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浅田真央の「鐘」

 ちょっとしつこいのだが、世界フィギュアが終わっても「鐘」が頭の中で鳴り続けているし、他の事をやる気がわいてこないので、再びブログに書いてしまう。

 正直、私は今でもバンクーバーの時の「鐘」が好きだし、キム選手の得点に会場が騒然となっている直後からの浅田選手の姿、そしてその演技を生涯忘れないだろうと思う。
 冒頭の恐ろしい表情(さすがの浅田もこの時にしかできなかった)から2回の3アクセル、美しくスピードのあるシットスピン、誰にもできないゴージャスなスパイラル(この時の厳しい浅田の表情も凄い)の素晴らしさは、見ているこちらが呼吸をするのがはばかれるほどであり、心底彼女の動き一つ一つに魅了された。そして、特筆すべきは音楽との完全なる一体感だ。ラフマニノフが美しい、ものすごく悪魔的で荘厳だった。キムのガーシュインとは次元が違ったと思う。

 だが、3フリップからの3連続ジャンプでのミス、続けてエッジが氷に引っ掛かってしまい3ジャンプが飛べなかったミスで、一瞬現実に引き戻されたが、その後の立て直しが彼女を超一流の天才アスリート足らしめる凄さだ。2アクセルからツイグル、ステップ・シークエンスと彼女には全く休む暇はない。で、この時のステップには涙した。その気迫と技術の高さに感動したし、今思い出してもゾクっとする。
 そして、音楽との一体感を取り戻した浅田は完璧なビールマン・スピンの後、ピタリとエンディングを決めた。その時の彼女はパーフェクトでなかったことで、自らを責めていたのかもしれない。だが、その悲しげな表情さえも曲が持つ深淵さを見つめるように感じられる。

 もちろん、これらの感想は私がその後もバンクーバーでのパフォーマンスを見返しているうちに、じょじょに思いが大きく膨らんでいることはある。だから、あのミス2回の部分でさえ、スポーツ的には否定されても、アートとしては「悲劇」「試練」の表現として成立しているし、そこからの復活のドラマがより感動的なのだった。

 そして1ヶ月後。世界フィギュアにて、彼女はノーミスで滑りきり、自らを乗り越えた。アスリートとしての浅田が「鐘」の完成形を提出して決着をつけた。すごい精神力だと思うし、優勝はうれしい。だが、スケート的にはトリノは完璧(DGがなんだ、ミスはしてない)だったが、アートとしてはバンクーバーの方がほんの少し上回る。これは、音楽の分野でもよくあることだ。技術的に未完成であっても、聴く人の感動が大きいことは存在するのだ。

 このプログラムを組んだタラソワという人も凄い。特に強く感じた事は、この曲とプログラムは「これまでのフィギュア」じゃない、ってこと。フランスの放送では「この曲の重さがマオの体を潰してしまうのです」とコメントしていた。だが、それこそがタラソワとマオの挑戦だったに違いない。
 
 さて、福山知佐子さんという画家の方のブログに、素晴らしい浅田「鐘」論がアップされているので、リンクしておきます。
浅田真央「鐘」身体芸術 アスリート(世界フィギュア後の3月26、28、29日編)と、
浅田真央 身体芸術 アスリート(オリンピックでの2月28日編)があります。

 これでも見て少しスッキリしましょう。ニコニコ動画へのリンクです。EuroSportsでイギリス人解説者が大絶賛、そして実に全うな意見を連発。


 信じ難い事に日本のテレビ、解説者達が絶対にやらない(言えない?)放送です。本当に情けない。(他のコメントが気になる場合は、右下のコメントoffをクリックしてください)
 
 もう一つはアメリカの放送で、長野の金メダリスト、タラ・リピンスキーが解説しています。こちらも納得のクリーン解説。世界のメディアは当然のことを発信しているのに、自国ではそれがないなんて。くだらない。


Commented by 佐助 at 2010-04-03 22:34 x
なかなか周囲にフィギュアについて熱く語れる人がいない為、
やや興奮しながら
和田さんのブログを拝見し、激しく共感しております…

私も海外と日本での浅田(真)選手への評価の差に毎度溜息です
YouTubeやネット中継(私もRadio Canadaで生観戦していました)が見られる現在ではそれが悲しくなる位感じられます
あの???だらけのジャッジ等を見ると、
一体何を信用したら良いのかわからなくなり、興ざめです
最近では「信じられるのは浅田(真)選手の演技だけだからDGされようが、点数なんてどうでもいい」とさえ思っています
でもこれでは「日本潰し」と言われてもおかしくない今のルールやジャッジは変わらないのでしょうし、
なんといっても当の選手が気の毒過ぎます…

ルール改正を申請したようですが、果たしてどうなることやら…
Commented by harukko45 at 2010-04-05 19:04
佐助さん、お久しぶりです。確か、前回書き込みいただいたのが、シーズン初戦でしたよね。思えばいろいろあった09/10シーズンでしたね。
今後もまだまだアヤシげな気配がプンプンしてますが、いろいろとその正体も明らかになりつつあるようですし、ネット上での熱い動きもかなり活発ですから、今後の成り行きにけっこう期待しているのでした。また、よろしくです。ありがとうございました。
Commented by ヤマケン at 2010-04-10 03:51 x
バンマス、ご無沙汰。そろそろクラブサーキットの日程もオープンになる頃でしょうか?今年もよろしくかまして下さいね、よろしくです。

さて、フィギュアにはまったく興味がない私ですが、カミサンが真央ちゃん真央ちゃんと言っているので、ぼやきには大変にお世話になりました。というのも先日の世界フィギュアの中継放送がほとんどなかったためにカミサンのご機嫌が完全に斜めってたので、ぼやき経由で動画を見せて、一難去ったという感じでしたので。
それにしてもひどい実態なんですね。もともとフィギュアではシューズにカミソリが入れられるのはしょっちゅうとか、昔から悪い体質のことばかりが伝わってきていて、私は好きになれないんですよ、オリンピックの織田くんの靴紐の件だって、なんだか胡散臭くて。
でも選手は本当に一生懸命やっている。で、自分の心の中でそのへんのことが整理できないので、私には見られないんです・・・。
Commented by harukko45 at 2010-04-14 16:02
ヤマケンさん、どうもこんにちは。クラブサーキットについてはそろそろ公式発表がされると思いますので、こちらこそどうぞよろしくです。

 フィギュアについては、いろいろ裏の世界の話が確かに多いようです。その辺が人気スポーツの宿命とも言えるのでしょう。
 ところで、私は今再び20年近く前の伊藤みどり選手の映像をYouTubeやニコニコ動画で見直して、あらためてブっ飛んでます。
 アメリカの解説者スコット・ハミルトンが「こんな選手は50年間かかっても現れない!」ってしゃべってたりして、かなりの興奮ものでした。彼女は本当の大天才でした。
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by harukko45 | 2010-03-29 20:50 | スポーツ | Comments(4)

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる


by harukko45