ジョン・レノン・スーパーライヴ2009の詳細(5)

詳細(4)からの続き

 奥田民生さんを迎えて

 奥田さんは2003年のスーパーライヴの時に"Rain"をカヴァーし、その「通ぶり」を示したが、今回もそれに負けないマニアックな選曲をしてきた。
e0093608_17254032.jpg 1968年の「The Beatles(White Album)」に収録された"I'm So Tired"。ジョンがもっとも好きな作品の一つであると言う曲。
 インド滞在中に書かれており、その時のマハリシ・ヨギとのインド生活がよっぽどひどかったのだろう。とにかく「疲れ果てた、疲れ果てた」と連発していて、その率直な心情にけだるいサウンドがピッタリとはまっている。

 だが、さすがジョン・レノンはただただ「疲れた」とダラダラするのでなく、ちゃんと聴き手の期待に応えるサビを作ってくれた。「You'd say I'm putting you on.」からのくだりは、今聞くとニルヴァーナの"Smells Like Teen Spirit"あたりにまで通じるような、何ともやりきれない感覚や自暴自棄的な危険さを内包しているようにも思う。
 そして、「僕が持ってるものは全てあげるから、わずかな心のやすらぎを与えておくれ」とシャウトしてカットアウト。「切れかかった」何かは一瞬の爆発後に、再び「けだるさ」に戻ってしまう。

 もちろん、時代背景やアーティストとして熟成度も違うから、簡単にジョンとカート・コバーンに共通点を見いだそうとしても、あまり意味がないだろうが、「ゆるさ、だるさ」から急激に「尖って」「爆発する」ロック特有のスタイルは確かに存在する。そして、ツェッペリンやピンク・フロイドのような音楽的に高度で難しい表現ではなく、技術的には簡単に出来て、なおかつカッコイイことが重要だ。「これなら、俺にも出来る」的感覚が多くの若者に刺激を与えるのだ。

 奥田さんは「ゆるさ」が魅力だけに、この手の表現は最高にキマる。それでいて、彼は破壊的な音にはけっしてならない。どこかに、こちらをホっとさせるリラックス感を持ち合わせているので、長く楽しめる。演奏時間は2分程度だが、中身は濃い。

e0093608_18341334.jpg 2曲目はもっと短い曲。ビートルズの歴史の最終章を飾る傑作「Abbey Road」、そのB面に配置されたあまりにも素晴らしいメドレーに含まれていた"Polythene Pam"。
 正直言って、"You Never Give Me Your Money"から"The End"までのメドレーは本当に素晴らしいので、その一部を切りはずしたり、カットしたりするのはかなり強引だし、なかなかうまくいかない。ポールが1990年に来日した時に、ジョンの曲を外してメドレーの後半を演奏したが、確かにライブでアビーロードを聞けたことはうれしかったものの、やはりちゃんと全てを再現できていない不満が残った。

 そもそも、このメドレーの制作はテープ編集によるようなものではなく、録音前にきっちり考え抜かれて構成させていたようで(一部、"Mean Mr. Mustard"と"Polythene Pam"の間にあった"Her Majesty"は後日カットされたとのこと)、実際のレコーディングでも続けて演奏されたのだった。だから、どうやったって"Polythene Pam"は1分13秒で終わりなのである。

 というわけで、私としてはいくらなんでも1分そこそこで終わらすわけにはいかないので、奥田さんが来る前にいろいろとアレンジをしてはバンドでためしてもらったのだが、どうもしっくりこない。なので、半ば放り投げた状態で、奥田さんを迎えてから相談しようと思った。
 が、何の事はない、奥田さんは来て、バァーと歌って、グワァーとギターを弾きまくって、再びギャーと歌って帰ってしまった。「あんまり頭で考えすぎないで、とにかくプレイしましょうよ」って感じ。
 ほんと、そうだった。自分がコチョコチョと小さな視点で曲を捉えすぎていたことに、ハっと気づいた。たとえ荒くてもいい、何か力強いものをシンプルにやりたい。
 だから、何も決めなくても皆でセッションするうちに、自然に始まり自然に終わったのだった。この時のセッションの後、どんなに気持ちがすっきりしたことか。

 さて、とは言えその後、何かとしつこい私は、このシンプルにやり切る"Polythene Pam"の良さを生かしつつも、もう一味付け加えたい気持ちになった。それは、オリジナルでもダビングされていたギターソロで聞かれるパーカッションの存在だ。たぶん、クラベスとタンバリンにシェーカーってあたりだろうが、よりライブ的に強調する意味で古田くんとも相談した結果、ジャンベをローディの佐藤君に叩いてもらう事した。加えて、タンバリンを同じく楽器担当の重鎮、小竹さんに頼み、私もクラベスで参加することに。
e0093608_215045100.jpge0093608_21505623.jpge0093608_2151739.jpg イメージとしてはローリング・ストーンズの"Sympathy For The Devil"、ザ・フーの"Magic Bus"、スペンサー・デイビス・グループの"I'm A Man"のリズム。私個人は"Magic Bus"でのキース・ムーンのクラベスめちゃくちゃ打ちをやりたかったのだ!
 これは、すごく良かった。音楽的にも気分的にも盛り上がって、オリジナルよりも倍以上の時間を確保しつつも飽きない内容になったと思う。

 ここまで書いて、昨年のスーパーライヴに出演して、素晴らしいパフォーマンスを観せてくれたフジファブリックの志村正彦さんが亡くなったことを知った。29歳での急逝はあまりにも早く、驚きとしか言いようがない。志村さんが奥田民生さんをリスペクトしていたことも知られている。とにかく、心よりご冥福をお祈りしたい。

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by harukko45 | 2009-12-30 19:31 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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