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大橋純子/クラブサーキット2011詳細(2)

詳細(1)の続き。

 m3.たそがれマイ・ラブ

大橋純子/クラブサーキット2011詳細(2)_e0093608_22271372.jpg 現在、我々がやっているこの曲のアレンジは、2002年のマキシ・シングル"微笑むための勇気"にカップリングされた「モカ・ジャバ・バージョン」。レコーディングも現在のメンバーでやったものなので、その演奏内容は、今では完全にこなれ尽くした感じになっているものの、毎回同じように演奏しながらもその共感度はどんどん深まっている。
大橋純子/クラブサーキット2011詳細(2)_e0093608_053067.jpg この形は、もともと1993年のセルフカバー・アルバム「NEO HISTORY」のボサノヴァ・アレンジが基礎になっていて、そのライブ・バージョンが今のようにまとまったものだが、やはり、オリジナルの筒美先生アレンジ版を、何年か前にもう一度チェックしなおしたことで、この曲の魅力を再発見できたのが、個人的には大きかった。

大橋純子/クラブサーキット2011詳細(2)_e0093608_134890.jpg とにもかくにも、78年の"たそがれマイ・ラブ"はジュンコさんの歴史上で、一番大きな波紋を残した曲であるものの、そのオリジナル・バージョンは筒美京平さんの曲の良さとジュンコさんの歌の素晴らしさで、ちゃんとした高い評価が定着していると思う。
 初めてこの曲をテレビで聴いた時は、「美乃家」の大橋純子を歌謡曲歌手にしてしまった、と落胆した私でさえ、今では「うーむ、さすが筒美京平先生」と唸る次第。

 現在、日本ポップス界で最高の作曲家とも讃えられる筒美さんではあるが、ただし、筒美作品の個性が最も現れるのは京平先生が自らアレンジも担当した時なのだ。"たそがれマイ・ラブ”はまさにこれに入る。
 そもそも、洋楽の大ネタを使って、そこに独特な毒気を仕込んでいく筒美さんの作風をとことん生かすには、先生自身のアレンジとともに、歌が圧倒的にうまい人がメインである必要がある。尾崎紀世彦さんの「また逢う日まで」で始まる筒美京平黄金時代は、南沙織さんの「17才」らを経て、岩崎宏美さんの「ロマンス」「ファンタジー」「未来」などのソウル・ディスコ歌謡と太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」にて絶頂期を迎え、大橋純子さんの「たそがれマイ・ラブ」で完結すると言って良いのでは。

大橋純子/クラブサーキット2011詳細(2)_e0093608_0243759.jpg この曲以外にもジュンコさんと京平先生との相性はよく、「たそがれマイ・ラブ」以前からもすでに大きな成果を上げていた。それは、ジュンコさん渾身のセカンドで、日本女性歌手のソロ・アルバム史上の大傑作として永久に語り継ぐべき「ペイパー・ムーン」に収められた2曲である。
 この「ペイパー・ムーン」は収録された曲全てが傑作ばかり、と言ってもよいが、その中でもひときわ強烈な個性が光るのが、アルバム・タイトル曲の"ペイパー・ムーン"とその前に配置された"やさしい人"である。

 "ペイパー・ムーン"は"シンプル・ラブ"や"サファリ・ナイト"とともに、ジュンコさんのカッコよさを示す必殺キラーチューンの代表。"やさしい人"は、今のJ-POP界なんかでは絶対に生まれない、「とんでもない」楽曲で、 詞・曲ともに書いた方も書いた方だが、これを歌いこなしてしまう方もとんでもない。この2曲の場合、アレンジは別の人なのだが、ジュンコさんというとんでもない逸材を得て、楽曲制作に皆がすごく燃えて競っているように感じるのだ。だから、出来が良い。
 京平さんの2曲以外でもそれは言えて、だからこそ、この「ペイパー・ムーン」が大傑作となり得た。本当にすべてが素晴らしいものばかり。おまけにリマスター盤では、これまで未収録だった3曲が加わり、ますます充実した内容になっている。この時代の日本の音楽界がいかに凄かったか、いかに燃えていたかを、見事に示している。

大橋純子/クラブサーキット2011詳細(2)_e0093608_0454063.jpg さて、筒美京平さんに話を戻すと、"たそがれマイ・ラブ"直後に「FLUSH」というアルバムで、より大胆にジュンコさんとのコラボが実現した。これはA面を美乃家プロデュース、B面を筒美京平プロデュースという変則バージョンのアルバム。なのだが、今聴くと、美乃家サイドの方がある意味「手堅い」サウンドでまとまっており、一方の筒美サイドは、かなり「やんちゃ」で、先生けっこう暴れている。特に"揺れながらミッドナイト"がそうで、個人的には大好きだ。

 とは言え、このアルバム最大の聞き物はA面1曲目の"サファリ・ナイト"で、これは佐藤健さんが筒美先生をTKOに追い込むべく、気合いの入った強烈なカウンターを決めた瞬間だったのではないかと勝手に想像する。
 その後も"傷心飛行""マイ・ソング"とケンさんが素晴らしい仕上がりぶりなので、もはや美乃家サイドの勝利は決定的となった。

大橋純子/クラブサーキット2011詳細(2)_e0093608_1152712.jpg 1980年に映画「将軍」のイメージソングとしてシングルで、再び阿久悠・筒美京平コンビが登場するが、その"燃えつきて"はなかなか良い曲と思うし、ジュンコさんのボーカルも素晴らしいし、曲を良さを引き出しているが、アレンジから来る印象は"たそがれマイ・ラブ"以上に歌謡曲色が強い。カップリングの"ドロップ"もそうで、ジュンコさんにしてはかなり異色の仕上がりだった。

 大いに脱線したまま、まったく戻れずに、長文になってしまったので、続く、と。
Commented by ヤマケン at 2011-08-26 14:51 x
おっおっおっ!(^^ゞ
バンマスまさかの大脱線、でも大歓迎ですよ、すんごくためんなる講座、ありがとうございます。
確かに筒美京平さんのどん欲な洋楽エッセンスの吸収とその活用に対する意欲はすごいなあと思いますし、そのセンスももちろん私みたいな者が今さら言うまでもないことで。
サイドBを筒美さんが担当することになったときのケンさんはきっとすんごく燃えてたんだろうな、って想像しちゃいます。

リマスター盤の追加曲はU社のOさんと相談しながら決めて行ったんで、喜んでいただけるとすごく嬉しいです。
Commented by harukko45 at 2011-09-26 15:14
ヤマケンさん、いつもありがとう。で、いまだに終わらない「詳細」につきあってくれて、これまた感謝です。筒美さんの話あたりから、脱線しはじめたんでした。ただ、この手の話ってついつい盛り上がっちゃって。それから、リマスター盤による復刻は本当にありがたかった。これで、過去の名作を聴き返そうという意欲にもつながったのですから。
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by harukko45 | 2011-08-23 00:57 | 音楽の仕事 | Comments(2)

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる


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