大橋純子/クラブサーキット2009を振り返る

 先月の8日を皮切りに名古屋、大阪、福岡、東京の4カ所8日間16ステージをこなして来た今年の大橋純子クラブサーキットを振り返ってみたいと思います。

 まずはとにかく、今年はセットリストが良かった。特に新作"Terra 2"からの5曲がうまく配置され、全体の流れがスムースだったので、演奏する側はとてもやりやすかったし、リラックスと集中をコントロールしやすかったのでした。そのおかげもあって、いいパフォーマンスが随所に出て、ライブ全体としても充実感のある内容となった。それは、最初の名古屋からすでに実感したのだが、それが移動するたびにどんどん高まり、ラストの東京までいい流れがずっと切れることなく続いたことは、本当に素晴らしかった。
 なので、今年のクラブサーキットは「ここ最近のベスト」と自画自賛している次第です。

 もちろん、各曲の細かい部分も例年以上に内容の濃いものであり、それがチーム大橋のモチベーションを上げることにつながったことは間違いないのでした。何曲かで、CDよりも出来が良いのでは、と思える部分もあり、短い時間の中でも楽曲が「進化」していくのを強く感じられたのも楽しかったのでした。

 m1.シンプル・ラブ~m2.ビューティフル・ミー
 オープニングは今年も"シンプル・ラブ"からで、これはほぼ定番化しているのだが、m2はこれまで東京以外では時間の都合上カットされることが多かったのです。だが、共に「美乃家セントラルステイション」を代表する佐藤健さんの名曲を、今回は一つのパッケージとして各地で演奏できたことは個人的にも実にうれしいし、各会場で何人かのファンの方が"ビューティフル・ミー"のサビを口ずさんでいるのを見れたのも喜ばしいことでした。

 この2曲における我々の演奏は十二分に熟(こな)れたものであって、今更何も言うことはなく、曲の良さを伝えることに集中すれば最高のパフォーマンスだ。とは言え、土屋さんのギターは光る。m2のエンディングでのソロには繊細さとスリリングさの両面があって、客席からも「Yeah!」の声がかかる時もあったっけ。さすがです。

 m3.アジアの純真
 井上陽水/奥田民生共作でPuffyのデビュー・ヒットが"Terra 2"のオープニングとは私も驚いたが、60年代後半から70年代初期のサイケ・ブルーズ・ロック風で、我々世代のオジサン・バンドには演奏するのが楽しい。
 スタジオ版にあるイントロのアコギのみの部分はカットしたが、スタジオ版は特に間奏等がないので、ライブでは2コーラス前の部分を長くして土屋さんのサイケ風ソロをフィーチャアした。全体には適度にドタバタした感じのルーズなグルーヴが肝だが、ウエちゃんはその場でスネアのチューニングを下げたり、ハットの上に小さなシンバルをつけてタンバリン風効果を出したりと、サウンド面でも工夫してくれました。

 m4.あの日に帰りたい
 ユーミンの傑作にして、ニューミュジックを代表する作品ですな。ユーミン苦手の私でも、この辺りの作品群には敬意を持って接しております。
 で、ジュンコさんバージョンはボサノバ・ジャズ風の仕上がり。ほぼCDに準じて演奏したが、やはりイントロでの口笛をどうするかが問題。そこへ、後藤さんが「フルートよりも自信ある」と宣言。それじゃ、「是非とも」となったのでした。名古屋ではここの部分だけで拍手もらってましたっけ。ちなみに私がジャズ・ギター風の抑えたシンセ音でオクターブ下を支えているのも実は重要なのよぉ、ヘヘ。
 全体のコード進行がジャズ・ピアノの手癖っぽく自由にどんどん変化していく感じなのだが、正直やりすぎていると思える部分もあり、その辺は土屋さんと私とで調整していきました。またフルートのアンサンブルがなかなか効果的だと思い、私と後藤さんとで出来るだけ再現してみたが、これは逆に強調することですごく良かったと思ってます。

 m5.言葉にできない
 小田和正さんの大ヒットで、個人的には"Terra 2"の中でも特に仕上がりの良い曲の一つと思い、いろいろと力(リキ)が入っております。特に、何と言ってもウエちゃんのエレクトリック・ドラムによる打ち込みサウンドの再現。いやいや、完全に打ち込みを越えるグルーヴで素晴らしい効果を出してくれた。
 当初の打ち合わせでは打ち込みデータを使おうか、ソフトな生ドラムで対応するか、とも話し合いましたが、「ウエちゃんなら出来る」と意見が一致し、お願いしたところ、これが期待以上にこだわってトライしてくれたのだった。それにより、スタジオ版の持っている「おいしい」雰囲気を見事にライブでも表現できることになったのです。まさに、今回のMVP候補に上げてよい仕事でした。

 また、前曲同様、これも後半コードがどんどん展開していくが、こちらのアレンジは実に美しい流れを作ってくれていて、とっても気持ちのいい響き。なので、かなりきっちりとアンサンブルして最大限の効果を得るように心がけました。
 あと個人的には、イントロの生ピアノ音からボーカル部分でのエレピ音に切り替えるところが毎回緊張しました。大阪の1回目ではフライングしてしまったのだが、ジュンコさんは全く動じず見事に歌い切ってくれました。

 m6.Love Love Love
 前作"Terra"から唯一のピックアップで、ビルボードのようなライブハウスにはピッタリのアレンジなのでやりがいもあるし、回数を重ねていろんな部分で熟成が高まっている。だから、打ち込みによるCDバージョンの表情とはずいぶん変わってきていると思うし、生ならではの良さがたくさんあると思う。
 ただ、ツアー中盤で少々調子に乗り過ぎた私のプレイはハネが強くなり過ぎる所があり、もう一度原点を見直すことに。その辺のバランスがうまくとれて最後の東京では、満足行く内容になったと思う。

 m7.たそがれマイラブ~m8.シルエット・ロマンス
 カバー曲から再びオリジナルに戻るとこちらとしても安心感があるが、今回はカバーものの仕上がりが良かったので、こういったおなじみの曲へのアプローチも自然と、より丁寧で繊細になったように思う。何と言うか、長年の手あかが取れた感じで新鮮にプレイできたのでした。

 m9.サファリ・ナイト~m10.ナチュラル・フーズ~m11.ペイパー・ムーン
 それは、これらの「後半盛り上げ」曲にも通じる。それに今年ジュンコさんの35周年を祝う形で、過去の名作が一挙に再発されたこともあり、「我々の祖先は『美乃家』である」と高らかに言いたいわけです。だから、気合いが違うのです。
 それに、ケンさんがm10をうまくコンパクトにして挿入してくれたので、俄然燃え上がっちゃうわけですね。オリジナル美乃家とは少し楽器編成が違うので、m10の再現は全くそのままではないけど、その精神は十分に受け継いで演奏したつもりです。
 というか、自分達でかなり楽しませてもらっちゃいました、すみません。

 m12.愛は時を越えて
 さて、本編最後はこのところ定番となったこのヒット曲だが、今回はまずは"Terra 2"バージョンで始まり、じょじょに楽器が加わって盛り上げていくということに。

 スタジオ版はピアノを3回ダビングした「ピアノのみ」のバックで、最初、私はこの「上から下まで」鳴っているピアノ・オーケストラのサウンドを何とかしたいと思ったのだが、ケンさんから「コードの流れはそのままで、もっと抑えた感じに」とのサジェスチョンがあり、一度リセットしてシンプルなアプローチにした。その結果はすごく良かったと思う。前半のジュンコさんとの静謐な部分から、後半バンド全員が入ってくるところとのメリハリがついて、よりドラマティックに生きるようになった。
 後藤さんのテナーと私のピアノによる間奏のフレーズもとても印象的になり、その直後に再び静かになるボーカル部分は何度やってもハっとするようになった。その後のエンディングに向かってのバンド全体の集中力と盛り上がりは実に素晴らしくて、本当に満足行く形に仕上がったと思っているのでした。
 おかげで、どの回も大きな拍手をいただき、こちらも豊かな気持ちで一杯になることが出来たのでした。

 En.Ride On Time
 アンコールにお応えして、山下達郎さんの「夏!」の大ヒット曲を"Terra 2"バージョンで。ライブならではのルバートを冒頭につけたのも効果的だった。今回のケンさんのアイデアは随所に光りましたね。でもって、リズムが入ってからはどこでもイケイケノリノリでした。
 お客さんが立ち上がって手拍子、踊りだす光景は本当にサイコーですが、特に東京最終日の1回目、男性サラリーマン風の人たちが「パーン」と立ち上がって乗り出した時は驚きました。普通の東京公演は他に比べておとなしく、まして男性陣はなかなかそこまで盛り上がらない今日この頃。それが、あんなに楽しそうにしてくれているのを見れるのは、我々にはこの上ない幸せな瞬間でした。

 というわけで、今年のクラブサーキットも無事に終了。それも自分で言ってしまいますが、大成功で終えることができました。ジュンコさんの35周年をとっても良い形でお祝いすることも出来たと思いますし、どの会場もすごくたくさんの方に観に来ていただいたのが最高に喜ばしいことでした。

 それと、ジュンコさんはここ数年鼻の不調が続き、一時はとても心配な時期があったのですが、今年になり手術を決断されたのでした。その手術は成功しましたが、それでもいろいろな不安を感じながら臨んだレコーディングとツアーを見事に最後までやり切ったことは、何事も及ばないほど立派なことだったと思います。そういった姿勢に我々も引っ張られたことが、今回の頑張りにつながったに違いありません。
 東京の4ステージ目、あのジュンコさんが声を失いそうな部分がありましたし、我々バンド側もかなり疲労していましたが、最後の最後は気持ちでとことんやり切ったのでした。その時の充足感と感動はこれまででも味わったことのないものでしたし、一生忘れないだろうと思います。
 50代になっても、まだまだ新しい感動を体験できる、これはとんでもなく幸せなことだと心から感謝したい心境です。

 そして、クラブサーキットにお越し下さったファンの皆さん、各地でお世話になったスタッフの皆さんには心よりお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
 
 P.S いつもお世話になっているヤマケンさんが今年も鑑賞記をご自身のサイトでまとめてくださいました。どうぞ、そちらの方も合わせてごらんになってみてください。コチラをクリック
[PR]
by harukko45 | 2009-08-10 23:17 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31