大橋純子/クラブサーキット2010詳細(1)
2010年 08月 15日
2007年から昨年までは、どちらかと言えば2枚のカヴァー・アルバム「Terra」「Terra2」からの曲を中心にしたセットでしたが、そろそろ何か変化を求めたい気分がジュンコさん側にあり、「オープニングからノリのいい曲をつなげて、メドレー風に攻めていっては?」というプロデューサー佐藤健さんの提案でした。
バンドメンバーも揃ってのミーティングで、その提案にすぐ反応したのがベースの六川さんで、彼は「直感とノリ」が売りなだけに、結構ピタっと来る答えをすぐに見つけるんです。
で、「昔やってたバンドのレパートリーで、オープニングにバッチリの曲がある」と強力アピール。そのバンドとはギターの土屋さんも加わっていたもので、やっていたのは"ベイエリア・ファンクの雄"Tower Of Powerの曲だと言う事。
しかし、曲のタイトルもわからないし音源もない。この辺が直感派の典型?
ということで、どちらかと言えば実務派になるであろう私が、ロクさんとオッサンの情報を元にネット検索。残念ながらTower Of Powerのオリジナル・アルバムには収録されていない曲らしいので、その後どういう検索をするかがまさに「センス」として重要でしてね。
まぁ、どうでもいい事でしたが、とにかくその曲はソウル・シンガーの吉田英樹さんのブログ「吉田英樹の音楽コラム」に紹介されていて、音まで聞けるのでした。(1972年「Lights Out:San Francisco〜Bay Area FUNK #3」に収録)くわしい事は是非、吉田さんのブログで見ていただきたいと思いますが、その"Loves To Do It"はまさにTower Of Powerのユニークなグルーヴ満載でチョーカッコイイ。これで、オープニングはキマリ!そんな気分でした。
ただし、実際にやってみると、やはりかなり凝っていた。8分と16分のシンコペーションが入り組んだファンキーなリフは印象的ですが、これをグルーヴィに聞かせなきゃダメだし、サブドミナントに展開する部分ではビートが裏表にひっくり返るようになっていて、変拍子のようにも聞こえる。譜面に書いてみれば、なるほどちゃんと考えられている構造なんだけど、それを体得するのには練習が必要。でも、バンドとしては燃えますし、楽しい。正直、ここ数年のライブでは味わっていないワクワク感がありました。
さて、オープニングはメドレーにしようというアイデアにそって、いろいろな曲が候補に上がりましたが、「ソウルの女王」「レディ・ソウル」ことAretha Franklinの"Chain Of Fools"はソウル・クラシックとしても超有名曲であるし、ジュンコさんがアマチュア時代にも歌っていた経験があるということで決定。Don Covayの曲ですが、まさに全盛期のアレサとそのバンド、アトランティック・レコードの製作陣、ミキサーのトム・ダウドと、言う事なしの大傑作ですな。
そして、Stevie Wonderの"My Cherie Amor"もあまりにも有名な大傑作。甘くて切ないメロディ、考え抜かれていておシャレなコード使いとアレンジ。「これ以上、何を望もうか?」
スティービー自身は、この曲以後の傑作アルバム群が何と言っても圧巻なわけですが、今回はちょっと前の時期の大ヒット曲をチョイス。諸先輩の言う通り、確かに、この時期のリラックスしたスティービーは今聞くと新鮮に感じます。
ちなみに"Chain Of Fools"1967年、"My Cheris Amor"は1969年のヒットで、厳密には70年代の音楽ではないですが、60年代後半から70年代前半までがソウル/ファンク・ミュージックの黄金期であることは間違いないし、70年代後半はファンクよりもディスコ、AORへシフトしていき、ストリートではHip-Hopへと移って行くわけで、この時期(60年代後半~70年代前半)をひとまとめにするのは自然だったと思います。
さて、このメドレーを洋楽もので固めるのも良かったでしょうが、ここにジュンコさんのオリジナルを入れて、ちょっとした意味合いをつけたいというのもとても共感できました。で、ジュンコさんが久々に聞いた自らのデビュー曲が、今の時代感覚に合っている気がするとのことでした。
なるほど、なかにし礼さんの歌詞と井上大輔さんのメロディの強烈さ、そして萩田光雄さんのアレンジがこの当時(74年頃)のソウル・ミュージックのニュアンスをうまく取り入れているではありませんか。これなら、スムースにメドレーの中に組み込めそうでした。
m1.メドレー:Loves To Do It~Chain Of Fools~My Cherie Amor~鍵はかえして
もちろん他にも候補曲はありましたが、最終的にはケンさん&ジュンコさんが4曲を決定して、リハにのぞみました。メドレー全体の流れは最初から変わりませんでしたが、曲のつなぎやテンポ・グルーヴ感についてはいろいろとトライしましたし、ラストの"鍵はかえして"が今っぽくキマるように少しアレンジの変更もありました。
で、最後にケンさんから「4曲をすべて同じテンポでやってみよう」とのアイデアで、このメドレーはすべてOKになりました。具体的には"My Cherie Amor"は少し早くして、"鍵はかえして"でもノリを止めないようにする感じです。
実際のステージでは、突然のギターリフからの始まりにお客さん達は意表をつかれた感じでしたが、じょじょにノリだしてくれる方々も多かった。アレサの曲はまだ取っ付きにくくても、"My Cherie Amor"あたりでは一緒に口ずさんでいる様子もあり、とどめの"鍵はかえして"では、昔からのファンの方は拍手喝采、初めて聞く方は「ほほー、これがデビューだったのか!」というリアクションと言えるでしょうか。そういった反応も各会場面白かったですが、何より我々ステージ側が心から楽しめていたことは確か。それで、いつも以上にリラックスした入り方が出来たのも良かったと思います。
調子に乗って長くなったので、(2)へ続く。