最近ロックがおもしろい/Foo Fighters

 最近ほんとにロックがおもしろい。それも60年代70年代のクラシック・ロックでなく、今の音、まさに2005年の新譜でかなりはまりこんでいるバンドがいくつかあるのである。不思議なもので、現在旬な音楽に共感できるチャネルを自分の中にもう一度発見できたことで、何だか少し若返ったような気分にもなるものだ。
 
 とにかくつい最近までは、私がのめり込んだロックバンドとは15年も前のガンズ&ローゼズが最後で、彼らとニルヴァーナが共に失速、崩壊したことで自分の中で「ロックは終わった」ものになっていた。その後に登場したバンドにはどれも満足できず(私の思うロックを感じられず)、それよりもヒップホップやR&B系の音楽の方がずっと魅力的だった。と同時にブラジルの音楽などワールドミュージックをいろいろ聴いたりすることが新鮮に感じられたし、またそれ以上にヨーロッパ・クラシック音楽にはまりこんでいったわけだ。つまり、私の90年代後半はオアシスの「Morning Glory」よりモーツァルトの「フィガロの結婚」の方が圧倒的にポップだと思ったし、レディオヘッドの「OK Computer」よりワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」の方がずっと音響的にすごかったし、ベックの「Odelay」よりリヒャルト・シュトラウスの「ナクソス島のアリアドネ」の方がもっとミョウチクリンで刺激的な音楽だったのだ。

 一度興味を失うと、若いころは自分の音楽のほぼ全てを支配していたロックはあっという間にかっこわるい存在になった。だから、ここ10年のロックバンドの動向はほとんど知らなかった。たまにグラミー賞やMTVでチェックする程度だった。ところが、何というか去年の秋頃から、「ロックの復活」を強く願望するようになった。ポール・ウェラーもインタビューで言っていた、「そろそろクラブ・ミュージックはもういいんじゃないか。」

 最近のR&B系のどれもこれも似たり寄ったりのサウンドも正直飽きを感じている。もちろん、カニエ・ウェストやアリシア・キーズやアウトキャストあたりは才能ある人々だが、例えばアウトキャストのアンドレ3000はヒップホップやラップ・ミュージックにはもうとらわれない音楽になってきている。

 また前置きが長くなってしまいそうだ。ロックを求める心情は一言では説明しがたい。ただ、結局私はロック・ミュージックをやはり愛していたということだろう。そして、それこそが自分に一番ピタっとくる感じだと思っているのだ。さて、その感覚をはっきりと呼び覚ましてくれたバンドは三つだ。まずはフー・ファイターズ。

 フー・ファイターズ(Foo Fighters)はまるっきりの直球勝負のバンドで、新譜の“In Your Honor”が6月にリリースされたばかりだ。2003年の前作“One By One”は素晴らしいアルバムでその年のグラミーで「最優秀ロックアルバム」を受賞したが、この新譜はそれを上回る傑作なのだ。リーダーでソングライターでギターでボーカルのデイブ・グロールはあのニルヴァーナのドラマーだった男。だからどうしてもニルヴァーナがらみで語られがちだったが、もはやそんなことはどうでもよくなってしまった。とにかく2枚組の大作にもかかわらず、デイブ・グロールの素晴らしさとともにバンド全体のグルーヴが強力になって最高の仕上がりなのだ。それは特にハード&ヘヴィの極みともいうべき1枚目に顕著だが、いくらハードな曲であっても聴き終えた後に心地よい爽快感があるのが彼らの良いところ。アメリカらしい前向きさはちゃんと残っているのだ。

 2曲目の“No Way Back”(1曲目はイントロダクションのような扱い)から“Best Of You”“DOA”“Hell”の流れには久々に興奮した。その後もイキまくるが8曲目の“Resolve”の美メロにやけに感動したりする。続く“The Deepest Blues Are Black”におけるデイブのシャウトには鳥肌ものだ。

 1991年にニルヴァーナの‘Smells Like Teen Spirit’がMTVでヘヴィ・ローテーションでかかりまくっていた時、私は仕事でLAに数週間いて、このバンドにショックを受けていた。「こういうロックがアメリカから現れるなんて!」どうしようもない閉塞感から叩きつけるようなすさまじいシャウトに移っていくその曲は、およそそれまでのアメリカン・ロックから想像できない音楽だったが、同時にそれは、その当時の形骸化して商業化どっぷりのLAメタルを始めとする他のロック・ミュージックを見事に粉砕した実に「Cool」な瞬間でもあった。

 デイブ・グロールはその時のスピリットを失わず、それどころかただのパンクスから見事に成長したビッグなバンドのカリスマとして堂々たる存在感だ。その歌はこれこそ「魂の歌」だろう。この1枚目はまったく非の打ち所のない最高のロックンロール・アルバムだが、一転して2枚目は完全なるアコースティック。しかし、よくありがちな安易なものではない。こちらはこちらで深みのある充実した内容でこれまた恐れ入った次第。なかなかこのバンドは懐の深い音楽を展開する力がある。ゲストにジョン・ポール・ジョーンズにノラ・ジョーンズを迎えているが主役はやはりデイブなのだ。とは言え、8曲目の“Virginia Moon”でのノラ・ジョーンズはボーカルこそ控えめにしているが、ピアノを弾き始めた瞬間、その音数の少ないシンプルなフレーズにもかかわらず見事に彼女の世界を表現してしまった。ノラのオーラの強さにもあらためて感動する。

 そしてこのアルバムは内容だけでなく、音が大変良い!マスタリングは偉大なるボブ・ラドゥウィック氏だから当然なのだろうが、ほぼ同様のスタッフであるのに前作との差は大きい。これは2年前からのバンドの成長と時代や状況の変化がもたらすものだろうか、これも興味深い。というのは、この後にお話しするつもりのバンドのアルバムも前のものより音の仕上がりが良くなっている気がするのだ。というか私好みなのか?とにかくローファイは完全に終わったかな。

 そんなことで今はロックがおもしろい。かなりはまっています。次回もロックの話をしたいと思います。それでは。
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by harukko45 | 2005-07-28 15:12 | 聴いて書く

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