NFLスーパーボウル/ニューオリンズ31-17インディアナポリス
2010年 02月 08日
大方の予想では、普通に考えればインディアナポリス・コルツの方が上で、彼らが勝つ(大差での勝利)と言われていたし、私もニューオリンズに勝って欲しいと思いつつも、冷静に見比べれば、経験もあり試合巧者でもある天才QBマニング率いるインディアナポリスが、クールに勝利してしまうのではと考えていた。
それに、強力オフェンス同士の対決というのが注目されればされるほど、実際の試合ではディフェンシブな内容になる可能性が高いのでは、とも思っていた。
で、そんな考えが当たってしまい、前半6-10というロースコアで終了するとは、やはりちょっと驚きであった。これはある意味、インディアナポリス優位の展開だったと言える。ケガで出場を危ぶまれていたコルツ・ディフェンスのキーマン、DEのフリーニーが序盤からガンガンに動き回り、セインツQBのブリーズにプレッシャーをかけ続けたために、ニューオリンズのオフェンスはほとんど機能しなかったからだ。
その間に、コルツ・オフェンスはFGと96ヤードのTDドライブを決めて、あっけなく第1Qで10点を先取したわけで、プレイオフ2試合でワーナーとファーヴを粉砕してきたセインツ・ディフェンスではあっても、いまやNFL現役で最高のQBと言えるマニングには全く効かないかと思われた。
それほどまでに、マニングのプレイぶりはクールで実にスマートに映った。
よって、このままニューオリンズの攻撃を封じ込みながら、マニングがいつものようにゲーム・コントロールしていけば、それほどリスキーな攻撃を展開しなくても勝利を手にするというストーリーが容易に目に浮かぶのだった。
第2Qに入り、残り9分半にニューオリンズがようやくFGで3点を返したあたりから、セインツ・オフェンスにも勢いが感じられ始めた。初めてのスーパーボウルでの緊張からじょじょに解放されてきたこともあるだろう。しかし、前半残り2分エンドゾーンに1ヤードと迫りながら、4thダウンギャンブルに失敗した時には、インディアナポリスの底力を感じたし、同点に追いついてモメンタムを引き寄せたいという、ニューオリンズ側の焦りを感じさせるギャンブル・コールだった。
ところがところが、この直後のコルツの攻撃は、とにかく時間を費やして3-10で前半を終了させなくてはいけなかったのに、簡単に攻撃権を相手に渡してしまったのだ。その残った50秒をセインツがうまく生かした。残り5秒でFGを決めて、一度失った3点を何とか取り返したからだ。これは大きなターニング・ポイントとなった気がする。
インディアナポリス側にある種の油断があったように感じるのだ。この前半最後の攻撃失敗でパントになった時のマニングが不満そうに首を振っていたのが印象的だった。彼は何かしらの危機感を抱いたに違いない。
そして、後半。ハーフタイムにニューオリンズ側でペイトン・ヘッドコーチがどのようなゲキを飛ばしたのかはわからないが、セインツは見違えるような状態に変貌していたのだった。
まずは、最初のキックオフでのオンサイド・キックに驚かなかった人はいないだろう。後半開始6-10のスコアで、そんな奇襲を予測したものはいるわけがなく、これが見事に成功。そして、一気にTDに結びつけて逆転に成功した。何と言うコール!ニューオリンズ・ベンチの果敢な決断には脱帽だろう。
だが、コルツは直後のシリーズであっけなくTDを決めて再逆転。すぐにセインツもFGを返して16-17に。ニューオリンズの華麗で多彩な攻撃が気持ちよく決まり始めたし、コルツ側もマニングのオフェンス・コントロールぶりが見事で、当初言われていた「点の取り合い」の様相となり、全く目の離せない状況だった。
そしてあっという間に迎えた第4Q。ここまで時間の経つのが早かったこと。
試合のモメンタムは一気にニューオリンズへ流れた。コルツは51ヤードのFGを失敗しリードを広げられず、頼みのディフェンスにもかげりが見え始めた。やはりケガを抱えたフリーニーは後半に入り格段にパフォーマンスが落ち、それはディフェンス陣全体の不調につながり、セインツ・オフェンスが楽に前進できるようになったからだ。
そして残り5分半、ブリーズからTEショッキーへのTDパスが成功、再々逆転。2ポイント・コンバージョンを挑み、一度は失敗の判定がチャレンジして成功に転じて、スコアは24-17に。
だが、残り時間とマニングのポテンシャルを考えれば、まだまだコルツにも可能性はあった。ところが残り3分半、それまで両チームともにターンオーバーがない実にしまったゲーム展開であったのに、この試合初のインターセプトをマニングが喫してしまう。これは、QBよりもWRのウェインのミスにも思えるが、とにかくこのあまりにも大きなミスはそのままセインツのリターンTDとなった。
これでほぼニューオリンズの勝利は確実なのだが、それでもまだ残り2分でのマニングの「ザ・ミラクル」があるやも知れない。そんなスリリングな期待を少しは抱いたものの、残り1分での4thダウン・ギャンブルが失敗で万事休す。多くの人の予想をまんまと覆して、ニューオリンズ・セインツが悲願のスーパーボウル初制覇でありました。
"Who dat? Who dat? Who dat say dey gunna beat them Saints?"
いやぁ、インディアナポリスの強さ、マニングの凄さを評価しつつも、ニューオリンズの勝利を願っていただけに私としては満足です。
MVPは、パス39回中32回成功(スーパーボウルタイ記録)、288ヤードを獲得したQBのドリュー・ブリーズで当然。インターセプトがゼロだったのも素晴らしい。
加えて、コルストン(レシーブ7回83ヤード)、ヘンダーソン(レシーブ7回63ヤード)の両ワイドレシーバーも大活躍。キッカーのハートリーが40ヤード以上のFGを3本全て成功させたのも立派。
インディアナポリスはQBペイトン・マニングがパス45回中31回成功、333ヤード、1TD、1INT。RBジョセフ・アダイもラン13回77ヤード、1TDで合計432ヤード獲得でバランスの良いオフェンスだったにもかかわらず、前半終了間際と第4Qの勝負どころで、詰めを誤ったのが痛かった。マニングのインターセプトによるTD献上とディフェンスではフリーニーのケガによる不調が大きな誤算だった。
さて、というわけでNFLはシーズン終了。今シーズンも実に楽しませてもらいました。毎年毎年、ファンを失望させない素晴らしいNFLにはどれほどの賛辞を贈っても足りないくらいです。
おっと、ハーフタイム・ショウでのThe Whoのパフォーマンス。ものすごく、ものすごく期待して楽しみにしていたのに、音声と映像がとんでもなくズレズレで散々なオンエアになってしまった。再放送ではちゃんと調整してくれるのだろうか?これは現地テレビのミスらしいが。
試合内容が良かっただけに、これは残念でありました。