ウィーンにて、その6セビリアの理髪師

 ロッシーニの「セビリアの理髪師」を観た。一昨日と同じStaatsoperでだが、席の値段は10分の1の天井桟敷の右側、舞台の半分は見えない。が、前にも書いたように、かえって音が良かったりするのだ。オーケストラの音がオケピットから真上に向かってくるからだろうか。ただし、舞台の全容は見えないので、ある程度ストーリーを把握していないとチンプンカンプンになってしまう。今はDVDなどで自宅で予習できるから助かるのである。

 ところで、ロッシーニという人はイタリアの作曲家でモーツァルトの死後、ヨーロッパのオペラ界の人気を独占した人で、その当時あまりの人気にモーツァルトのオペラの上演回数が減ったのだそうだ。ところが、人気絶頂だった37歳で突然引退し、その後は美食家として余生を過ごしたという。料理のレシピ本も残していて、ロッシーニ風ステーキ(牛ヒレステーキの上にフォアグラがのっているやつ!)なんかが有名。最近じゃ日本のデニーズの冬の定番メニューだよね。なぜそんなに早く音楽界に見切りを付けて、悠々自適の人生を選んだのか、今でも全くの謎だが、事実としてわかっているのは、その後彼の作品の人気は凋落、現在ではこの「セビリアの理髪師」以外はどこの歌劇場でもほとんど上演されなくなってしまったことだ。

 このオペラがヒットしているときは、ベートーヴェンも絶賛していて、ロッシーニに直接「セビリアのようなオペラをもっと書きなさい。」と言った、とロッシーニが語った記録が残っているそうだ。確かに、ベートーヴェンの推奨なしでも、この作品が良いのは十分わかるし、DVDなどで鑑賞するより、実際の舞台を体験した方が、見せ所聴かせ所がより明快で、ずっと楽しめた。はっきり言って、一昨日の「魔笛」よりも数段よいパフォーマンスであった。

 とにかく、最初から最後まで享楽的、ドタバタしまくって、ブワーっと終わる。そこに何も含みも裏もなく、徹頭徹尾楽しんでしまおうという感じだ。タラッタラッタラッタラッター、タラタタラタタラタタラッター、タラタタラタタラタタラタタラッター、ブンチャブンチャブンチャブンチャ.....。ベートーヴェン以後のクラシック界が「ゲイジュツ」しまくって、やたら堅苦しく、小難しくなっていったのに比べて、ロッシーニの徹底的な「ノー天気」さは逆にすごいなー。いやいやすごいよ。それにテクニック的にもむずかしい曲ばかりだったし、全曲にわたってクレッシェンドをやたらかけていくのが、おもしろくてたまらなかった。「やれやれ!いけいけ!」って感じで盛り上がっちゃったのだ。

 私の大好きな映画監督のフェリーニが(彼もイタリア人だわな。)「私という人間は『セビリアの理髪師』の序曲のようなもの。」って自らをインタビューで語っていたのを思い出して妙に納得した。そう言えば、ニーノ・ロータの音楽もフェリーニの映画の時だけ特別な感じだからなぁ。ベースにロッシーニがいるのかなぁ。うーむ、イタリア人っておもろい。それでいて、サッカーはあんなにセコイ試合して喜んでるしなぁ。ほんと、不思議。

 さて、今日のウィーン・フィルはめっちゃくちゃうまかった! ノリもご機嫌で踊りだしたくなるような素晴らしい演奏だった。歌手ではドン・バジリオ役のフェルッチョ・フルラネットが最高だった。彼もイタリア人で、かつてはカラヤン指揮の「ドン・ジョバンニ」などモーツァルトもので大活躍していたし、もちろんイタリアものでも素晴らしいまさに一流のバス歌手で、5,6年前にやった「フィガロの結婚」のフィガロ役は、私にとってもっとも理想的なフィガロであったと確信している。その彼の生の唄を聴けたのは、大変幸せなことだったし、一生の思い出になることだろう。

 ところで、今日は演目のせいもあるだろうが、お客もイタリア人が多かったな。あちらこちらでイタリア語が聞こえたし、「Bravo!!」の声も凄まじかった。とにかく人生を楽しむことをよくわかってるのかな、彼らは。今夜は「Viva,Italia!」でした。
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by harukko45 | 2005-01-08 00:00 | 旅行

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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