最近ロックがおもしろい(2)/The White Stripes
2005年 07月 30日
ホワイト・ストライプス(The White Stripes)のプロデューサー、コンポーザーでボーカル、ギターを主にベース、ピアノなどの楽器をこなすジャック・ホワイトは久々に登場した「Genius」だ。「Mad」でもあり、「Demon」とも言えるか。とにかく最高に「Cool」だ。彼以上にかっこいいことをやっているミュージシャンは今世界中探してもいないのではないかな。
私は彼にすっかりやられてしまっていて、MacのiTunesのライブラリにはホワイト・ストライプスの全アルバム5枚が収録されている。
米デトロイト出身のジャックとメグ(Drs)・ホワイト姉弟によるホワイト・ストライプスは99年にデビューしていたのだが、私はそうとう遅れて、2004年の正月にウィーンで初めて聴いた。その時滞在していたホテルのテレビでMTVを見ていて、そこで毎日オン・エアされていた。その時の曲は2003年のアルバム“Elephant”の中の‘The Hardest Button To Button’だったのだが、とにかくかっこよかった。 その後、グラミー賞2004でのライヴ・アクトで完全にノックアウトされた。ホントにギターとドラムだけで演奏していた。この時は今時のロックを聴いて、今時のロック・ミュージシャンを見て「カッコイイ!!」と思ったことが自分でも驚きであり、そうとう興奮した。ついに久々の「本物!!!」が現れたのか!!!!
彼らの4作目の“Elephant”はたぶんロック史上に残る大傑作だと思うが、ジャック・ホワイトという男はデビューの段階でもうすっかり出来上がっていたことを最近、過去の作品をすべて聴くことで理解することができた。他の普通の若手バンドのようにデビューは勢いと情熱にまかせて突っ走って、じょじょに成長して傑作を…云々というレベルではない。ジャックのギターとボーカルはインディーズ時代のファースト、セカンドから最高に良いのだ!これも驚いた。彼らは「ガレージ・ロックの雄」「ロックンロール・ルネッサンスの旗手」などと他のバンドと一緒くたにされがちだが、とんでもないことだ。彼らは最初からワン・アンド・オンリーのやり方でこれぞ「ロックの真髄」というものをがっちりつかみ取っている、まったくもって奇跡的な存在だと思う。
あの偉大なるジェフ・ベックもジャック・ホワイトのギターを大絶賛している。いやーほんとに良いのだ、この男のギターは。そしてボーカルはロバート・プラントとジャニス・ジョプリンが乗り移ったか?!と思うような素晴らしさ。だから、たった二人だけの演奏なのに、これはレッド・ツェッペリンか?と思うような瞬間がある。そして新しい!今であって、決して70年代のレプリカではない。
(左/ライブDVD"Under Blackpool Lights")
“Elephant”はロンドンのスタジオで8トラック・レコーダーで録音された、それも10日間で。制作費は80万円(!)しかかかっていない。ジャック曰く「ProToolsはクソ!だ。」そうだ。だから、彼らはコンピューター関係の機材を一切使わない。ちなみにインディーズ時代の1,2枚目はジャック自身の部屋でレコーディングしたそうだ。にもかかわらず、どのアルバムを聴いてもチープさ(それも今時のわざとらしい古くささ)など感じない。それどころか、骨太で爆発的でなおかつ繊細なのだ。
そしてこの6月に待望の5作目“Get Behind Me Satan”がリリースされた。すぐに買った。
今回は驚くことにエレキ・ギターをベースにした曲は3曲しかない!えー、ほんと?どうして?不安を感じながら聴き始めると、とんでもない。素晴らしい出来じゃないか!!とにかく曲がいい。ジャックのコンポーザー、プロデューサーとしての才能は爆発しまくっている。マリンバやピアノの使い方が最高であり、ギターが聞こえなくても要はジャック・ホワイトが演奏していれば、それで最高なのだということを知ることとなった。これまでより、多彩に楽器を使い分けることでアレンジの幅が広がったし。それでいて空間を生かしたシンプルで力強いサウンドは全く変わっていなかった。再び大傑作の登場なのだ!
全ての曲が必聴で、このバンドの場合何から何まで良いので、細かいところをくどくど言うのはやめておこう。もし興味があったらぜひ聴いてほしいし、もう知ってる人は私とともに彼らを聴く喜びを神様に感謝しましょう。そうそう、彼らは見た目もよい。最近のこきたない小僧ロックとはこういうところも違う。ロックはルックスも大事でしょう。ロックはかっこよくなくちゃだめなのだ。とにかく、ジャック・ホワイトならびにホワイト・ストライプスはもはや歴史上の存在だと確信する。次回もロックで。