、よって心から楽しむべし。70年代後半のいわゆるディスコ・クラシックのナンバー1ソングは、"Boogie Wonderland"でいいじゃないのかな。
で、もちろんEW&Fの曲ではあるんだけど、この曲のカッコよさを生み出している半分以上は、エモーションズにあると思う。何てったって、彼女達のコーラス・ワークは最高にキマッてる!さすがのフィリップ・ベイリーもあまり出番がない。
77年に"Best Of My Love"で全米1位になったのだから、大きな態度で主役を奪ったって、文句なし。
"Best Of My Love"ほど、全てがツボにはまって、見事に仕上がったポップスって、なかなかないと思う。今聴いてもちっとも古くない、ご機嫌にグルーヴィで何回でも聴きたくなるよ。モーリス・ホワイト・プロデュースのベスト3に入る傑作。ひょっとしたら、最高作かも。
これを含むアルバム「Rejoice」もいいんだ。日本のアイドルものみたいなところもあって、結構可愛らしくて面白いのだ。モーリスのプロデュースといい、Tom Tom 84のアレンジ、バックをつとめるアル・マッケイやヴァーディンも絶好調ですな。
そんな彼女達のもう一つの代表曲が"Boogie Wonderland"なわけ。当然、我々「チーム大橋」も、女性ボーカル陣、(山下)ユキコ・ネーサンと(佐藤)ヒロシ・ヒロチャンの二人が大活躍。ここにジュンコさんも加わって、エモーションズの3声ハーモニーを見事に再現したのでありました。おまけに間奏部分では、ベースのロクさんと4人で、ステップ、ステップ、ステップ。足がつりそうになっても、ビートがあるかぎり、ダンスは止まらないのでした。
老体にムチ打った、我々の頑張りのかいもあって、どの会場、どのステージでも、大いに盛り上がっていただきました。年齢に関係なく、みんな立ち上がってリズムに乗ってる姿を見れるのは最高にうれしかった。本当にありがとう。ライブで皆が一つになれる感覚って、何度やっても感動するし、何もかもが吹っ飛んでサイコーの気分でした。
こんな喜びを与えてくれる曲を生み出してくれたアース・ウインド&ファイアーには心からの感謝と敬意を表したい。
極めて意図的に「ディスコ」「ダンス」をターゲットにしながらも、ちゃんと音楽作品としての品位を失わずにいるところが、やはりさすがアースだと思う。
そこで、この曲の制作において、モーリス・ホワイトのプロデューサーとしての目利きの良さが光る部分を指摘しておきたい。
"Boogie Wonderland"は、モーリスらメンバーの曲ではなく、完全に外注で、メロディを作ったのは、ジョン・リンド(Jon Lind)という人物。彼は74年にモーリスとともに、"Sun Goddess"をラムゼイ・ルイスのために書いた実績を持つ。EW&Fもライブでのレパートリーに入れており、75年のライブ盤「Gratitude」に収録されている。
アース以外では、85年のマドンナの大ヒット曲"Crazy For You"が有名だろう。
で、彼は作曲家として売れる前、今でも多くの支持者を持つ伝説のバンド、フィフス・アヴェニュー・バンドの一員だったのだ。フィフス・アヴェニュー・バンドは68年にニューヨークで結成され、70年に解散して、アルバムも「Fifth Avenue Band」1枚のみなのだが、これが時代を先取りしたようなクロスオーヴァー感覚と洗練さを持つサウンドで、演奏のみならず、コーラスワークの巧みさも光った。
また、各メンバーがそれぞれソングライティングのセンスが良く、高い音楽性を持った、まさに「早すぎた」バンドだった。
日本では、はっぴえんどやシュガーベイブなどに大きな影響を与えたようで、この「Fifth Avenue Band」、リーダーだったピーター・ゴールウェイが解散後結成した「Ohio Knox」、ゴールウェイ自身のソロ「Peter Gallway」の3枚は、山下達郎さんに「三種の神器」と言わしめた名盤として知られていた。また彼らを「AORへの先駆け」「プレ・AOR」と評価する向きもある。
で、何と、モーリス・ホワイトが、このバンドのファンであったらしく、特にケニー・アルトマン(Kenny Altman)とジョン・リンドの曲が気に入っていたらしい。彼らは本国アメリカでは全く売れなかったというのに、まして黒人ミュージシャンであるモーリス・ホワイトが、ちゃんと彼らの才能に目をつけていたいうのが驚きだ。なるほど、私もケニー・アルトマンの書いた"One Way Or The Other"は大好きだし、確かに69年にこのサウンドは進んでいる。
そして、モーリスは74年の「Open Our Eyes」で、彼にボサ・ロック調の"Feelin' Blue"を書き下ろしてもらっている。
また、ジョン・リンドの方は、フィフス・アヴェニュー・バンドでは大ラスの"Angel"1曲だけしか作っていないのだが、これが、なかなかグルーヴィなブラス・ロック調で良いんだ。中盤ではコーラスをフィーチャアする感じも、その後のアースとのつながりを予感するものがあって面白い。
そして、これは今回初めて知ったんだけど、ジョン・リンドはその後ハウディ・ムーンという3人組のユニットを結成して、74年にアルバム「Howdy Moon」を発表。ここのメンバーに、ヴァレリー・カーターがいるのだった!
プロデュースはリトル・フィートのローウェル・ジョージで、全体にはアコースティック中心のフォークぽいムードに、少しハネた感じのリズムが加わって、ボーカル陣が少しずつ、R&Bぽいニュアンスがあるのが、なかなかいい。今後ちょくちょく聴きそうな好盤。だが、彼らもこれ1枚で終わってしまうのだった。
この後、77年に彼女のファースト・ソロ「Just A Stones's Throw Away」でもローウェル・ジョージがプロデュースをやっており、そこにモーリス・ホワイトも何曲かプロデュースしていて、EW&F軍団をはじめ、当時のL.Aの一流ミュージシャンが勢揃いしていた。
この時代は、LPの裏ジャケを見て、どういうミュージシャンが参加しているかを確認して購入するのが、ほぼ常識だったので、このアルバムなんかはまず問題なく、AOR系に興味ある人は、みんな買った口ではないかな。結構、仲間うちでも評判になっていたのを思い出す。
個人的には、前回紹介した2nd「Wild Child」の方が好みなのだが、1stの1曲目"Ooh Child"がやけに印象的だったような。今は持ってないんで、何とかしたくなってきた。
それから、彼女は「I Am」につづくEW&Fのアルバム「Faces」に"Turn It Into Something Good"をモーリスらと共作しておりました。これ、なかなか良い曲だし、アレンジもカッコイイ。私は、「I Am」よりも「Faces」が大好きなのだが、80年当時はシングル・ヒットがなく、2枚組だったこともあり、あまりセールスが伸びず、アース帝国失速の原因みたいな言われ方だった。けど、私は、当時も今も「Faces」は傑作だと思っている。
おおっと、実は「I Am」を中心に、このアルバム制作での重要人物であるデイビット・フォスターも話題にしたかったのだが、それはまたの機会にします。
それでは。
でも、確かに「The Promise」と2007年の「Illumination」は、最近聴き始めて、なかなかだと思っています。Blazeは知りませんでしたが、ディアンジェロがカヴァーした"Can't Hide Love"なんかも最高でした。