ジョン・レノン・スーパーライヴ2010の詳細(1)

 ジョン・レノン生誕70年、そして没後30年である2010年は、ジョン・レノン音楽祭Dream Powerジョン・レノン・スーパーライヴが始まって10年でもある。また、このチャリティ・イベントの目的である世界各地での学校建設が、ついに目標であった100校を達成する年でもある。

 そういったいろいろな意味において、記念の年であり、区切りの年のコンサートとなった第10回のジョン・レノン・スーパーライヴを振り返っていくことにしたい。とは言うものの、出演してくれたアーティスト達が歌ってくれたジョン・レノンとビートルズの曲をネタにして、私一人が勝手に盛り上がるという内容は相変わらずなので、どうかご容赦ください。

e0093608_1523759.jpg 今年のオープニングは、ジョンの生前最後のアルバムである「Double Fantasy」からの選曲となったので、やはり本番日が30年目の命日であるのを意識してしまう。奥田民生、吉井和哉、斉藤和義という、今やこのイベントの常連である「御三家」による豪華な競演は、それだけで特別なものを感じさせるが、まして"(Just Like) Starting Over"から始めるというのは、現場で演奏するのものにとっては、どうしても背筋がピンと伸びるような感覚になるのだった。
 何しろ、あの1980年の12月、ジョン・レノン死亡というニュースが全世界を駆け巡っていた時、シングルとしてリリースされていたのがまさにこの曲であり、ジョンの死をきっかけに一気にヒットチャートを上昇し、ついにソロとしては初の全米1位を記録した曲でもある。
 「再出発」をテーマにしていながら、どうしても彼の死にリンクしてしまう"Starting Over"は、やはり単純に「楽しめる」わけではない。これはあくまで私個人の感覚かもしれないが。

 それと、「Double Fantasy」全体に言えることだが、80年代を強く意識した音作りは、当然ジョンが意図したことであり、これまでのどのアルバムに比べてもアレンジが整理整頓され、ニューヨークの一流スタジオ・ミュージシャン達による演奏は極めて洗練されているし、実に的確なのだ。これ自体はとても素晴らしいことだとは思うが、一瞬、ジョンが白いスーツでボズ・スキャッグスのように登場する雰囲気もあって、正直、ちょっと微妙な印象だったことも確かなのだ。

e0093608_14432974.jpg ところが、今年秋になって、突然登場した「Double Fantasy "Stripped Down"」を聞いて驚いた。"Stripped Down"が意味するのは、要はダビングされていたいろいろな装飾的な音を出来るだけカットして、ベーシックなリズム・セクションを中心にしたリミックスであるということ。

 どうやら、巷のジョン・ファンからは賛否両論のようだが、私にとっては極めて「楽しい」!このような、あまりプロデュースされていない状況、生々しいライブ感覚のサウンドが好きなのは、職業柄なのか、ただの好みなのか、それともこれが今の時代感覚だと突っ張っても良いのだが、まぁ、とにかく、ミュージシャンがいったい何をやっているのかが、よく聞こえるのはうれしい。
 特に最も80年代風ではない、ジョンのギターがよく聞こえているのはありがたい。例えば、この"Starting Over"の場合、ヴァース風に歌われる冒頭の部分が、再度後半に出てくるのだが、その「Let's take a chance and fly away somewhere...」の「サムゥエ〜」の所のコード、ジョンは頭ではDmを弾いていて、これはまぁ、無難で王道な感じ。いかにはロカビリー、オールディズ風なわけだ。ところが、2回目で大きくポーズする部分では、何とDベースでA7sus4のようなテンション・コードを鳴らしているではないか!
 これって、わかります?そうです、あの"A Hard Day's Night"の「ジャーン」ですよ、お客さん!
 
 オリジナル・バージョンでは女性コーラスのハーモニーとジェット・マシーンのようなエフェクトで「グニャ〜」となっていたところが、明解に聞こえてきただけで、私は大感動。これまではDm(9)でお茶を濁していたのを、今回はガッツリと「ジャーン」に変更したのであります。これならば、ジョンによるサイド・ボーカルのG音がすっきりとキマってかっこいいのだ。

 そして、この「Stripped Down」バージョンを聞いて、何よりも圧倒的に感動するのは、ジョンのボーカルなのだ!
 別冊カドカワの特別編集版を読んで初めて知った事だが、「自分の声が嫌いで、ミックスの際になるべくバックの音に埋もれさせるようにしていた」という事実には驚愕した。こんなに素晴らしい歌声を本人が下げさせていたなんて!

 ジョンのボーカルがより素晴らしいと感じるのは、今回2曲目にやった"Woman"だ。このミックスに関しては、少々ザックリしすぎでは?との感じもある。頭からしばらくアコギとベースとドラムというのはちょっと寂しい。だが、そのおかげで、ジョンのボーカルとハーモニーがやけにリアルに届いてくるのだ。だから、じょじょにその素朴さに酔いしれてしまうのだった。
 ただ、武道館でのライブで、ここまでシンプルにやるのは難しく感じた。なので、ここはオリジナルとの折衷案的にして、バッキングに厚みを付けた。特にイントロのコーラス・エフェクトのエレキ・ギターのフレーズは絶対に外せない。
 
 とは言え、今回の「Stripped Down」にあった精神は、とても大きな刺激になり、曲の捉え方に新鮮な感覚を与えてくれたことは実に大きかった。どんなにキラキラとした派手なお化粧をしていようが、元にあるジョンの魂は常に骨太だったことをあらためて確信したのだ。

 さて、実際の我々の演奏においては、極めて明解な意志の元で、すごく気持ちのいいサウンドに仕上がった。だが、ボーカルの方々はとても大変だったと思う。なぜなら、この2曲はどちらかと言えばソロで歌ってこそ映える曲だからだ。なので、直前のリハでも、3人によるジョイントは、なかなかうまくキマらなかった。
 私は少し心配になり、バンド側で少しフォローする手だてを考えた方が良いかと思った。しかし、ギターの長田くんの「彼らはみんなプロだよ。本番では絶対キメル」の言葉で強く納得した、フム。

 ただ、どうしてもしつこい私は、押葉くんとともに二人で両曲のサビでのバッキング・ボーカルを加えることにした。スタジオでのリハでは、つねに二人で歌っていたので、加えることは難しくはなかったからだ。

 そして、本番。常に緊張感が最高潮に達するオープニングにあって、まずは吉井さんの歌いだしにはシビれた。さすが、自分の世界観をしっかり持ち合わせているアーティストの凄みは違う。ゆったりと大きな息づかいで歌ってくれたことで、"Starting Over"のヴァースが、実に広がりのある世界を生み出したのだった。これにより、私としてはすべてOKになってしまった。あとは、あまり憶えていない。だって、気持ちよかったからだ。
 なんて、いい曲だ。なんて、すばらしい曲だ。それだけで十分な気がした。全員が高い共感度で曲と結ばれていれば、何も心配などない。ジョンの曲が我々を導いてくれる。そして、それこそがジョンへの最大のトリビュートだと思う。

詳細(2)
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by harukko45 | 2010-12-28 17:04 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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