安倍なつみ/横浜関内ホール

 安倍なつみさんの夏ツアー2日目、関内ホールでの2回公演が終わりました。ゲネプロから3日間連続でのステージにメンバーもスタッフもかなりヘトヘトではありましたが、皆の頑張りでやりきったってところでしょうか。
 私の感想としては、前日までの会場に比べてステージ上での音が聞きやすく、例えばツルさんのヴァイオリンやアコーディオンがほぼ生音で聞こえてくるといった状態はとても好ましく、リハの段階からやろうとしていた室内楽的なアプローチが自然に出来たように感じました(それは主に前半です)。
 また、初日を終えてのいい意味での力の抜け具合、それはひょっとすると体が疲れていることで、無駄な力が入らなかった状態だったのか、安倍さんをふくめステージ上の4人が皆同じようにリラックスしていたのが、全体にいい結果に結びついた気がしています。

 特に昼の部はいい出来だったと思っています。集中力とリラックスが適度にバランスが取れていたのでした。夜はさすがにフィジカル的な余裕がなく、後半は少々力技になった部分もあったかもしれません。もちろん、ミュージシャン・サイドが感じた「良い悪い」が決して客席側でのそれにイコールではないのですが。

 さて、ここまで4回のコンサートをやってきましたが、ファンの皆さんには賛否両論があるようです。当然、すべての人が満足することは不可能なので、どんな場合でも批判的な意見はあるはずだし、逆に全くない方が気持ち悪い。それこそが「贔屓の引き倒し」というもの。ファンが辛口であることは実に良心的で健康であると考えます。
 ただ、いくつかの点でこちら側からも発信しておいてもいいのでは、とも思ったので、いつもならすべての公演が終わってから伝えるべき内容ですが、あえて少し書いておきたいと思います。

 たぶん、3人のミュージシャン、それもリズム・セクションのないコンサートのイメージは今回の場合、前半の内容が比較的抵抗なく合致するでしょう。ただ、ヴァイオリン、アコギ、ピアノという楽器編成により、室内楽的色合いがとても強くなったので、それを生かす意味で、大きく曲のアレンジをいじくるより、オリジナルにある大事だと思われるフレーズを3人でうまくアンサンブルさせることに重点をおきました。ヴァイオリンとアコギでユニゾンしたり、ハモったり。ヴァイオリンがトップでメロディを弾き、その内声部分をピアノで受け持ったり、アコギとピアノでアルペジオをからませたり。ボーカルのハモ・パートをあえてアコーディオンでとったり。
 こういったことは、何度も聴きこまないとわかりづらい部分かもしれませんが、我々ミュージシャンの立場では、リズム・セクションが入った場合とは全然アプローチが違うのでした。

 ですから、アレンジがオリジナルとあまり変わらず、もっと大胆な遊びが欲しかったという指摘も理解できなくはないけど、今回は「外身を変えずに、よく見たら細かい部分にこだわりの装飾が施されている」というのを目指しているとお話しておきます。

 それでも、この前半で3曲ほど、比較的控えめに打ち込みによるリズムを使っているのは、安倍さんが「聴き手を飽きさせないような工夫」を希望していたからで、小編成のアコ・サウンドによる単調さを出来るだけ回避したいという意図を汲んだものでした。結果として、中盤までは打ち込みと生とのバランスはいい形でまとまっていると思っています。
 また、ほぼオリジナルに近いアレンジの中で、唯一ちょっと変えてあると言える「甘すぎた果実」ですが、これはバロック風とタンゴ風とハバネラ風が順番にやってくるようにしたもので、今回の編成ならではの内容なのですが、観客の皆さんには原曲のディスコ・ビートのイメージが強いせいか、どうしても手拍子が起きてしまうので、全体としてはスケールアップしてしまうのでした。これはこれでありですが、我々の最初の意図はもっとミニマムな世界観でした。

 さて、前半だけでの話が長くなってしまいましたが、実は後半、打ち込みがずいぶんと幅を利かせてくる部分の方が批判がより多いような気がします。「演奏者のいないコンガ音が聞こえてきて、カラオケのようだ」「カラオケ使うのならば、3人のミュージシャンはいらないのではないか」「これでは、進化どころか昔のナッチコンに戻ったようだ」との指摘は「なるほど」と思うところもあり、するどくポイントをついていると思います。
 コンサート後半で盛り上げる曲をやるために打ち込みを多用しているのは、前に書いたように、ご本人の「飽きさせないように」という思いがまず一番であり、それが退化のイメージに結びつくとは考えていませんでしたし、カラオケ的になることは出来るだけさけるよう(これは当初より皆が意識していたこと)に注意して、リズム・トラックを作りました。が、それでも楽曲の性格上、音数は多くなっていったのは事実です。

 ですので、「いないミュージシャンの音がする」などはその通りなのですが、それでもかなりの部分を演奏している3人の存在感が薄くなっているようなら、それは我々の方の敗北でありますので、スタッフを含めた全員の課題と言えるでしょう。ただ、今の状態で「とても楽しい」と喜んでくれている方々も多く、またステージ上での安倍さんの頑張りぶりを毎日見ていると、決して「サービス意識に欠けている」とはとても思えないので、この辺は外からもっと大きな視点でプロデューサーに判断をしてもらうしかないでしょう。

 さて、まだまだいろいろあるとは思いますが、次の大阪まで少し時間があるので、私ももう一度もろもろを整理しておきたいと思います。
 とにかく、関内ホールにお越し下さったファンの皆さんには深く感謝します。ありがとうございました!
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by harukko45 | 2009-06-08 04:04 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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