安倍なつみ夏ツアー2009を振り返る(3)

 前回からの続きで、セットメニューの後半戦です。

m9.くちびるで止めて

 この曲もオープニング同様に、最初に本田プロデューサーにイメージがありました。DVDになっている映像で、コンガがリズムを繰り出して、会場から手拍子がわき起こり、そこになっちが登場するというものがあり、それを参考にしました。
 前のバンドの譜面をそのまま使用したので、基本的なアレンジは変わらずだが、東京とファイナルではサックスの後藤さんが登場したので、さっそく徳武さんのギターに続いてソロをお願いした。サンバ・フュージョン風のリズムとともに「夏っぽい」雰囲気が倍増された感じでした。
 この曲は演奏自体はさして問題なく仕上がったのですが、サビを歌うのに息つぎができない作りになっていて、その箇所のみ私とツルさんが歌うことになった。音が高いので、なかなかうまくはまらないこともあったけど、まぁ良しでしょう。アサミちゃんが最後に登場したので、我々は解放されるかと思ったら、「是非にやってほしい」とのことで、そのままになりました。やれやれ。

m10.だって生きてかなくちゃ〜m11.ザ・ストレス〜m12.OLの事情

 当初はメドレー風にするつもりはなかったのだが、打ち込みを使うのなら一つにまとめてもらった方が作りやすいので、自然とこのような流れに。ただ、順番は"OL"が先で"ストレス"が後だった。だが、これでは昨年のメドレーに似てしまうのと、Angelicのメドレーでは"OL"をあまりフィーチャア出来なかったので、今回はトリを取ってもらうことした。テンポ的にもどんどん早くなっていく順番になり、盛り上げムードも高まる。
 で、これなどはずいぶんと「カラオケ的」との感想を持たれる人もいたようだが、CDからの音源は一切使わずに全て一から作ったリズム・トラックであり、極めてジャストであまりノリのないCD版の打ち込みよりも、数段グルーヴィな仕上がりになったと感じていただけに、ツアー最初の時期はひどくガッカリしていた。
 が、数を重ねるうちに会場のはち切れ方が凄くなり、なっちご本人も相当ヒートアップしている姿が見て取れて、もういろいろ考えるのはやめてパフォーマンスに集中することにした。

 照明スタッフもこの音に合わせてプログラミングしてくれていて、最後の2公演で生に差し替える時に細かい部分に違いが出るのは良くないと考えた。なので、打ち込みのサウンドは減らしたもののドラムの濱田君にはクリックを聞いてもらい、リズム・トラックと同期しながら叩いてもらったのだった。

 それにしても、何度やっても"OL"は燃えたなぁ。イントロでなっちが激しく踊り始めるところがとにかくカッコよかった。

m13.さよならさえ言えぬまま〜m14.夕暮れ作戦会議〜m15.大人へのエレベーター

 ここもステージ側から見るとひと固まりのパッケージ。
 
 m13はCDではかなりプッシュするロック・サウンドだったが、3人編成上、意識的に日本的フォークソングの雰囲気でやることにした。だが、これが実にピタっとはまって、正直こちらの方が曲の良さが出るのではないかと思ったほどだ。
 徳武さんが南こうせつさんのバックをやっていた時のようなアコギのアルペジオ、ツルさんがこれまたグレープかと思うようなヴァイオリンで「泣き」のフレーズ連発で、これだけでも相当哀愁があったのだが、東京では後藤さんのソプラノ・サックスがまるでオーボエのように美しかったし、ファイナルではストリングスも加わってすごく豊かなハーモニーになった。これはとても満足しております。

 m14は基本的にはロックなのだが、同時にかわいらしくも内面的で微妙な詞の世界があり、なかなか面白い。なっちはツアー全般にわたって、会場を煽るように歌って盛り上げて来たが、ファイナルを前に、詞にこだわってクールに歌ってみたいと話してくれた。それならば、フルサイズできちっとやった方がいい、ということになり、河口湖のみフルサイズで演奏した。
 これはすごく良かった。最後の最後ですごく深みのある"夕暮れ"が表現できたように思う。ボーカルのクールで繊細な表現と徳武さんのハードなエレキ・ギターが絶妙のコントラストを作っていたと思う。

 で、m15はもうイケイケ。打ち込みだろうと生だろうとあまり関係ない。個人的には激燃え状態だったのは東松山から河口湖までずっと一貫しておりました。この場合、私はブルース・スプリングスティーンの曲をやっているような感覚になるので、常にハイテンションでした。ただし、後藤さんのサックスはやはりスペシャルなシーンを作ってくれました。うー、さすがテルオちゃんです。

En1.あなた色〜En2.恋にジェラシー申し上げます〜En3.空 Life Goes On

 En1は打ち込みでもかなりラテンのおいしい雰囲気が出せたと思いますが、生になった時に逆に難しかったですね。アサミちゃんが意識しすぎて少し悩んでましたが、きびしくもやさしいドラムの濱田くんの叱咤激励もあり、よく頑張っておりましたし、後藤さんにもアフリカン・ドラムで加わってもらいリズム強化になりました。
 またその一方で、ヴァイオリンのツルさんは実にかっこよく颯爽とソロを決めてくれました。これは通常メニューの時から素晴らしかったので、ファイナルでも十二分にフィーチャアできるようにストリングスの譜面を書きました。

 En2はある意味今回のツアーの隠れテーマ曲とも言える、なっちにとってのこだわりの1曲。等身大の自分とか、素直に良いものは良いと言える自分というものを象徴しているのでしょう。だから、今回は"愛しき人"を外していたのかもしれない。

 そしてこのツアー全体を通じて、なっち自身がすごく成長している姿を明らかに示してくれたのが、En3での歌。これは元々劇的な曲だが、ご本人の歌がそのスケールを越えるところまで来ていることが何度も実感できたのでした。もちろん、生リズムとストリングスを加えたゴージャスなバックでの"空"も良かったけど、私は3人だけでバックをつとめた福岡や浜松での彼女の歌が忘れられないのでした。

 河口湖でのみ演奏した2曲について

 "トウモロコシと空と風"はいかにもスペシャル・イベントにぴったりな内容で、やっている方も楽しかったですね。これはかつてのツアーでのバージョンをいろいろ参考にさせてもらいましたが、イントロでソウルっぽいアレンジを加えました。それは、この曲の元ネタがジャクソン・ファイブであり、今年マイケル・ジャクソンが亡くなったこともあり、ちょっとだけ彼らに敬意を表したい気持ちだったからでした。
 イントロがそれっぽい感じになったので、自然にその後もソウル風のニュアンスになっていきました。

 "愛しき人"はずっとやらずにおかれていたのですが、最後の最後で登場しました。これはけっこう確信犯的な「タメ」だったのではないかな?でも、その効果はやはり凄かったですね。こちらも感動させられるような瞬間でした。たぶん、この曲はCDよりもライブによって高められて来た楽曲なのではないでしょうか。今回だけでなく、どの時期のバンドのバージョンもCDオリジナルより優れていると思います。これこそ、ファンが育てた曲であると言えます。

 というわけで、ようやくツアーのまとめをすることができ、自分自身も大きな区切りをつけられた気分です。久しぶりに多くの場所を回れたツアーは、その内容も日に日によくなって、最後にはゴージャスで感動的なシーンを体験することが出来ましたし、何よりも無事に全てを終えられたことが一番喜ばしいことです。また次回ご縁があれば是非とも参加したいですが、それまでにもっともっと良いものを作れるように準備しておかなくては。
 
 改めて、ファンの皆さんとスタッフ、ミュージシャンの皆さん、そして安倍なつみさんに感謝の気持ちを送りたいと思います。
 
 それと、長々お読みくださった方々にもお礼を。


 
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by harukko45 | 2009-08-15 19:02 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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