
おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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安倍なつみ夏ツアー2009を振り返る(1)
河口湖ステラシアターでのコンサートが終わって早1週間になりますか。やはり、私は少々気が抜けた数日が続きました。その後次の仕事のリハがあり、ようやく気持ちが普段どおりに戻って来た感じです。
ということで、ここらで安倍なつみさんとの夏ツアー2009をまとめて振り返ってみたいと思います。いろいろ長くなるかもしれませんが、どうかご容赦のほどを。
で、今回のツアーは全14カ所24公演をこなしましたが、コンサートホールからライブハウスまで、ずいぶんいろんなシチュエーションで演奏しました。種々の条件が変わることで、ステージ側の感じも日々変わっていったので、同じセットメニューでありながらも、常に新鮮な気分で出来たのはとても良かったことでした。また、ギターの徳武さんとヴァイオリンのツルさんという、名手二人とともにずっと演奏できたことは私にとっても大きな刺激になったのでした。
そして、何よりなっちの成長ぶりは驚きでしょう。「三文オペラ」での経験やハロプロ卒業という意識の変化により、明らかにステージへの意気込みが昨年よりも強かったですし、それはメンバーが少なかったことで、彼女の思いが私にもよりダイレクトに感じられたのでした。
それと、長い時間を一緒に過ごすことで、スタッフも含め一つのファミリー的な感覚になっていったのが一番楽しかったことでした。
ただ、リハ直前の打ち合わせの時点では、その内容について自分の考えていたことと全く違う展開に驚いたし、少し落胆したこともありました。その前までの私は3人による完全なるアコースティック・セットを意識していたし、そこにこだわりを持ってやっていきたいと考えていました。ですが、それは完全に覆されてしまいました。
まず、プロデューサーの本田氏から提示されたのが、ファイナルの河口湖で弦カルを使うということでした。彼が今回最初に浮かんだイメージが、ストリングスを安倍さんの周りに配置して、彼女が歌う映像だったそうです。そこで、真っ先に選ばれたのが"微風"と"甘すぎた果実"。特に"甘カジ"に関しては、ストリングスが刻むビートを核にして聞かせたいとの要望でした。
ただし、これはあくまでファイナルでのことなので、そこまでの23公演では3人で演奏しなければならないわけです。これはちょっと見方をかえると、ファイナルでの絵が完成形ならば、それまでのコンサートはすべてマイナス3の内容ではないか、というふうになりかねない可能性もあった。
また、東京公演はアディショナル・ミュージシャンとして4人がすでに決まっていた。ドラム・べースはともかく、パーカッションとサックスまで加わるとなると、これまたそれまでの3人でのサウンドとはガラっと変わってしまうことが当然予想される。もちろん、実力あるミュージシャンが増えればスケールアップした演奏が期待できるものの、じゃ、それまでやってきた公演はどういう扱いになるのか。
セットメニューの後半、なっち自身の選曲はリズムが強調されたものが並んでいて、正直これを見せられた時は、3人(キーボード、ギター、ヴァイオリン)でやるのは相当厳しいと感じた。まして、ラスト2公演でリズム・セクションが入るなら、そのギャップはあまりにも大きい。
そこで、打ち込みでリズム・トラックを作ってほしい、とのことでした。これは大変なことになったと思った。すでにその時点でリハーサルまで1週間をきり、全部で11曲(その後「音霊」用に2曲追加)の打ち込みを仕上げるのは相当頑張らねばならない。
ただ、安倍さんからの「私の曲にはどうしてもリズムが必要」という話は納得できたし、その後に「聞いている人が飽きないように、何とかしたい」という思いも聞き、私はそれまでの完全なるアコ・サウンドによるアレンジを忘れ去り、すぐにコンピューターでの打ち込み作業に邁進したのでした。
とは言え、私の中にはまだわだかまりが残ったことは事実。どうしても、最後のスペシャル2公演ばかりに焦点がいって、数的にはぜんぜん多いセットの内容がおちてしまわないのか。当然言われる批判は「経費削減のためにミュージシャンを減らして、打ち込みを使った」だ。それが事実にしろ、そうでないにしろ、実際に制作に関わる者としては一番言われたくないことだし、その結果「出来が悪い」と評価をされるのは最も屈辱的であり、こちらの敗北でしかない。
結局、私としてはある程度時間がかかっても、少しでも精度の高い打ち込み作業をし、セット全体のバランスや3人のミュージシャンとの兼ね合いをしっかり配慮しなければいけないと自覚し、それまでのわだかまりを一切捨てた。そして、スペシャル公演以外のライブこそがちゃんとした評価されることを第一と考えたのだった。
実際にリハーサルが始まると、そういった私の思いをすぐに感じ取ってくれたのはミュージシャンの二人だった。彼らの柔軟で早い適応力のおかげで、あっという間にバックのサウンドは仕上がっていった。特に"息を重ねましょう"までの前半部分の流れは実によく、本田プロデューサーからもほめていただき、大いに自信を深めたし、最終的にストリングスが入っても大きな変更せずに表現できる状況が見えて来たのだった。
後半の盛り上がり系の曲では、サイズや構成を何度も調整して、じょじょに納得するものに固まっていった。この辺での安倍さんの直感はするどく、いろんなアイデアの提案があったのだ。
そうして、初日前の通しリハーサルで、なっち曰く「生と打ち込みのバランスが絶妙」となった。この頃にはメンバー、スタッフ双方とも「良い」「いける」という意識が強くなり、単なる「カラオケ・ショウ」や「ファイナルへのプリ・プロ」ではないという自負が私の中に強く生まれたのでした。
今思えば、打ち込みを使ってでもビートを効かせたサウンドを取り入れたいというなっちの意図は、コンサートをただ聴いていてほしいだけではなく、お客と一緒に盛り上がりたいということであり、アコースティックな小編成バンドによる企画への「ささやかなる(いや実際にはデカイ)抵抗」だったとも言えるか。
まだまだバラードだけの内容でしんみりしたくない、という挑戦にも感じる。
長いので、続く。
ということで、ここらで安倍なつみさんとの夏ツアー2009をまとめて振り返ってみたいと思います。いろいろ長くなるかもしれませんが、どうかご容赦のほどを。
で、今回のツアーは全14カ所24公演をこなしましたが、コンサートホールからライブハウスまで、ずいぶんいろんなシチュエーションで演奏しました。種々の条件が変わることで、ステージ側の感じも日々変わっていったので、同じセットメニューでありながらも、常に新鮮な気分で出来たのはとても良かったことでした。また、ギターの徳武さんとヴァイオリンのツルさんという、名手二人とともにずっと演奏できたことは私にとっても大きな刺激になったのでした。
そして、何よりなっちの成長ぶりは驚きでしょう。「三文オペラ」での経験やハロプロ卒業という意識の変化により、明らかにステージへの意気込みが昨年よりも強かったですし、それはメンバーが少なかったことで、彼女の思いが私にもよりダイレクトに感じられたのでした。
それと、長い時間を一緒に過ごすことで、スタッフも含め一つのファミリー的な感覚になっていったのが一番楽しかったことでした。
ただ、リハ直前の打ち合わせの時点では、その内容について自分の考えていたことと全く違う展開に驚いたし、少し落胆したこともありました。その前までの私は3人による完全なるアコースティック・セットを意識していたし、そこにこだわりを持ってやっていきたいと考えていました。ですが、それは完全に覆されてしまいました。
まず、プロデューサーの本田氏から提示されたのが、ファイナルの河口湖で弦カルを使うということでした。彼が今回最初に浮かんだイメージが、ストリングスを安倍さんの周りに配置して、彼女が歌う映像だったそうです。そこで、真っ先に選ばれたのが"微風"と"甘すぎた果実"。特に"甘カジ"に関しては、ストリングスが刻むビートを核にして聞かせたいとの要望でした。
ただし、これはあくまでファイナルでのことなので、そこまでの23公演では3人で演奏しなければならないわけです。これはちょっと見方をかえると、ファイナルでの絵が完成形ならば、それまでのコンサートはすべてマイナス3の内容ではないか、というふうになりかねない可能性もあった。
また、東京公演はアディショナル・ミュージシャンとして4人がすでに決まっていた。ドラム・べースはともかく、パーカッションとサックスまで加わるとなると、これまたそれまでの3人でのサウンドとはガラっと変わってしまうことが当然予想される。もちろん、実力あるミュージシャンが増えればスケールアップした演奏が期待できるものの、じゃ、それまでやってきた公演はどういう扱いになるのか。
セットメニューの後半、なっち自身の選曲はリズムが強調されたものが並んでいて、正直これを見せられた時は、3人(キーボード、ギター、ヴァイオリン)でやるのは相当厳しいと感じた。まして、ラスト2公演でリズム・セクションが入るなら、そのギャップはあまりにも大きい。
そこで、打ち込みでリズム・トラックを作ってほしい、とのことでした。これは大変なことになったと思った。すでにその時点でリハーサルまで1週間をきり、全部で11曲(その後「音霊」用に2曲追加)の打ち込みを仕上げるのは相当頑張らねばならない。
ただ、安倍さんからの「私の曲にはどうしてもリズムが必要」という話は納得できたし、その後に「聞いている人が飽きないように、何とかしたい」という思いも聞き、私はそれまでの完全なるアコ・サウンドによるアレンジを忘れ去り、すぐにコンピューターでの打ち込み作業に邁進したのでした。
とは言え、私の中にはまだわだかまりが残ったことは事実。どうしても、最後のスペシャル2公演ばかりに焦点がいって、数的にはぜんぜん多いセットの内容がおちてしまわないのか。当然言われる批判は「経費削減のためにミュージシャンを減らして、打ち込みを使った」だ。それが事実にしろ、そうでないにしろ、実際に制作に関わる者としては一番言われたくないことだし、その結果「出来が悪い」と評価をされるのは最も屈辱的であり、こちらの敗北でしかない。
結局、私としてはある程度時間がかかっても、少しでも精度の高い打ち込み作業をし、セット全体のバランスや3人のミュージシャンとの兼ね合いをしっかり配慮しなければいけないと自覚し、それまでのわだかまりを一切捨てた。そして、スペシャル公演以外のライブこそがちゃんとした評価されることを第一と考えたのだった。
実際にリハーサルが始まると、そういった私の思いをすぐに感じ取ってくれたのはミュージシャンの二人だった。彼らの柔軟で早い適応力のおかげで、あっという間にバックのサウンドは仕上がっていった。特に"息を重ねましょう"までの前半部分の流れは実によく、本田プロデューサーからもほめていただき、大いに自信を深めたし、最終的にストリングスが入っても大きな変更せずに表現できる状況が見えて来たのだった。
後半の盛り上がり系の曲では、サイズや構成を何度も調整して、じょじょに納得するものに固まっていった。この辺での安倍さんの直感はするどく、いろんなアイデアの提案があったのだ。
そうして、初日前の通しリハーサルで、なっち曰く「生と打ち込みのバランスが絶妙」となった。この頃にはメンバー、スタッフ双方とも「良い」「いける」という意識が強くなり、単なる「カラオケ・ショウ」や「ファイナルへのプリ・プロ」ではないという自負が私の中に強く生まれたのでした。
今思えば、打ち込みを使ってでもビートを効かせたサウンドを取り入れたいというなっちの意図は、コンサートをただ聴いていてほしいだけではなく、お客と一緒に盛り上がりたいということであり、アコースティックな小編成バンドによる企画への「ささやかなる(いや実際にはデカイ)抵抗」だったとも言えるか。
まだまだバラードだけの内容でしんみりしたくない、という挑戦にも感じる。
長いので、続く。
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