ジョン・レノン・スーパーライヴ2010の詳細(7)

詳細(6)の続き。

 吉井和哉さんを迎えて。

e0093608_15123545.jpg 1曲目は昨年もやった"Yer Blues"。ただし、キーはオリジナルのEに戻った。なぜ、昨年よりも半音上げたのかはわからないのだが、演奏する立場では断然やりやすい。
 今年も、吉井さんがエレキ・ギターを弾いたので、トリプル・ギターの競演となった。吉井、土屋、長田の順番でソロを回すという豪華なセッションでありました。こういうブルーズものはそれぞれのギタリストの色がよく出て面白いです。

 それと、仕掛けをビートルズ・バージョンからダーティ・マック(ロックンロール・サーカスで登場したジョンを中心としたスーパー・セッション・グループ)・バージョンに変えてみた。具体的にはブルーズの頭4小節の1拍目にブレイクして、ビートルズは4拍目に4分でドンとやるのを、ダーティ・マックでは3拍目の裏でくっているわけで、演奏的にはこちらの方が自然で、みんなのグルーヴが止まらず、ビートに推進力を加える感じにもなる。
 ビートルズの方はレコーディングということもあり、彼らっぽく、きっちりと作り込んだ感じだが、この4拍目だけっていうのは結構むずかしい。もちろん、キマると独特なヘビー感が生まれるのだけど。

 逆に、3人のソロのあと、もう一度ボーカルに戻る場面では、昨年はダーティ・マックの、1クッションおいてからドラム・フィルに入るやり方だったのを、ビートルズによる「突然のグルーヴ・チェンジ」パターンに戻した。これで、吉井さんの英語による怒濤の乱入シーンに、よりインパクトが出たのだった。

e0093608_646462.jpg ところで、ちょっとだけ「ロックンロール・サーカス」について付け加えると、これは、1968年に収録されたローリング・ストーンズのTV作品だったが、放映されることなく長年お蔵入りになっていたもので、ストーンズの他にジェスロ・タル、ザ・フー、タジマハール、マリアンヌ・フェイスフル、ダーティ・マックとなかなかの内容。今はDVD等で見れる。当時ボツになった理由は主役であるストーンズの出来が良くなかったことにつきる。

 この時、ダントツに凄いのはザ・フーで、彼らが演奏するミニ・ロック・オペラ"Quick One"は彼らのライブ映像の中でも屈指の傑作で必見と言っていい。これをやられた後では、ストーンズが意気消沈してしまうのはわかる。おまけに、キース・リチャーズはダーティ・マックに入りたいがために、ビル・ワイマンを追い出して、まんまとベーシストとして参加した、という話は十分あり得る。
 ビル・ワイマンはストーンズの出来についても、「ミックのパフォーマンスがお粗末だったからで、バンドに非はない」となかなか辛辣。

 で、肝心のダーティ・マックはなかなか面白いのだが、やはり「その場限り」の域を出ない。とは言え、ジョンのボーカルはさすがの安定感であり、エリック・クラプトンは圧巻にうまいし、かっこいい。ミッチ・ミッチェルも実に「らしい」感じ。だが、誰よりも気合いが入っているのはキースで、ギターソロをかき消すかごとくにベースを弾きまくっている。が、ジョンがせっかく締めのコードを変えているのを無視して、普通のブルーズ進行で突っ張るので、その辺りはグッチャリしております。
 エリックが余裕でかわしているのが、またかっこいいけど。ナイーブなジョンは「ったく!」って感じじゃないのかなぁ。

 吉井さんの2曲目、そして本編ラストは"Across The Universe"。

e0093608_17384015.jpg "Across..."にはCDだけでも4つのバージョンがある。まずは1969年の「バード・バージョン」、次はフィル・スペクターによる「レット・イット・ビー・バージョン」、96年のAnthology2でのアコギとシタール、マンドリン(?)による最初期のバージョン、そして2000年の「ネイキッド・バージョン」である。 で、どれが好きか。うーむ、どれも一長一短、それが答えだろう。とにかくだ、ジョンが「本当に良い歌は、メロディーがなくても歌詞だけでその価値を見出せる歌であり、それに該当する曲こそが、アクロス・ザ・ユニバースである」とまで語っていたにもかかわらず、決定版と言えるものは残念ながら、ない。
 
e0093608_17432057.jpg で、前にこのイベントでやった時は「ネイキッド・バージョン」風だったが、今回は久々に「バード・バージョン」が新鮮に聞こえた。で、吉井さんにどのようにやるか、新たにアレンジを加えるかを事前に相談してみた。彼は「レット・イット・ビー・バージョンで」とのことだった。
 ということで、フィル・スペクターばりのオーケストラ風を目指していたのだが、なかなかシブい感じで、こういう終わり方も新鮮かも、と思いつつも、ちょっと地味か?という不安も同時にあった。吉井さんが歌うことですべてOKになる場合もあるわけだから、決定は彼が来てからにした。

e0093608_17434859.jpg で、吉井さんが登場してのスタジオ・セッションで合わせてみると、やはり「本編最後」には物足りない気分が強くなった。そこで、吉井さん中心に解体と再構築の開始である。それに、吉井さん自身が日本語詞を書いてきたので、そのムードにも合わせていきたかったのだ。

e0093608_17442969.jpg 基本的には4年前の"Help !"でのアプローチに近くなったものの、吉井さんの個性を全面に引き出すことになって、これは正解だった。ただ、もう一つ何か劇的な要素が欲しくなったのだが、その時は浮かばなかった。

 後日、吉井さんが電話をくれ、その「足りない」部分でのアイデアをくれた。「なるほど!」ということで、休憩中だったにもかかわらず、バンド全員を再招集して合わせてみた。そして、ギターの間奏前に、一瞬静かなパートを作ったことで、このアレンジはバッチリきまったのである。これで、自信を持ってやれる気分になった。
 もちろん、吉井さんとは、その変更部分は本番前のリハで初めて合わせて、OKをもらったのだった。なんだかんだ言っても、こういうやりとりを経て、曲が完成していく過程は最高に楽しいのだった。


 さて、このあとは、アンコール。オノ・コードによる会場一体によるパフォーマンスがあり、おなじみの"Happy X'mas (War Is Over)"、続けて"Power To The People"、そして"Imagine"である。

 これらの曲に関してはもう何も言う事はない。言いたい事があるとせれば、世の中はますます不穏で不条理であり、戦争の危機は我々にも身近になりつつあり、それでも相変わらず人間達は傲慢だということ。
 ジョンは「70年代は、みんな最悪だった」と言っているが、今を生きる我々にとっては、あの頃の方がずっと素晴らしかったかもしれないと思うほど、現代はひどくないだろうか?
 そろそろ、私たちも怒らなくてはいけないのでは、勇気を持って。



 今年もたくさんの人々の力を借りて、一年を過ごすことが出来たと思っています。本当に心からお礼したいと思います。ありがとございました。
 そして、皆様にとって来年がよりよい1年であることを願っております。どうぞ、よいお年を。
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by harukko45 | 2010-12-31 18:06 | 音楽の仕事

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