ジョン・レノン・スーパーライヴ2009の詳細(8)

詳細(7)からの続き

 吉井和哉さんを迎えて

e0093608_532089.jpg 今回、吉井さんは全曲ギターを弾きながら歌うということだった。曲はこれまで何回かやっている曲が含まれるものの、サウンド面では多少変化があった。
 "I'm Losing You"は吉井さんの定番曲となっているもの。私も2005、2007年の時に演奏しているが、今年は吉井さんのギターが加わって、豪華なトリプル・ギター・サウンドとなった。
 また、キーを3曲とも半音下げたので、これまでよりも全体に野太い感じになった。特にこの曲の場合、男っぽさが強調されたブルーズとして仕上がったように思う。

 しかし、これはある意味ウォームアップ曲だったと言ってしまおう。次の"Yer Blues"がやはり今回の目玉として強力だったからだ。

e0093608_5171762.jpg 1968年のホワイト・アルバムに収録された"Yer Blues"。この当時のイギリスではブルーズ・ムーブメントが起きていて、誰も彼もがブルーズをやり始めていた。ジョンはその「猫も杓子もブルーズ・メン」状況をおちょくって書いたのがこの曲だと発言している。

 また、「インドのきれいな景色のなかで書いた曲なのに、世界で一番みじめな曲ができた」「神に近づこうとして自殺でもしかねない気分を歌った」とも語っている。
 "I'm So Tired"と共通する、マハリシのもとでの修行生活の辛さからくる心情の吐露と言えるが、先の「疲れた」から、こちらでは「寂しくて死にたい」とまで歌っているので、症状はかなり深刻だ。
 
 だが、ブルーズの締めでは「If I ain't dead already, Ooh Girl, you know the reason why? (もし僕がまだ死んでいないとしたら、君はその理由を知ってるだろう?)と歌い、これはヨーコに対して「僕がまだ死なずにいるのは君がいるからだ」と告白しているのだ。なるほど、押葉くん流に言えば「これ以上ない殺し文句」であり、ヨーコだけが自分を救ってくれるという意味になるのだろう。

e0093608_6155791.jpg
 そして、もう一つ解明しておきたいことは、「今すぐ自殺したい気分だ。ディランのミスター・ジョーンズみたいにさ。」の歌詞で、このMr.Jonesはボブ・ディランの「やせっぽちのバラード("Ballad Of A Thin Man")」に登場する人物で、ディランの詞では「ここで何かが起きてるのに、あなたは何なのか知らないんだから。そうでしょう? ジョーンズさん」となっている。

 歌詞の部分ではかなり落ち込んだ内容であるが、実際にレコーディングされたサウンドはワイルドでありながら、ビートルズの一体感が感じられるご機嫌な仕上がりだ。ジョンの「肩が触れ合うような距離で演奏する方が音楽のパワーが増す」との言葉通り、スタジオ脇の小さな部屋に4人が一緒に入ってレコーディングされたのだそうだ。
 また、一応ブルーズ進行ではあるが、やはりそれだけでは我慢できないジョンは、いかにも彼らしいワナやら仕掛けをほどこしていて全く飽きさせない。譜面として書くと、いろんなところに変拍子が入ってくるし、8分の12ビートから4分の4のシャッフルに変化するあたりのアレンジは、かなりクールでしびれるのだった。
 
e0093608_646462.jpg だだ今回、吉井さんはローリング・ストーンズが中心になって収録されたTVショウ「ロックンロール・サーカス」に出演した時の、ジョン・レノンのスペシャル・バンド「Dirty Mac」(ジョン、エリック・クラプトン、キース・リチャーズ、ミッチ・ミッチェル)によるバージョンをベースにしたいとのことで、オリジナル・スタジオ・テイクよりもテンポ・アップしてやることにした。
 確かに、ライブでやる場合は、この方がヘビーになりすぎずに良かったと思う。吉井さんには「このぐらいでやった方が、お客さんには聞きやすいはず」との配慮があったのだ。

 そして、何より良かったのが、吉井さんが自らの日本語訳詞で歌ったことだ。当日ぎりぎりまで英語にするか日本語にするか悩んでいたようだが、当日のリハで合わせてみたところ、日本語でのインパクトが強烈だったので、文句なくそちらに決まった。おかげで、かなりリアリティのある吉井"Yer Blues"が完成したのだった。

 さて、3曲目で本編ラストは"Help!"。もちろん、バラード・バージョンである。今回は彼がギターを弾いたので、これまでピアノでやっていた部分を吉井さんの弾き語り風に変更した。ある意味、これはこれでファンにはたまらないシーンだったかもしれない。
 この曲に関しては、すでに2007/2008年の時に、いろいろ書いてきたので、何も付け加えることはない。もはや吉井"Help!"として完全に確立されたオリジナルと言って良いだろう。
 我々もこの曲をやると、本編最後のクライマックスと感じるようになっていて、「ついに今年もここまで来たか」と思うのだった。
詳細(9)へ続く
[PR]
by harukko45 | 2009-12-31 06:55 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31