リッカルド・ムーティのオペラ

 イタリアの有名な指揮者リッカルド・ムーティがウィーン・フィルと今月来日していたが、私は観に行ってはいない。とにかく、むっちゃ高いし(1〜3万1000)、それと何よりムーティ氏のシンフォニー演奏には今まで感動したことがないからだ。
 93年にミラノに行った時、彼が音楽監督をつとめるミラノ・スカラ座管弦楽団の公開プローベ(リハーサル、この時はオペラではなくオーケストラのみの演奏会用でシューマンやラベルなどをやっていた。)を見学できた時も、いまいちピンとこなかったし、その前の91年にウィーン・フィルとやったモーツァルトの40,41番もサラサラといってしまう淡白な演奏だった。それは、これまでに何回か登場したニューイヤーコンサートにも言えた。

 だからといってダメなのかというと、そんなことはなくオペラに関しては、私の中ではかなり信頼している指揮者の一人なのだ。要は、それぞれ得意不得意があるわけだ。逆にシンフォニーを振ると素晴らしいのにオペラはだめという人もいるわけで。(もちろん、ご本人はそう思っていないかも。これもコチラの勝手な解釈になるのだろうね。)
 で、何が言いたいのかというと、今回の来日を記念してNHK-BSが彼のオペラを4日間にわたって放送してくれたことがうれしかったのであります。それもイタリアものばかりを。
 なんだかんだ言ってもイタリアものはイタリア人が、ドイツものはドイツ人が仕切るのがよろしい。(例外としてカルロス・クライバーのような天才はどちらを振っても我が道を行くが)
 すべてスカラ座の公演だからオケも歌手も演出も高水準な内容だったし、やっぱりムーティはオペラがいい!とあらためて確認した次第。放送された4つの演目(プッチーニ「トスカ」、ヴェルディ「トロヴァトーレ」「仮面舞踏会」「ファルスタッフ」)の中では、「トロヴァトーレ」と「ファルスタッフ」が大変すばらしい出来で感動した。

 「トロヴァトーレ」は「リゴレット」「椿姫」と同時期のヴェルディがもっとも充実していたと言われる頃の傑作。だが、4人の重要登場人物の歌唱力が強力でなくてはならない難曲つづきだし、ストーリーもいっさいの緩みがなく、緊張感がずっと張りつめた内容だから、なかなか名演と巡り会うのはむずかしいと思っていた。(現にジェームス・レヴァインとメトロポリタンのDVDなどパヴァロッティがいてもイマイチな出来。とそこにとんでもない朗報!1978年のウィーンでのカラヤン、ウィーンフィル、ドミンゴ、カプッチッリの「トロヴァトーレ」のDVDが出るとのこと。きゃあ、大変!)
 しかし、ムーティはキリっとした辛口の指揮ぶりで全くナヨナヨしたところがなく、厳しく厳しく貫いて見事に集中した舞台だった。歌手もそれほど有名人がそろったわけではないが、大変うまかったし、何よりステージでの一体感があって素晴らしかった。

 そして「ファルスタッフ」。このオペラを聴くと、ヴェルディという作曲家はなんと素晴らしい人生を送ったのだろうと思ってしまう。この遺作は彼の作品の中でも異色作とも言える。それまでのドラマチックで悲劇的なものとは全く違う明るく楽しい音楽。モーツァルトやロッシーニをも思わせるようなドタバタ喜劇に最後はバッハ風のフーガで「人生は冗談ばかりだ」と笑いとばす。80歳の老ヴェルディは人生の全てを見通して「笑う」ことで締めくくった。それが、かっこいい。
 ムーティの管理のもと、歌手もオケも素晴らしかったが、それよりヴェルディそのものの素晴らしさに感動した。また、逆に言えばそのように感じさせるパフォーマンスをした彼らは大変素晴らしかったとも言えるだろう。

 
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by harukko45 | 2005-10-21 16:07 | 聴いて書く

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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