歌姫コンサート〜燃える秋「第1部」

 11月23日の勤労感謝の日、渋谷のC.C.レモン・ホールで催された歌姫コンサートが無事に終了しました。当日、ハウス・バンド「歌姫バンド」の一人として5組の女性ボーカリストのバックをつとめたのですが、準備からリハーサル、そして本番と何とかやり切れて、バンマスとしてほんと、ホっとした次第であります。

 とにかく、集まった"歌姫"達が個性の強い方ばかりでしたから、その内容自体が濃厚になるのは間違いなかった。それぞれの方々の曲の方向性はかなり違っていたので、対応する我々バック・バンドとしては気持ちの切り替えがとても大事でした。それゆえに、神経もずいぶん使った感じでした。
 でも、終わった今は、すごく刺激的で楽しい思いで満ちております。それは、やはり何と言っても、日頃から気心知れ合った大橋純子さんのバンド・メンバーが支えてくれたからだし、あらためて、彼らのミュージシャンとしての度量の大きさに感動と感謝の気持ちを抱くのでした。

 では、本番ステージを振り返っておきます。

 このコンサートはラジオのニッポン放送が主催ということもあって、全体に「歌番組」的な構成で、まずはニッポン放送アナウンサー那須さんの司会で始まりました。
 そしてトップ・バッターはこの方、岩崎良美さんです。

 私はかつて、お姉さんである宏美さんのバックを数年間やっており、今でも現場でお会いすれば、気軽に声をかけていただいておりますので、今回、良美さんのバックを出来たのにも何かのご縁を感じてしまいます。
 でもって、今回の良美さんの曲がかなりシビレるものだったので、よりいっそう気持ちも入るというものでした。

 m1.赤と黒
 30周年を迎えた良美さんのデビュー曲ですが、この曲がデビューとはずいぶん最初から大人な世界だったし、大胆だった。なかにし礼さんの作詞だから、中味が濃くないわけがないし、芳野藤丸さんの曲も実にオシャレだった。
 当然、ここでの「赤と黒」はフランスの作家スタンダールの有名作からのもので、普通のアイドル曲のレベルでは収まらない深みがあるのでした。歌詞の中にある「秘密めいた方が素敵」「闇の中が美しい」なんてあたりにググっと来てしまうのだ。

 でもって、この名曲を2009年にリ・アレンジ、カズンの漆戸啓さんがプロデュースしたニューバージョンは素晴らしい出来で、実にセンスのいい仕上がり。
 資料としたいただいた音源はライブ・レコーディングのもので、編成はピアノ、アコギ、ベースだったのだが、スタジオ・テイクではドラムン・ベースとフレンチ・ポップをうまくミックスさせたリズム・トラックがさりげなく入っていて、今回はどうしてもリズム入りで再現したくなった。
 我がバンドには植村くんという、この手のことを難なくやり遂げる天才がいるので、すべて人力でのトライをお願いした。

 それに、漆戸さんによるピアノの演奏がすごく美しく、大いに勉強させてもらった。また、私自身もサカイレイコさんを通じてフランス系の音楽にここ数年関わってきたことで、この手のムードに強く共感できたのだろうと思う。

 それにしても、デビュー当時も堂々たるものだったが、今の良美さんの深みを増した歌に感動する以外ない。ピアノのイントロから「あー」と入ってくる瞬間だけでゾクっとさせられた。

 m2.無造作紳士〜さよならを教えて
 このところ、良美さんはフランスものを多くレパートリーにしているとのこと、それも原語での歌にこだわっている様子。なので、フレンチ・メドレーとして歌われたのはジェーン・バーキンの「無造作紳士/L'aquoiboniste」とフランソワ・アルディなどのヒットで知られる「さよならを教えて/Comment te dire adieu」。うー、なかなか渋いが、多くの人に絶対聞き覚えのある選曲。良美さんのフランス語も実になめらかで驚きました。
 まぁ、とにかく、この手の曲ではピアノがちゃんとしてないとなりたたない。なので、頑張りました。ところどころ、もうちょっとって悔いはあるけど、何とか及第点はもらえたでしょう。それよりも楽しかった。

 m3.タッチ
 さて、良美さんラストは彼女の代表曲の一つであり、アニソンの名作でもある「タッチ」。これはファンの方々をはじめ、会場も盛り上がった様子。これも息の長いヒット曲ですなぁ。こういう文句のないキッチリとハマりまくった楽曲というものが、70年代80年代の日本ポップス界にはあったのですよ。

 m4.夢で逢えたら
 岩崎良美さんの3曲が終わり、ここに熊木杏里さんを迎えて、お二人で大瀧詠一さんの"夢で逢えたら"を。吉田美奈子さんバージョンをベースしましたが、個人的にはシリア・ポールさんのバージョンがかなり好きでした。大瀧さんのアレンジはどちらも同じでしたが、演奏のニュアンスが違うのがなかなか面白いです。
 また、この曲のバックボーンにはフィル・スペクターやブライアン・ウィルソンがあるわけですから、自然にサウンド面ではいろいろとこだわりたくなってしまいます。
 かなり個人の趣味的部分になりますが、私はハープシコード風やオルガンにストリングスを混ぜこぜに弾き、後藤さんにはフルートをお願いし、コーラスお二人にも頑張っていただいた次第。いっぱい音が入ってないとあの手の雰囲気にはならんのですばい。

 m5.君の名前
 ここからシンガーソングライターの熊木杏里さんのコーナー。彼女はまだ20代で、デビューは2002年とのこと。今回初めて作品を聞かせてもらったが、実際にリハで歌ってくれた時には、その声の良さにすっかり気持ちよくさせられました。特に、この"君の名前"はピアノとの弾き語り風だったので、私は弾きながらフンワリとして気分なっておりました。
 また、この曲の歌詞に、我がバンドのコーラスであるヒロコさんはいたく共鳴したらしく、かなり入り込んでおりました。同じような経験ありなんでしょうか。
 
 今回は彼女のライブ・アレンジを参考に、CD版よりもシンプルなサウンドにしましたが、特にゴトウさんのソプラノ・サックスを生かしたので、その独特な雰囲気がより効果的だったと思いました。私も彼の演奏の影響で、より空間を生かすようなプレイになりました。

 m6.モウイチド
 もう1曲は、ポップで前向きな気分させる曲。だから、出来るだけ華やかで若々しいサウンドを目指しました。これはCD版のアレンジを再現することが可能に思えたので、サイケなギターやストリングスなど私と土屋さんのギターでおいしいフレーズを弾き分けました。
 グルーヴはR&Bぽいムードがあって、楽しかったですね。こちらも緊張感がとれて、いい意味でリラックスした伸びやかさがあった演奏になったと思います。

 m7.愛のコリーダ
 熊木さんが次に控えていた大西ユカリさんを迎えて、お二人でなんと、クインシー・ジョーンズの大ヒット曲"愛のコリーダ"をジョイント。それも日本語詞バージョンがあったとはこれも驚き。とは言え、我々にとってはかなり自分達のテリトリーに入る曲なので、気分は最高です。
 ただし、この曲はじつに構成がやっかいなのです。3コーラスのサビがそれぞれ違う形で、4分の2拍子が微妙に入っていたりして、よく引っ掛かる危険があるのです。
 実際に、クインシー・ジョーンズの75歳記念コンサートでもアメリカの有名プレイヤー達によるバンドが途中で見失い、しばしカオス状態になっていました。

 で、私はバンドの皆さんにくれぐれもご注意くださいと念を押していたのですが、なんと、その言ってた張本人が3コーラス目のサビを見失いました。バカー!
 何とか2小節ぐらいで立ち直りましたが、調子こいてのっていたら、まんまと罠にハマっちまいました、クヤシイ!

 とは言え、とにかくクインシー・ジョーンズのアレンジはやっぱり随所に凝っているし、聞かせどころが満載。だから、いろんなところをビシっとやり遂げたくなるのです。もちろん、ミュージシャンの人数が圧倒的に足らんのですが、それでも今回はかなり頑張りました。まさに敢闘賞ものの演奏でした。

 それにしても、熊木さんと大西さんのコンビ、かなり異質な二人の初コラボはなかなかスリリングさもあって面白かった。こういうイベントならではでした。

 m8.やたら綺麗な満月
 ここからは大西ユカリさんのコーナー。大西さん、オモロいことやってはりますなぁ。大阪風のコテコテを強調するだけでなく、ちゃんとソウルと昭和歌謡の良さを理解して、意識的に狙っている感じがイカしてると思いました。
 それにプロデュースが宇崎竜童さんということもあり、曲自体がまさに時代とその空気を持っていると言えるでしょう。

 で、演奏する側はこれが意外にグルーヴィでやりやすかった。CDでは往年のビッグバンド・スタイルでレコーディングされているので、我々のバンドの編成ではなかなか難しいかとご本人も思われていたようですが、これがそうでもなかった。さすが、我がバンドはだてに年食ってないということが、立派に証明されたのでした。

 m9.「まだ」と「もう」の間
 この曲はかっこいいです。元のアレンジもなかなか気が利いていて好きです。ベースのラインがロクさんのスタイルにもピタっとくる感じだったので、すごく気持ちのいいグルーヴになりました。ゴトウさんのテナーもブロウして、かっこ良かったし、私とのブラス・セクションの再現もうまくいったと思います。大西さんの語り調の歌が楽しかったし、歌詞の意味深さがよく際立ったように感じました。うー、やっぱ阿木燿子さんの詞ってすごい。

 m10.身も心も
 というわけで、1977年のダウンタウン・ブギウギ・バンドの名曲「身も心も」です。とりあえず、曲が強いので、こちらがどうのこうのということはありません。きちっとリスペクトする心構えさえあれば、間違った方向には行きません。
 大西さんはそれほど激情的になることはなく、しっかりとタメた感じがすごく良かったです。
土屋さんのシブいギターをフィーチャアできたのも良かったです。

 m11.恋のフーガ
 コンサート1部のラストはすでに登場している3人の歌姫による豪華ジョイントで、ザ・ピーナッツの超名曲をカヴァーしました。なかにし礼作詞、すぎやまこういち作曲、宮川泰編曲。最高でしょう、これは!ほんとに、この頃の歌謡曲って素晴らしい!作っている人々がとことんいい仕事してます。
 ですから、すべてにおいてリスペクトしながら、そのカッコ良さを再現すべく燃えました。あー楽しかった!
 おっと、ちょっと付け加えると、この曲のエンディングには紅白歌合戦に出演した時のピーナッツのバージョンでやってみました。これは、まさにガチョーン!てノリなんですよ。
[PR]
by harukko45 | 2010-11-25 23:45 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30