水越けいこ/秋冬コレクション(1)

 今年初仕事は、水越けいこさんのライブハウス・ツアー「秋冬コレクション」の最終日、渋谷エッグマンでの2回公演でした。正月明けで、何かとシャキッとしない時期での仕事であり、このメニューでの本番は昨年の11月頭以来だったので、ちょっとタフな内容でしたが、それでもいつも暖かいファンの皆さんがたくさん集まってくれたおかげで、何とかやり遂げられたのでは、と思っております。お越し下さった皆さんには厚くお礼申し上げます。

 諸々の部分ではいろいろと反省しなくてはいけないものもあり、今後への課題を残しましたが、それでも堅実に1年を通してライブをやり続けた事は、ここ数年の活動の中ではとても画期的ことだったし、けいこさんにとって大変素晴らしいことであったと言えるでしょう。

 それと、何度も同じ土地を巡りながらも、常に新鮮さを失わなかったのは、けいこさんがメニューをかなり大胆に入れ替えて、リスクを恐れずにいろいろな曲にトライをしてきたことで、ミュージシャン側も緊張感を維持してのぞめたからだと思います。

 さて、今回のセットメニューを振り返ります。基本的には昨年11月のメニューがベースですが、東京ではオリジナル曲を2曲入れ替え、1部のみオープニング曲と、中盤のカバー・コーナーの3曲を入れ替えました。

m1.Moonlight and Sweet Night
 TOTOがバックをつとめた82年の「I'm Fine」は、大村雅朗さんのアレンジも良いのですが、やはりこの当時絶好調の勢いだったTOTOのメンバーの好演奏が興味深いわけで、バンドとしてのサウンドというより、L.A.の一流スタジオ・ミュージシャンとしての確かな仕事ぶりがとても光るのでありました。
 特にジェフ・ポーカロとデビッド・ハンゲイトのリズム・セクションはさすがの印象。今聴いても随所にしびれます。
 デビット・ペイチ、スティーブ・ポーカロのキーボード陣も実に「らしい」感じで良いですが、70年代後半から80年代前半にさんざん聴いたサウンドで、いかにも「AOR」なのが少しだけ抵抗感も。それは、ルカサーのギターにも言えるのですが。とは言え、演奏としては文句ない出来。やはり、一時代を築いたミュージシャン達には敬意を払いたいと思います。
 
 ただ、それまでのけいこさんの音楽からすると、少し明るすぎる部分もあるようにも思います。初期のアルバムにある独特な「くらっ」とする影の部分がTOTOによって抑えられたとも言えるかもしれません。

 そんな中で、アルバムの1曲目を飾ったこの曲は、曲の持つ哀感が勝っており、アレンジもオールディズっぽい3連バラードであるので、TOTOもさりげないバッキングでけいこさんのボーカルにピタっとハマっている好トラックではないでしょうか。ここでも、ポーカロの愛のあるドラミングが素敵。ペイチのアコピとエレピもまさに彼のタッチが感じ取れて、実に良いです。

 で、エンディングがトニックに解決せずに、そのまま次の曲につながるようになっているのが良かったので、今回のステージで生かさせてもらいました。

m2.If Without You
 91年の「Humane」の1曲目であるこの曲の最初のコードがm1の最後のコードと一緒なので、前曲の余韻の中で、イントロのアルペジオをギターで弾いてもらう事にしました。この流れは良かったと思います。CDでは後半の男性コーラスが印象的にボーカルにからむので、我々も頑張ってみました。

 東京での1部のみ、m1は"むらさきのシーン"になりましたが、個人的にはすごく好きな曲だし、詞もアレンジも前向きな幸せ感に満ちているのが良いです。収録されている「Jiggle」が81年で、「I'm Fine」の前作にあたるのですが、今聴くと、「Jiggle」での大村さんのアレンジはすでに次作を予感させるようなムードがありますなぁ。

m3.My Guy~4.移る季節(とき)に~5.秋想
 この3曲は秋のムードを意識して、一つの流れとして演奏しました。特にm4とm5は詞の中にも「秋」という言葉が出てくるのでした。

 m3はCDでは、かなりまったりとしたイメージで、全体に抑え込んだような演奏でした。でも、我々はちょっとハネ気味の演奏になってしまいました。私のピアノがそうなってしまったからですけど。演奏している方はこういうのはなかなか楽しいのですが、あまりうれしくなりすぎると曲の印象が変わってしまうので、危険です。本番ではそういう傾向が少しありました。

 でも、続く2曲は詞・曲・アレンジそれぞれに独特な強さがあるので、どっぷりその世界に入り込めるのでした。いわゆる「く~たまらん」ってやつです。それゆえに、演奏側にはこだわりたい部分が増えて、緊張感を呼び起こす内容です。そこが喜びでもあるのですが。東京での"秋想"はちょっと固くなっちまったなぁ、名曲だけに悔やまれます。

m6.TOUCH ME in the memory~7.星の子守唄~8.モナムール~9.生きがい
 けいこさんの代表作とたぶん多くの人がうなずくであろうと、勝手に思っているのですが、やっぱり「Aquarius」は名作でしょう。m6はその中でも人気曲なので、ライブでも定番・鉄板曲です。 

 で、続くm7もやはりライブではよくやっていたのですが、主にけいこさんのギターによる弾き語りでの形が多く、バンドでオリジナルの形をやるのはほとんどなかったと思います。なので、ちょっとテンポ感とか、全体の把握がもう一つであったと感じています。ただ、オリジナル・バージョンの持っているイメージは確かに「冬」って気分で、星と雪とがからんでくるムードです。おお、そういえば伊藤薫さんは"雪の子守唄"も作ってましたっけ。

 m8に関しては、先日のクリスマス・コンサートの時に書きましたが、今、結構好きな曲です。87年の「PROPORTION」はこの当時の打ち込みやシンセを強調したサウンドが、ちょっと気になる部分で、今だともっと骨太なリズム面を強調したくなります。今回、ドラムなしの3人編成のバンドでも、ライブで力強くやるのは正解だったように感じます。

 m9の"生きがい"は再び「I'm Fine」からで、このアルバムでのベスト・トラックだと思います。昨年の11月のライブでは諸事情あって、生でかなり強引にやってましたが、東京では打ち込みを使って、全体のグルーヴ感をまとめることにしました。スタジオ版では何と言ってもジェフ・ポーカロの16ビートがかっこ良く、特にタム一発でどっしりしたノリを作ってしまうところなど、しびれます。
 で、今回の打ち込みを作る際には、このタムの部分だけジャストよりも重めに打ったりしてみました。グルーヴ面での土台を打ち込んだ事で、実際の演奏では無駄な力が抜けて、とてもスムースに行ったと思いましたし、曲の良さを殺さずに出来たと思います。私は何度も出てくるイントロのフレーズからサビに入るところがすごく気持ちよくって、思わずニヤニヤしてしまうのでした。

 ちなみに、11月のライブでは"星の子守唄"ではなく、m7に"モナムール"でm8には"グッバイ・ダイアリー"をやりましたが、前半のピークを"生きがい"に持って行きたかったので、流れとしては東京の方が良かったと感じました。

 だいぶ長くなったので、後半戦は(2)へ続く。
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by harukko45 | 2011-01-12 14:40 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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